経営者の老後資金戦略で、
最も意思決定のインパクトが大きいテーマのひとつが
Contents
- 1 ✔ 老齢基礎年金(国民年金)を
- 2 「いつから受け取るか?」
- 3 ■ 1. 老齢基礎年金の大原則:原則65歳、繰上げは60歳、繰下げは75歳まで可能
- 4 【老齢基礎年金の受給開始年齢】
- 5 ✔ 終身で支給される年金を
- 6 ✔ 最大84%増やせる可能性がある
- 7 ■ 2. 「繰上げ受給」とは?──60歳からもらえるが“減額の一生継続”に要注意
- 8 ✔ 60歳から受給可能
- 9 ✔ 1か月繰上げるごとに0.4%減額
- 10 ✔ 最大24%の減額
- 11 ✔ 減額は一生続く
- 12 ✔「収入は早く得られるが、生涯受取総額が大幅に減る」制度
- 13 ■ 3. 「繰下げ受給」とは?──66歳以降に遅らせると“年金額が増える”
- 14 ✔ 1か月繰下げごとに0.7%増額
- 15 ✔ 最大84%増額(75歳受給時)
- 16 ✔ 増額は一生続く
- 17 ■ 4. 経営者にとって「繰下げが強力な選択肢」になる理由
- 18 ■ 5. 繰下げの注意点(経営者が誤解しやすいポイント)
- 19 ■ 6. 経営者向け「繰上げ・繰下げ」最適化の思考法
- 20 ■ 7. まとめ:繰下げは「経営者の最強の終身投資」だが、繰上げも状況次第
- 21 ✔ 60歳から受給できるが一生減額
- 22 ✔ 75歳まで繰下げでき、一生増額
- 23 ✔ 経営者は繰下げのメリットを最大限享受できる
- 24 ✔ ただし事業波動・健康状態で繰上げ有利になるケースも
- 25 ✔ 受給開始年齢は老後資産戦略の“核”となる
- 26 ✔ 人生最大級の投資判断
- 27 ✔ そして絶対に理解しておくべき制度
✔ 老齢基礎年金(国民年金)を
「いつから受け取るか?」
という問題です。
老齢基礎年金は原則65歳からですが、
-
60歳からの繰上げ受給(減額)
-
66〜75歳までの繰下げ受給(増額)
という選択肢があります。
この「受給開始年齢の調整」は、
経営者のライフプラン・事業承継・資産形成・相続戦略にも
強く影響を与える“重大な財務意思決定”です。
しかし現実には、
経営者がこの制度を十分理解しているケースは少なく、
特に繰下げによる“年金額の劇的増加”を知らずに
大きな損をしている方も多く見られます。
本記事では、
2025年の最新制度を踏まえて
「老齢基礎年金の繰上げ・繰下げ」を徹底的にわかりやすく解説します。
■ 1. 老齢基礎年金の大原則:原則65歳、繰上げは60歳、繰下げは75歳まで可能
まず、制度の基本ルールを整理します。
【老齢基礎年金の受給開始年齢】
✔ 標準:65歳
✔ 繰上げ:60〜64歳
✔ 繰下げ:66〜75歳(最大10年延ばせる)
2022年の法改正により、
繰下げ受給が 75歳まで拡大 されました。
経営者にとってこの変更は非常に重要です。
なぜなら、
✔ 終身で支給される年金を
✔ 最大84%増やせる可能性がある
(繰下げ75歳の場合)
という、他のどの金融商品よりも強力な“終身増額機能”だからです。
■ 2. 「繰上げ受給」とは?──60歳からもらえるが“減額の一生継続”に要注意
繰上げ受給は以下の特徴があります。
✔ 60歳から受給可能
✔ 1か月繰上げるごとに0.4%減額
✔ 最大24%の減額
✔ 減額は一生続く
仮に60歳で繰上げた場合:
-
60ヶ月繰上げ × 0.4% = 24%減額
-
将来の終身年金が25%近く減る
つまり、
✔「収入は早く得られるが、生涯受取総額が大幅に減る」制度
と言えます。
■ 経営者が繰上げを選ぶケース(例)
繰上げ受給自体は決して悪い選択ではありません。
以下のようなケースでは有力な選択肢になります。
● ケース①:60歳以降の事業収入が激減する可能性がある
事業が縮小し、60〜65歳の収入に大きな不安がある場合。
● ケース②:個人事業主・フリーランスで収入が不安定
会社員と違い保証がないため、早期受給の意味が大きい。
● ケース③:寿命が短いリスクが高い(健康状態)
長く生きる前提が成り立たない場合は繰上げが有利になる。
● ケース④:相続財産が十分あり、年金額より手元資金重視
現金が必要な局面が多い経営者の場合、早期現金化が有利。
ただし、
多くの経営者は 収入源が複数(事業・不動産・投資) であるため、
繰上げよりも “繰下げの方が有利” になることが多い点に注意が必要です。
■ 3. 「繰下げ受給」とは?──66歳以降に遅らせると“年金額が増える”
繰下げ受給の特徴は以下の通りです。
✔ 1か月繰下げごとに0.7%増額
✔ 最大84%増額(75歳受給時)
✔ 増額は一生続く
66歳以上に遅らせるだけで
“自動的に” 年金額が増え続けます。
■ 繰下げによる増額シミュレーション(2025年基礎年金:年額約81万円)
| 受給開始年齢 | 増減 | 年金額(概算) |
|---|---|---|
| 65歳 | 0% | 約81万円 |
| 66歳 | +8.4% | 約88万円 |
| 70歳 | +42% | 約115万円 |
| 75歳 | +84% | 約149万円 |
75歳受給で約1.5倍 です。
しかもこれは終身です。
■ “増額した分”を元に戻すのに必要な年数は?
繰下げの増額を取り戻す最初の年齢(損益分岐点)は基本的に以下です。
-
66歳 → 約76〜77歳
-
70歳 → 約82〜83歳
-
75歳 → 約87〜88歳
経営者は健康意識が高く、
平均寿命を大きく超えて長生きするケースも多いため、
繰下げのメリットが非常に大きくなります。
■ 4. 経営者にとって「繰下げが強力な選択肢」になる理由
経営者は一般的なサラリーマンと違い、
-
事業収入
-
不動産収入
-
配当収入
-
預貯金
-
売却益(M&A)
-
顧問料
-
リタイア後のコンサル収入
など、複数の所得源があることが多いです。
そのため 65〜70歳で“生活に困らない” ことが多く、
以下の理由から「繰下げ有利」になる傾向があります。
● 理由①:年金は“終身収入”であり、長寿リスクに最も強い
老後で最も怖いのは「長生きしすぎて資金が足りなくなる」こと。
年金は終身支給なので、75歳繰下げのメリットは絶大。
● 理由②:不動産・配当などのストック収入があるため、受給を急ぐ必要がない
65歳で必ずしも現金が必要ないケースがほとんど。
● 理由③:70歳まで働く経営者が多く、年金受給の必要性が低い
特に経営者は「引退=収入ゼロ」ではないため、
65歳時点での生活資金に余裕がある。
● 理由④:節税戦略とも相性良い
繰下げにより収入を後ろにずらすことで
税・社会保険料のピークを避けられる場合もある。
● 理由⑤:妻の振替加算・遺族年金との組み合わせで有利
繰下げは「世帯のキャッシュフロー最大化」につながる。
このように、
経営者は「繰下げのメリットをもっとも享受できる層」と言えます。
■ 5. 繰下げの注意点(経営者が誤解しやすいポイント)
もちろんメリットだけではありません。
繰下げには注意点もあります。
● 注意①:75歳まで受け取らないと“無収入のリスク”がある
事業が急に悪化したり、病気になった場合困る可能性。
→ 経営者は“事業の波”が大きいことを忘れない。
● 注意②:早く亡くなると損
繰下げの損益分岐点は前述の通りです。
→ 家系の寿命、健康状態は必ず考慮すべき。
● 注意③:遺族年金に直接影響しないが、夫婦のキャッシュフローに影響
繰下げは遺族年金に影響しませんが、
経営者本人の受給タイミングが家計に影響する。
● 注意④:厚生年金の在職老齢年金と組み合わせる場合は要計算
65〜70歳で働く場合は“総報酬月額”との兼ね合いで支給停止も関係します。
■ 6. 経営者向け「繰上げ・繰下げ」最適化の思考法
以下の3つの質問に答えることで、
経営者が「繰上げ/繰下げ」のどちらを選ぶべきか判断しやすくなります。
■ 質問①:65〜75歳の間、生活資金に困る可能性はあるか?
YES → 繰上げの検討
NO → 繰下げを優先
■ 質問②:健康寿命の見通しは?家族は長寿か?
長寿の家系 → 繰下げが圧倒的に有利
持病がある → 繰上げのメリットが大きい
■ 質問③:事業・不動産・投資収入の見通しは安定しているか?
安定 → 繰下げ
不安定 → 繰上げ(60〜62歳での早期受給も)
■ 7. まとめ:繰下げは「経営者の最強の終身投資」だが、繰上げも状況次第
経営者が押さえるべき結論は、
✔ 60歳から受給できるが一生減額
✔ 75歳まで繰下げでき、一生増額
✔ 経営者は繰下げのメリットを最大限享受できる
✔ ただし事業波動・健康状態で繰上げ有利になるケースも
✔ 受給開始年齢は老後資産戦略の“核”となる
繰下げ受給は、
銀行預金・iDeCo・投資信託・不動産投資よりも
「確実・終身・高利回り」です。
まさに経営者にとって
✔ 人生最大級の投資判断
✔ そして絶対に理解しておくべき制度
と言えます。
ぜひこの記事を参考に、
ご自身の事業・健康・資産状況に合った
“最適な受給開始年齢”を検討してください。