類似業種比準価額は、非上場株式を評価する際の基本的な方法で、配当、利益、純資産などの要素を基に算出されます。企業の株価評価を精度高く行うため、業種別の比較対象を活用し、適切な株価を算出することが求められています。本記事では、計算方法や注意点を解説します。
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類似業種比準価額は、非上場株式の評価に使用される基本的な方法の一つです。この評価方法を使うことで、未上場企業でも、適切かつ公正な基準に基づいた株式評価が可能となります。具体的には、配当、利益、純資産の三つの要素を基にして計算され、同業他社と比較することで、評価対象会社の株価が求められます。本記事では、類似業種比準価額の概要や計算方法、その活用ポイントについて詳しく解説していきます。
1. 類似業種比準価額の概要と目的
類似業種比準価額は、未上場企業の株式を評価する際に、上場企業と比較して価額を推定するための基準です。この方法は、特に法人税の申告や事業承継など、税務上の非上場株式評価で広く活用されています。未上場企業は、市場価格が存在しないため、その評価が難しいですが、類似業種比準価額を用いることで、特定の業種や同じ規模の会社との比較を通じ、評価に客観性を持たせることができます。これにより、過大評価や過小評価のリスクを抑えた、公正な評価が可能となります。
2. 評価の基準要素
株価の評価に使用される基準要素は、「配当金額」「利益金額」「純資産価額」の三つです。これらは、対象会社の株主が享受する経済的な価値の源泉であるため、株式評価において重要な役割を果たします。それぞれの要素について見ていきましょう。
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配当金額:対象会社が株主に対して支払う利益の一部を指し、企業の収益力や株主に還元する姿勢を反映します。配当額が高いほど、株式価値も高く評価される傾向があります。
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利益金額:会社の利益額を指し、経営の効率や収益性を示す指標です。利益水準が高い企業ほど、投資対象としての価値が高く評価されます。
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純資産価額:会社が保有する資産から負債を差し引いた価額で、企業の財務的な健全性を示します。これもまた、株式の価値に直接影響を及ぼす要因です。
また、評価対象会社の規模に応じて、基準を補正する係数が存在します。例えば、「中会社」や「小会社」などの規模に応じて、それぞれの要素に0.6や0.5といった係数を掛けることで、実態に即した評価が可能となります。
類似業種比準価額の計算式についてもお伝えします。この計算方法は「配当」「利益」「純資産」の3つの要素を基にして行われ、企業の規模に応じて係数が調整されます。
類似業種比準価額の基本計算式
類似業種比準価額の計算は、次の3つの要素を基にした加重平均で算出されます:
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配当金額 / 類似業種の配当率
企業が株主に支払う配当を基にした価額です。配当率が高いほど、配当から計算される価額も高くなります。 -
利益金額 / 類似業種の利益率
企業の利益を基に算出した価額です。利益率が高いほど、この要素から得られる価額も上がります。 -
純資産価額 / 類似業種の純資産倍率
純資産に基づく評価額で、会社の財務健全性を反映します。
これら3つの要素の平均値を取り、企業の実態に即した株式の評価額が求められます。
補正率の適用
企業の規模に応じて、次の補正率を適用することで、企業規模の違いが反映されます。
- 中会社:0.6
- 小会社:0.5
したがって、計算結果にこれらの補正率を掛け合わせて、最終的な評価額を求めます。
3. 業種別の分類と選択基準
評価対象の会社を評価する際、類似する業種の企業との比較が求められます。対象会社がどの業種に属するかは、日本の業種分類基準に基づいて大分類・中分類・小分類に従って選択します。複数の業種に該当する場合には、収益性の観点から最も関連性の高い事業分野を主とし、その分野での評価が行われます。
また、評価の柔軟性を持たせるために、比較対象がない場合や評価基準が不明確な場合には、最も近い事業分野から類似業種を選び、適切な評価を行うことが可能です。これは、特に複合企業などの事業多角化を行っている企業にとって、評価の自由度を高める重要な要素となります。
4. 株価修正のケース
評価日までに対象会社が配当金を支払ったり、株式割当を行ったりした場合、株価に対して一定の修正が必要です。こうした修正は、評価時点の株主の利益を正確に反映するために行われます。
具体的には、直前期末から評価日までに行われた資本構成の変動を調整し、最も実態に近い株価を算出します。評価基準を満たすためには、これらの配当や割当の詳細を精査し、必要に応じて算出基準に反映することが求められます。こうした修正株価の算出は、特に株主間での利益分配において、公正性を確保する重要なプロセスです。
5. 特別配当や非経常利益の扱い
株価評価の正確性を保つため、評価基準に含める利益についても、配慮が必要です。特に、継続的な利益ではなく、特別配当や非経常的な利益(例:不動産売却益や事業再編利益など)は、将来の配当予測から除外することが一般的です。これにより、実際の経営成績や資産内容に応じた正確な株価評価が実現されます。
また、これらの特別利益を評価基準に含めないことで、会社の通常の営業利益や収益力を反映した実態評価が可能になります。この方法は、非上場企業の株式評価において特に有効であり、株主間の公平性を維持しつつ、資産評価を正確に行うための基本的な手法です。
類似業種比準価額は、非上場株式評価の重要な手法であり、特に事業承継や税務上の評価基準として利用されています。この評価方法を理解し活用することで、企業の資産評価が公平に行われ、株主や投資家に対して適切な価値を示すことが可能です。