025年9月12日に公募が開始された「第2回 新事業進出補助金」。
中小企業が既存事業から新たな市場・高付加価値事業へ挑戦することを後押しする制度として、全国の事業者から注目を集めています。
本記事では、公式資料(概要説明会資料・応募申請ガイド・公募要領改訂版)に記載された「審査内容」「審査項目」「加点項目」「減点項目」を、網羅的に解説します。
Contents
1. 審査の全体構成
本補助金の審査は、書面審査と口頭審査の2段階で実施されます。
まず、すべての申請者に対して書面審査が行われ、その後、一定の基準を満たした事業者が口頭審査の対象となります。
「事業の適格性、優位性、実現可能性、継続可能性等の観点について審査いたします。」
(第2回 新事業進出補助金 概要説明会資料より)
口頭審査対象者には、事務局よりメールで日程案内が届きます。
なお、口頭審査を辞退した場合は不採択となることが明記されています。
2. 書面審査の概要と審査項目
書面審査は、電子申請システム上に入力された内容をもとに実施され、添付された事業計画書は参考資料として扱われます。
評価の中心となる審査項目は、次の4つです。
① 補助対象事業としての適格性
申請内容が、公募要領に定める補助対象の範囲や要件を満たしているか、また設定された目標が合理的かが審査されます。
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公募要領に基づき、補助対象事業として適格であるか
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売上や付加価値などの数値目標が妥当で、達成可能性が高いか
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計画の根拠やデータが明確に示されているか
② 新規事業の新市場性・高付加価値性
新たに取り組む事業が社会的に普及度・認知度が低い分野(=新市場)であるか、また高い付加価値化・高価格化を図るものであるかを審査します。
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製品・サービスの属する分野の一般的普及度が低いか
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客観的データや統計資料により裏付けがあるか
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同分野の一般的な相場や価値水準に比べて、高付加価値化を実現しているか
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付加価値化の源泉(技術・デザイン・ノウハウなど)が明確で合理的か
③ 新規事業の有望度
事業としての将来性や収益性、差別化の明確さなどが評価されます。
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継続的に売上・利益を確保できる見込みがあるか
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類似事業との比較で優位性があるか
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事業としての差別化・独自性が説明されているか
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市場ニーズの裏付けがあるか
④ 事業の実現可能性
事業計画の実行体制、スケジュール、リスク対応、資金調達の妥当性などが確認されます。
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実施スケジュールが具体的で現実的か
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担当者・外部連携体制などの実行体制が整っているか
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財務状況や資金繰り計画に無理がないか
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補助事業終了後も継続的に実施できる仕組みが構築されているか
3. 口頭審査の実施内容
書面審査を通過した一部の事業者は、オンライン形式で実施される口頭審査に進みます。
審査では以下の観点で質疑応答が行われます。
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事業の適格性(補助金の目的に合致しているか)
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事業の優位性(競合との差別化が明確か)
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事業の実現可能性(実施体制・スケジュールが妥当か)
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事業の継続可能性(補助事業後も持続できるか)
なお、口頭審査の案内を受けながら辞退した場合は「不採択」となります。
4. 加点項目(全9項目)
第2回公募では、審査時に加点される要素が9項目あります。
これらは、社会的取組、認証、再生支援、制度活用といった幅広い領域にまたがっています。
| No | 加点項目 | 内容 |
|---|---|---|
| ① | パートナーシップ構築宣言加点 | 「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトにおいて宣言を公表している事業者 |
| ② | くるみん加点 | 次世代育成支援対策推進法に基づく認定(トライくるみん、くるみん、プラチナくるみん)を受けた事業者 |
| ③ | えるぼし加点 | 女性活躍推進法に基づく認定(えるぼし1〜3段階またはプラチナえるぼし)を受けた事業者 |
| ④ | アトツギ甲子園加点 | 「アトツギ甲子園」のピッチ大会に出場した事業者 |
| ⑤ | 健康経営優良法人加点 | 令和6年度に「健康経営優良法人」として認定されている事業者 |
| ⑥ | 技術情報管理認証制度加点 | 「技術情報管理認証制度」の認証を取得している事業者 |
| ⑦ | 成長加速化マッチングサービス加点 | 「成長加速化マッチングサービス」に会員登録し、挑戦課題を登録している事業者 |
| ⑧ | 再生事業者加点 | 中小企業活性化協議会などの支援を受け、再生計画を策定中、または3年以内に成立した事業者 |
| ⑨ | 特定事業者加点 | 公募要領「2.補助対象者(3)特定事業者の一部」に該当する事業者 |
これらの加点項目は、すべて概要説明会資料(第2回)および応募申請ガイドに明示されており、
加点を希望する場合は、申請時に該当証明書類を添付することが必要です。
5. 減点項目(マイナス評価)
一方で、書面審査においては減点項目も明確に定義されています。
以下に挙げる条件に該当する場合は、審査時に評価が下がる可能性があります。
| No | 減点項目 | 内容 |
|---|---|---|
| ① | 賃上げ要件未達事業者 | 他の中小企業庁補助金(ものづくり補助金、事業再構築補助金等)において、賃上げ加点を受けて採択されたにもかかわらず、要件を達成できなかった場合。未達報告から18か月間、正当理由がない限り「大幅減点」とされます。 |
| ② | 過剰投資の抑制 | 同時期に類似テーマや設備投資案件が集中し、一時的流行による過剰投資と判断された場合、市場分析不足と見なされ減点対象。 |
| ③ | 他補助事業の事業化停滞 | 新事業進出補助金、事業再構築補助金、ものづくり補助金の過去採択案件において、事業化段階が「第3段階(販売1件)」以下に留まっている場合は減点対象。 |
| ④ | 製品等の新規性評価が低い例に該当 | 「新事業進出指針の手引き」で示された「評価が低くなる例」に該当する場合(容易な製造・軽微な改変・既存製品の単純組合せなど)。 |
6. 「評価が低くなる例」について
「新事業進出指針の手引き」では、審査で低く評価される例が具体的に提示されています。
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事業実態に照らして容易に実施可能と判断される新製品・新サービス
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既存の製品・サービスに軽微な改変を加えただけのもの
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既存の製品・サービスを単に組み合わせただけのもの
これらは「革新性や独自性が乏しい」と見なされ、相対的に評価が下がります。
7. 審査の基本方針と評価観点
第2回公募における審査は、以下の4つの視点を中心に総合評価されます。
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 適格性 | 補助金の目的・趣旨に適合し、公募要件を満たしているか |
| 優位性 | 同業他社と比較して明確な差別化・独自性があるか |
| 実現可能性 | 実行体制・スケジュール・資金面が現実的であるか |
| 継続可能性 | 補助事業終了後も事業を持続・拡大できる体制があるか |
これらの観点に基づいて採点され、書面審査・口頭審査の両方の結果を踏まえて総合評価が行われます。
8. 審査結果と採択までの流れ
審査は外部専門家による採点を基礎として実施され、
その結果をもとに事務局・中小企業庁が総合的に採択候補者を決定します。
採択候補となった事業者は、交付申請を経て、正式な補助金交付決定を受けることになります。
なお、審査結果の採点内容や評価詳細は非公開とされています。
9. まとめ:審査の特徴と傾向
第2回「新事業進出補助金」の審査は、次の点が大きな特徴です。
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評価軸が明確化された4項目構成(適格性・新市場性・有望度・実現性)
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加点項目が9項目(社会的認定・再生支援・制度活用を重視)
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賃上げ未達・事業停滞・過剰投資などの明確な減点項目
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書面+口頭の2段階審査で実現性を重視
採択を目指すには、「新市場性・高付加価値性」の根拠を統計・データで明示し、
事業実施体制・資金計画・市場展開シナリオを具体的に示すことが重要です。
出典一覧
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『新事業進出補助金 概要説明会資料(第2回公募)』(©2025 Hakuhodo | Accenture)
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『新事業進出補助金 応募申請ガイド(第2回)』(2025年11月10日 第1.1版)
- 『新事業進出補助金 公募要領 改訂版』(中小企業庁)
- 『新事業進出指針の手引き』(中小企業庁・中小機構)