【2025年最新版】経営者のための「老齢基礎年金と振替加算」──配偶者の年金にも影響する“知らなきゃ損する制度”を徹底解説

更新日:

経営者は、事業計画、資金繰り、人材育成、投資判断など、
毎日の意思決定に追われ、
自分自身や配偶者の“老後の年金”まで把握できていないケースが非常に多いものです。

しかし、配偶者の年金は、
経営者の老後資金・相続計画・家計の安定に直接影響する重要要素であり、
特に 「老齢基礎年金(国民年金)」と「振替加算」 については、
多くの経営者が誤解していたり、存在自体を知らなかったりします。

振替加算は、
「もらえる人はもらえるが、条件を知らないともらい逃す」代表的な制度です。

そして実はこの振替加算、
経営者夫婦のライフスタイル(働き方・加入歴・役員報酬・年齢差)によって
受給できる額が大きく変わる制度でもあります。

今回の記事では、
2025年の最新情報を踏まえて「老齢基礎年金と振替加算」について、
経営者が押さえておくべきポイントを徹底的にわかりやすく整理します。


Contents

■ 1. 老齢基礎年金とは何か?経営者向けに最重要ポイントだけ整理

老齢基礎年金は、
日本の公的年金の“土台”となる制度で、
20〜60歳までの40年間の保険料納付により受給できる「国民年金」です。

特徴をまとめると…


✔ 40年加入で満額(2025年度 約81万円/年)

✔ 1年不足するごとに減額

✔ 終身で支給される

✔ 厚生年金・企業年金・iDeCoなどの土台になる“基礎収入”


会社経営者・役員は厚生年金加入であることが多いですが、
独立前後や創業期に「国民年金が未納・免除になっている期間」があることも珍しくありません。

老齢基礎年金は“土台”なので、ここが不足していると老後のキャッシュフローは大きく崩れます。

さらに経営者の場合:

  • 役員報酬を抑えると厚生年金は増えない

  • 自営業時代の未納をそのまま放置

  • 免除期間の取り扱いを誤解している

などの理由で、基礎年金が満額に満たないケースは意外に多いのです。


■ 2. 「振替加算」とは何か?──ほとんどの経営者が知らない“配偶者の年金上乗せ制度”

振替加算は、簡単に言うと…


✔ 配偶者(夫または妻)が65歳になった時

✔ 加給年金が終了する代わりに

✔ 配偶者本人の老齢基礎年金に上乗せされる金額


「年金の家族手当の引き継ぎ版」のような制度とイメージするとわかりやすいです。

具体的には、

  • 夫(経営者)が65歳の時に加給年金を受給できる

  • その後、妻が65歳になると加給年金は終了

  • かわりに妻の基礎年金に“振替加算”として上乗せされる

という流れになります。

振替加算は“奥様の年金額が増える制度”であり、家計にとって重要な追加収入です。


■ 3. 振替加算はいくらもらえるのか?(2025年)

振替加算の金額は、配偶者の生年月日により異なります。
2025年時点の主な金額帯は以下です。


【振替加算(2025年版)】

■ 約16,000円〜約22,000円/年


もっと古い世代(昭和生まれの早い年代)では
最大約39,000円/年の加算になることもあります。

たとえば経営者の夫が65歳、妻が55歳というケースでは:

  • 夫 → 加給年金(約39万円)

  • 妻が65歳 → 振替加算(約数万円)が終身で上乗せ

という形になり、総額では非常に大きな差となります。


■ 4. 振替加算を受け取るための条件(2025年版)

振替加算は誰でももらえるわけではなく、
次の条件をすべて満たす必要があります。


【条件①】配偶者が老齢基礎年金を受給する(65歳)

振替加算は「基礎年金」に上乗せされるため、
本人が65歳になり、受給権が発生するタイミングで自動的に計算されます。


【条件②】夫(または妻)が加給年金の対象だった

振替加算は「加給年金の後継制度」のため、
そもそも加給年金の対象家族でなければ振替されません。


【条件③】生計維持関係がある(税務上の扶養に近い概念)

  • 家計が一緒

  • 生活費の負担割合が明確

  • 高所得の別居などはNG判定される可能性あり


【条件④】配偶者の厚生年金加入状況に注意

妻が長期間「厚生年金加入」していた場合、
振替加算の対象外となることがあります。

これは経営者夫婦に非常に多く、

  • 夫婦どちらも会社役員で厚生年金加入
    というケースで“振替加算ゼロ”となるケースがあります。


■ 5. 加給年金と振替加算の違い(経営者が最も誤解しやすいポイント)

以下の表で整理します。

制度 加給年金 振替加算
受給者 老齢厚生年金を受給する本人 配偶者本人
受給開始年齢 本人が65歳 配偶者が65歳
支給期間 配偶者が65歳になるまで 配偶者が亡くなるまで(終身)
金額 約39万円/年 約1.6万〜約22万円/年
条件 配偶者が65歳未満 加給対象だった配偶者が65歳になった

経営者が特に注意すべき点は、


✔ 加給年金は“本人”の年金

✔ 振替加算は“配偶者”の年金

✔ どちらも家庭全体のキャッシュフローに大きく影響


ということ。


■ 6. 経営者に多い「振替加算のもらい忘れ」パターン

驚くことに、
振替加算は“申請漏れ”や“認識不足”が非常に多い制度です。

その原因は以下の通り。


● 原因①:配偶者が厚生年金加入の時期があった

→ 加給年金の対象外と誤解し、振替加算まで消滅する


● 原因②:夫婦で年金の加入歴を整理していない

→ 国民年金の未納・免除期間の確認不足
→ 厚生年金の加入状況の誤認


● 原因③:会社の経理に任せきりで、自分の年金記録を把握していない

→ 振替加算は“個人の記録”に依存する


● 原因④:配偶者がパート勤務で“130万円以下”だが厚生年金未加入

→ 加給・振替対象になる可能性が非常に高いのに気づかない


第3号被保険者(専業主婦の年金制度)を正しく理解していない
という点も大きな問題です。


■ 7. 経営者のための「老齢基礎年金 × 振替加算」最適化戦略

ここからは、経営者が実務で役立てるための戦略を示します。


● 戦略①:夫婦の年金加入歴を一度“棚卸し”する

  • 国民年金の未納・免除期間

  • 厚生年金加入期間

  • 会社役員としての報酬期間

  • 妻(夫)が第3号の期間

を徹底整理する。

これは「振替加算の可否」を判断する上で必須。


● 戦略②:配偶者を無駄に厚生年金加入させない

妻を「役員」にしたり「厚生年金加入させる」ことが、
加給年金・振替加算の消失につながるケースが多い。

※ 絶対ダメではないが、メリット・デメリットの比較が必要。


● 戦略③:加給年金が受け取れるよう役員報酬設計を調整

加給年金 → 振替加算 の流れは、
数十万円〜百万円単位で違いを生む。

役員報酬の設定や就労形態を見直す価値がある。


● 戦略④:相続・事業承継まで視野に入れて考える

振替加算は「配偶者の終身収入」。

経営者が亡くなった際に

  • 遺族年金

  • 振替加算
    が配偶者の生活を支える柱になる。

これは事業承継戦略にも大きく関係する。


■ 8. まとめ:振替加算は「知らなきゃ損する年金」であり、経営者ほど影響が大きい

改めて振替加算のポイントを整理すると…


✔ 老齢基礎年金に上乗せされる“配偶者の増額制度”

✔ 年額1.6〜22万円と小さく見えるが、終身なら総額が大きい

✔ 経営者は家族の働き方・役員報酬・加入歴で受給可否が変わる

✔ 加給年金 → 振替加算の流れを理解しないと数十万円損する

✔ 年金記録の棚卸しは経営者の必須タスク


つまり振替加算は、経営者の老後資産・家庭のキャッシュフローに
“見えないインパクト”を与える重要な制度なのです。

経営者は、会社の財務戦略だけでなく、
自分自身と配偶者の老後戦略も
同じレベルで「経営する」必要があります。

ぜひ本記事をきっかけに、
老齢基礎年金と振替加算を正しく理解し、
ご家族の未来を守る設計を進めてください。

Copyright© 株式会社RAD , 2025 All Rights Reserved.