年金制度は「会社員が対象」という印象が強く、
経営者・法人代表・個人事業主の方は、つい自分ごととして考えにくいものです。
しかし、老齢厚生年金と加給年金額は、
経営者の老後資産戦略にも相続にも直結する、極めて重要な制度です。
特にポイントとなるのは以下の点です。
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会社員と同じように、経営者も「厚生年金加入期間」があれば受け取れる
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加給年金は“家族手当の年金版”のような制度で、大きな金額になる
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経営者は役員報酬の設定が自由=年金額が大きく変わる
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奥様・ご家族の働き方によっても加給年金の受給可否が変わる
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相続(未支給年金)における差異にも影響する
つまり「老齢厚生年金+加給年金の理解」は、
経営者の老後資金設計の“核”とも言えるのです。
本記事では、2025年最新の制度をベースに、
経営者が必ず押さえておくべきポイントを
徹底的にわかりやすく整理して解説します。
Contents
- 1 ■ 1. 老齢厚生年金とは何か?経営者向けシンプル解説
- 2 ✔ 会社員・役員・厚生年金加入者が老後にもらえる年金
- 3 ✔ 加入期間と給与額(標準報酬)に応じて増える「報酬比例」の年金
- 4 ✔ 国民年金(老齢基礎年金)に上乗せされる第二階層の年金
- 5 ■ 2. 「加給年金額」とは何か?──知っている経営者は少ないが非常に重要
- 6 ✔ 厚生年金に加入していた本人が
- 7 ✔ 老齢厚生年金を受け取り始めたとき
- 8 ✔ 一定の条件を満たす家族がいる場合に
- 9 ✔ 追加でもらえる“家族手当の年金版”
- 10 ■ 3. 加給年金の対象者(2025年版)
- 11 【本人】
- 12 【家族】
- 13 ■ 4. 加給年金の金額はいくら?(2025年)
- 14 ✔ 加給年金額(基本)
- 15 ■ 5. 加給年金がもらえなくなるケース(経営者特有の落とし穴)
- 16 ■ 6. 経営者が押さえるべき「老齢厚生年金 × 加給年金」の戦略ポイント
- 17 ■ 7. 経営者の老後資金戦略は「公的年金 × 私的年金 × 不動産 × 事業」の組み合わせ
- 18 【公的年金】
- 19 【私的年金】
- 20 【ストック収入】
- 21 【事業収入】
- 22 ■ 8. まとめ:老齢厚生年金も加給年金も、経営者の未来を守る「重要な資産」
- 23 ✔ 加給年金だけで年40万円以上増える
- 24 ✔ 厚生年金は役員報酬で大きく変わる
- 25 ✔ 経営者の働き方が老後資産を左右する
- 26 ✔ 相続・遺族基盤にも直結する
■ 1. 老齢厚生年金とは何か?経営者向けシンプル解説
老齢厚生年金とは、
✔ 会社員・役員・厚生年金加入者が老後にもらえる年金
✔ 加入期間と給与額(標準報酬)に応じて増える「報酬比例」の年金
✔ 国民年金(老齢基礎年金)に上乗せされる第二階層の年金
経営者の場合、厚生年金に加入しているかどうかで、
老後の受給額が 数十万円〜数百万円単位で違い ます。
重要なポイントは次の3つです。
① 厚生年金は「報酬比例」=役員報酬によって老後の年金額が変わる
会社役員は給与を自分である程度決められます。
つまり、標準報酬月額が高い期間が長ければ長いほど、
将来の老齢厚生年金が増えます。
■標準報酬月額40万円の人
→ 年間20万円〜30万円上乗せされることも
■標準報酬月額60万円の人
→ さらに大幅アップも
経営者は「報酬設計」がそのまま老後資産に直結します。
② 受給開始は原則65歳
受給開始は原則65歳ですが、
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60〜64歳:特別支給の老齢厚生年金(生年月日で対象者が限られる)
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70歳まで加入すれば年金額がさらに増える
など、経営者の働き方に応じて調整できます。
③ 厚生年金は“終身”で支給
経営者の場合、事業収入・家賃収入は景気変動を受けますが、
厚生年金は安定した終身収入です。
これは老後のキャッシュフロー設計において大きな安心材料になります。
■ 2. 「加給年金額」とは何か?──知っている経営者は少ないが非常に重要
加給年金は、
✔ 厚生年金に加入していた本人が
✔ 老齢厚生年金を受け取り始めたとき
✔ 一定の条件を満たす家族がいる場合に
✔ 追加でもらえる“家族手当の年金版”
別名:「年金の家族手当」
経営者の方でも意外と知らず、
「もらい忘れる」「申請漏れ」が多い制度です。
■ 3. 加給年金の対象者(2025年版)
加給年金を受け取れる条件は次の通りです。
【本人】
65歳で老齢厚生年金を受給する人
+
【家族】
以下のいずれかを“扶養している”場合
● 配偶者(妻・夫)が
65歳未満 かつ 生計維持関係がある
● 子が
18歳到達年度末まで
または20歳未満で障害等級1・2級
特に経営者の場合:
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奥様が専業主婦
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パート勤務で収入が130万円未満
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国民年金第3号の期間が長い
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法人の役員になっていない
というケースが多く、
加給年金を受け取れる可能性が非常に高い。
■ 4. 加給年金の金額はいくら?(2025年)
2025年現在の加給年金額は以下の通り。
✔ 加給年金額(基本)
■ 年額:約39万円
さらに、配偶者が40歳以上の場合、
年度ごとに振替加算(約1.6万円〜22万円)が上乗せされます。
例:
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経営者(65歳)
-
10歳年下の奥様(55歳)
→ 老齢厚生年金に 約39万円 + 振替加算 が追加
→ 年約40〜55万円程度の上乗せが見込める
これは見逃すには大きすぎる金額です。
■ 5. 加給年金がもらえなくなるケース(経営者特有の落とし穴)
経営者の場合、以下のケースで加給年金が受け取れないことがあります。
① 配偶者が65歳になったタイミング
妻(夫)が65歳になると加給年金は終了し、
代わりに妻本人へ「振替加算」が行われます。
② 共働きで厚生年金加入の場合
妻が厚生年金加入している場合、
加給年金がもらえないことがあります。
例:
・妻が会社役員
・妻がフルタイムで働き厚生年金加入
・法人の共同経営者として役員
→ 加給年金対象から外れる
③ 税務上、生活費を完全に別にしている場合
「生計維持関係」が必要。
夫婦の収入・生活費の実態が問われるため、
税務署・年金機構の判断で外れるケースも。
④ 年金請求が遅れるともらえる時期も遅れる
加給年金は “請求しないともらえない”。
経営者は事務手続きが後回しになりがちなので注意。
■ 6. 経営者が押さえるべき「老齢厚生年金 × 加給年金」の戦略ポイント
ここからは、経営者向けの“実務に使える戦略”として解説します。
● ① 奥様が専業主婦(第3号)なら加給年金の受給可能性が高い
→ 年約40万円以上の上乗せは大きい
特に、社長夫人が会社に所属していない場合は受給可能性が高い。
● ② 役員報酬設計を見直すことで老齢厚生年金を最大化できる
老齢厚生年金は「報酬比例」。
標準報酬月額が高い期間が長いほど増えます。
逆に、
役員報酬ゼロ・報酬低めに設定すると、
老後の厚生年金額が極端に少なくなる。
→ 経営者は自分自身の報酬設計を
“老後資産”の観点から考えるべき。
● ③ 法人化してから厚生年金加入をしていない経営者は危険
個人事業主のまま長く働いているケースでは、
国民年金だけでは老後資金が不足しやすい。
→ 加給もつかない
→ 老後キャッシュフローが弱くなる
法人化+厚生年金加入は
“老後資産づくり”の基本戦略のひとつ。
● ④ 加給年金は「将来の相続にも影響」
経営者が亡くなった際、
未支給年金として受け取れる金額にも影響。
また、配偶者の振替加算があるかどうかは
遺族基盤にも大きく影響する。
■ 7. 経営者の老後資金戦略は「公的年金 × 私的年金 × 不動産 × 事業」の組み合わせ
老齢厚生年金と加給年金は、
経営者の老後資産戦略においてこう位置づけられます。
【公的年金】
■ 老齢厚生年金
■ 加給年金・振替加算
→ 国が保証する“終身の基礎収入”
【私的年金】
■ iDeCo
■ 小規模企業共済
→ 税メリットを最大活用
【ストック収入】
■ 不動産収入
■ 配当
→ 事業波動に左右されない安定収入
【事業収入】
■ 個人所得
■ 法人配当
→ 経営者の最強のキャッシュエンジン
老齢厚生年金と加給年金の理解は、
この全体戦略の“土台”となります。
■ 8. まとめ:老齢厚生年金も加給年金も、経営者の未来を守る「重要な資産」
経営者は、
事業・人材・投資・不動産など、
日々の意思決定に追われますが、
自分の老後資産については後回しにしがちです。
しかし現実には
✔ 加給年金だけで年40万円以上増える
✔ 厚生年金は役員報酬で大きく変わる
✔ 経営者の働き方が老後資産を左右する
✔ 相続・遺族基盤にも直結する
つまり「老齢厚生年金と加給年金」は、
経営者の資産設計における“核”となる制度 なのです。
ぜひ、この記事を参考に、
役員報酬の設計、配偶者の働き方、厚生年金への加入など、
自分自身の“未来を守る設計”を進めてください。