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はじめに
2025年度の「新事業進出促進補助金」では、申請企業に対し「新事業進出指針」に沿った事業構築が求められます。本指針を正しく理解し、事業計画に反映させることが採択の分かれ道となると言っても過言ではありません。本記事では、補助対象として認められるために不可欠な「新規性」「市場性」「売上高」の3要件を中心に解説します。
1. 製品等の新規性要件:「何を売るか」の刷新
「製品等の新規性」とは、自社にとって過去に一度も製造・提供したことがない製品やサービスであることが条件です。これは「世の中にとって新しい」ではなく、「自社にとって新しい」ことが重要です。
該当する例:
- 機械部品メーカーが医療機器用部品の製造に初挑戦
- システム会社がECモールを自ら運営するビジネスモデルに転換
該当しない例:
- 色違いやパッケージ変更など形式的な変化
- 同じ製品の生産量増加のみ
- 製造方法を一部変更しただけで実質的な機能が変わらない商品
新規性を証明するためには、既存事業の棚卸しと差分の明確化が不可欠です。
2. 市場の新規性要件:「誰に売るか」の転換
製品だけでなく、提供先となる「市場」が既存と異なることが求められます。単なる販路の拡大や地理的な移動(例:大阪から東京へ)ではなく、「顧客の属性」が変わる必要があります。
該当する例:
- 業務用調味料から家庭用少量パックに転換
- 法人向けサービスから個人事業主向けサブスクリプションへ展開
該当しない例:
- 同じ製品を別の地域へ販路展開するだけ
- 顧客層が本質的に変わらない新店舗の出店
市場の新しさは、定性的な説明だけでなく、顧客属性の違いを数値や調査結果で裏付ける必要があります。
3. 新事業売上高要件:「どれだけ売るか」の目標明確化
補助対象となる新事業は、単なる試験的な取組ではなく、事業として一定の売上規模を目指す必要があります。
達成すべき基準(いずれか):
- 総売上高の10%以上を新事業が占める
- 総付加価値額の15%以上を新事業が構成する
これを補助事業終了後3〜5年で達成する計画を立て、かつその妥当性を示す必要があります。想定売上の根拠として、市場規模、競合状況、販売体制、営業シナリオなどの構築が不可欠です。
新事業進出指針を満たすための思考フレーム
指針を満たすためには、以下の3点を明確にし、それぞれに具体的な裏付けを加えることが重要です。
要件 | 観点 | チェックポイント |
---|---|---|
製品等の新規性 | 「何を売るか」 | 自社で未経験の製品か?機能や用途は異なるか? |
市場の新規性 | 「誰に売るか」 | 顧客層・ニーズ・業界が既存と異なるか? |
売上高要件 | 「どれだけ売るか」 | 数年後に売上の1割以上を新事業で見込めるか? |
指針に沿った事業計画書作成の流れ
- 現状分析:自社の既存事業と顧客の明確化
- 事業構想:これまで提供していない製品・サービスの検討
- ターゲット市場定義:異なる属性の新しい顧客層の設定
- 計画の数値化:売上、粗利、顧客数の予測と根拠
- 体制とスケジュール:実施責任者、販売体制、進捗計画の策定
まとめ:指針は制度理解だけでなく「経営の武器」
「新事業進出指針」は単なる制度上のチェックリストではなく、事業の成否を左右する戦略的思考の枠組みです。これを通じて自社の強み・弱みを見つめ直し、根拠ある計画を立てることで、補助金の採択率は飛躍的に向上します。未来の柱となる新事業を、ロジカルかつ実現性のある計画で育てていきましょう。
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