年金制度の中でも、
経営者や会社役員が最も混乱しやすいテーマが
Contents
- 1 ✔ 年金の「併給(へいきゅう)」
- 2 ■ 1. 年金の併給とは?(経営者向けにシンプルに要点化)
- 3 ✔ 複数の年金を同時に受け取れるのか
- 4 ✔ もしくは、どちらか一方のみになるのか
- 5 【併給の原則】
- 6 ■ 2. 経営者に最も関係する「併給の重要パターン」
- 7 ◎ 老齢基礎年金 + 老齢厚生年金
- 8 ◎ 障害基礎年金 + 老齢厚生年金
- 9 ◎ 遺族厚生年金 + 老齢基礎年金
- 10 ◎ 遺族厚生年金 + 老齢厚生年金
- 11 ◎ 遺族基礎年金 + 老齢基礎年金
- 12 ◎ 障害年金 + 遺族年金
- 13 ✔ 老齢 × 老齢 → OK
- 14 ✔ 老齢 × 遺族 → 一部OK
- 15 ✔ 老齢 × 障害 → 一部OK
- 16 ✔ 遺族 × 遺族 → NG
- 17 ✔ 障害 × 障害 → NG
- 18 ■ 3. 「老齢基礎年金 × 老齢厚生年金」は完全併給できる(標準の組み合わせ)
- 19 ✔ 老齢基礎年金(国民年金)
- 20 ✔ 老齢厚生年金(報酬比例)
- 21 ■ 4. 「遺族厚生年金 × 老齢基礎年金」も併給できる(経営者家庭で最も多い)
- 22 ✔ 遺族厚生年金(夫の加入歴)
- 23 ✔ 老齢基礎年金(妻本人)
- 24 ■ 5. 「遺族厚生年金 × 老齢厚生年金」は併給調整あり(差額の多い方を支給)
- 25 ✔ 老齢厚生年金
- 26 ✔ 遺族厚生年金
- 27 ▶ 妻の老齢厚生年金
- 28 ▶ 遺族厚生年金(夫の厚生年金 ×3/4)
- 29 ✔ 老齢基礎年金:満額
- 30 ✔ 遺族厚生年金:満額
- 31 ✖ 老齢厚生年金:調整・支給停止
- 32 ■ 6. 「遺族基礎年金 × 老齢基礎年金」は併給できない(最重要ポイント)
- 33 ✔ 遺族基礎年金は終了し
- 34 ✔ 妻の老齢基礎年金に切り替わる
- 35 ■ 7. 「障害年金 × 老齢年金 × 遺族年金」も経営者家庭では起こりやすい
- 36 ■ 8. 年金併給が経営者の老後計画に与える“4つの重大影響”
- 37 ■ 9. 経営者向け “併給の最終チェックリスト”
- 38 ■ 10. まとめ:年金併給は難しいが、理解すれば“最強の生活保障”になる
- 39 ✔ 年齢・加入歴・配偶者の働き方で併給可否が変わる
- 40 ✔ “併給できる年金”と“調整で減る年金”がある
- 41 ✔ 経営者家庭は遺族厚生年金が重要
- 42 ✔ 役員報酬は老齢・遺族年金の金額に直結
- 43 ✔ 併給制度を理解すると、老後キャッシュフローが最適化できる
- 44 ✔ 老齢年金
- 45 ✔ 遺族厚生年金
- 46 ✔ 不動産収入
✔ 年金の「併給(へいきゅう)」
=複数の年金を同時にもらえるか/もらえないか
という問題です。
実は、年金には
もらえる組み合わせ と
もらえない組み合わせ(併給調整)
が存在します。
これは“年金法の壁”と言われるほど複雑で、
専門家でも間違えることがあります。
特に経営者の場合:
-
厚生年金加入期間が長い
-
事業所得と年金が同時期に重なる
-
配偶者との年金の組み合わせが複雑
-
遺族年金との併給が絡む
-
在職老齢年金との調整が発生する
など、併給の影響が非常に大きくなります。
この記事では、
2025年時点で最も正確で重要な
「年金の併給ルール」を、経営者向けに徹底的に整理します。
■ 1. 年金の併給とは?(経営者向けにシンプルに要点化)
併給とは、
✔ 複数の年金を同時に受け取れるのか
✔ もしくは、どちらか一方のみになるのか
を定めた制度です。
基本原則は次のとおりです。
【併給の原則】
-
国民年金(基礎年金)同士は併給できない
-
厚生年金同士も併給できない
-
「老齢」「障害」「遺族」は原則併給不可
-
ただし“異なる種類の年金”は併給できる
-
調整により一部だけ支給されるケースがある
これだけだと難しいので、
経営者に直接関係する「併給のパターン」で整理していきます。
■ 2. 経営者に最も関係する「併給の重要パターン」
(これを理解すれば併給制度の半分は理解できる)
以下は、経営者が老後に直面しやすい併給の代表パターンです。
◎ 老齢基礎年金 + 老齢厚生年金
→ 併給できる(全額)
=通常の年金受給
◎ 障害基礎年金 + 老齢厚生年金
→ 併給可能(ただし一部調整)
◎ 遺族厚生年金 + 老齢基礎年金
→ 併給できる
◎ 遺族厚生年金 + 老齢厚生年金
→ 併給できるが調整あり(差額支給)
◎ 遺族基礎年金 + 老齢基礎年金
→ 併給できない(どちらか一方)
→ 最も誤解が多いポイント!
◎ 障害年金 + 遺族年金
→ 種類により併給可能
整理すると、
✔ 老齢 × 老齢 → OK
✔ 老齢 × 遺族 → 一部OK
✔ 老齢 × 障害 → 一部OK
✔ 遺族 × 遺族 → NG
✔ 障害 × 障害 → NG
ここからは、経営者の実務に関係する部分を深く解説します。
■ 3. 「老齢基礎年金 × 老齢厚生年金」は完全併給できる(標準の組み合わせ)
もっともシンプルで、
ほぼすべての経営者が対象になるのがこのパターンです。
✔ 老齢基礎年金(国民年金)
✔ 老齢厚生年金(報酬比例)
→ どちらも満額受け取れる
これは、会社員・役員として働いた全員に適用されます。
例:
基礎年金:約81万円
厚生年金:約120万円
→ 合計 約200万円/年 という受給も普通に起こります。
■ 4. 「遺族厚生年金 × 老齢基礎年金」も併給できる(経営者家庭で最も多い)
妻が65歳になった際、もっとも多い組み合わせがこれ。
✔ 遺族厚生年金(夫の加入歴)
✔ 老齢基礎年金(妻本人)
→ 両方満額もらえる
例:
妻の老齢基礎年金:約80万円
夫の遺族厚生年金:約75万円
→ 合計:約155万円/年
このパターンは、
-
妻が専業主婦(第3号)
-
夫が厚生年金に長期間加入
-
夫が妻より年上
という“経営者家庭に非常に多い条件”で発生します。
妻の老後の収入の柱になるため、戦略的価値は非常に大きいです。
■ 5. 「遺族厚生年金 × 老齢厚生年金」は併給調整あり(差額の多い方を支給)
ここが併給制度で最も難しい部分です。
妻が自身の厚生年金を持っている場合:
✔ 老齢厚生年金
✔ 遺族厚生年金
→ 両方はもらえない(調整が入る)
具体的には:
▶ 妻の老齢厚生年金
▶ 遺族厚生年金(夫の厚生年金 ×3/4)
この「多い方」が支給され、
少ない方はカットされるか、一部だけ加算される。
■ 経営者家庭でよくある例
妻がパートで厚生年金に数年加入
→ 老齢厚生年金が少額(年20万円とか)
夫が経営者で厚生年金が多い
→ 遺族厚生年金が年間75万円など
この場合:
-
妻の老齢厚生年金:カット
-
遺族厚生年金:満額支給
-
老齢基礎年金はそのまま受給
妻の受給はこうなる:
✔ 老齢基礎年金:満額
✔ 遺族厚生年金:満額
✖ 老齢厚生年金:調整・支給停止
これが併給の典型例です。
■ 6. 「遺族基礎年金 × 老齢基礎年金」は併給できない(最重要ポイント)
遺族基礎年金は「子どもが18歳まで」の支援制度です。
妻が65歳になり老齢基礎年金を受給する年齢になると…
✔ 遺族基礎年金は終了し
✔ 妻の老齢基礎年金に切り替わる
つまり、併給されません。
「基礎年金同士は併給できない」の典型例です。
■ 7. 「障害年金 × 老齢年金 × 遺族年金」も経営者家庭では起こりやすい
(複雑だが重要)
経営者は個人事業主経験・創業時の不規則な働き方などにより
障害年金と老齢年金が重なることがあります。
結論は次のとおり。
✔ 障害基礎年金 + 老齢厚生年金
→ 併給できる
✔ 障害厚生年金 + 老齢基礎年金
→ 併給できる
✔ 障害厚生年金 + 老齢厚生年金
→ どちらか一方(選択)
つまり、
-
種類が違う:併給OK
-
種類が同じ:NG(選択)
です。
■ 8. 年金併給が経営者の老後計画に与える“4つの重大影響”
年金併給は経営者の老後戦略に大きな影響を与えます。
① 妻の終身収入の金額が大きく変わる
併給の組み合わせにより
妻の老後年金が年間数十万円変わる。
→ 長寿リスク対策に直結
② 役員報酬の設定が遺族厚生年金に影響
報酬が低すぎると遺族厚生年金も低くなる。
→ 遺族厚生年金 × 老齢基礎年金の併給額が減る
→ 妻の生活が不安定に
③ 民間保険の設計にも影響
遺族年金を見込むことで
死亡保険を減らせるケースも多い。
④ 事業承継後の経営者の生活基盤になる
会社を譲った後も
老齢年金 × 遺族年金の組み合わせが
生活の柱となる。
経営者は「併給制度の理解=老後キャッシュフローの最適化」
という視点が重要です。
■ 9. 経営者向け “併給の最終チェックリスト”
✔ 妻の老齢基礎年金は満額になるか?
✔ 妻の老齢厚生年金はあるか?
✔ 妻が受け取る遺族厚生年金はいくらか?
✔ 遺族厚生年金と老齢年金が重なる時期は?
✔ 遺族基礎年金がいつまで続くか?
✔ 併給調整でどの年金がカットされるのか?
✔ 役員報酬の設定は適切か?
✔ 老齢年金の繰下げ・在職老齢年金の影響は?
✔ 未支給年金の請求体制は整っているか?
経営者は「自分が亡くなったら、家族の収入がどう変わるか」を
必ず可視化しておく必要があります。
■ 10. まとめ:年金併給は難しいが、理解すれば“最強の生活保障”になる
最後に要点をまとめます。
✔ 年齢・加入歴・配偶者の働き方で併給可否が変わる
✔ “併給できる年金”と“調整で減る年金”がある
✔ 経営者家庭は遺族厚生年金が重要
✔ 役員報酬は老齢・遺族年金の金額に直結
✔ 併給制度を理解すると、老後キャッシュフローが最適化できる
特に経営者の場合、
“老後の収入の柱”は事業ではなくなり、
✔ 老齢年金
✔ 遺族厚生年金
✔ 不動産収入
これらが人生後半の安定を作ります。
そのため、併給制度は
単なる年金知識ではなく、
経営者の人生戦略そのもの なのです。
ぜひこの記事をきっかけに、
自分と家族が将来受け取る年金を“併給の視点”から見直してみてください。