事業承継・M&Aにおける種類株式の活用方法とメリット

更新日:

事業承継・M&Aにおける「種類株式」について

事業承継やM&Aのプロセスにおいて、企業の株式構造を柔軟に管理することが成功のカギとなります。その中でも「種類株式」の導入は、事業の円滑な承継やM&Aにおいて非常に効果的な手法です。この記事では、種類株式の定義、活用方法、そして事業承継やM&Aにおける具体的なメリットについて詳しく解説します。

種類株式とは?

種類株式とは、会社法に基づいて発行される特殊な権利を持つ株式のことです。通常の普通株式とは異なり、種類株式は株主に対して異なる権利を付与することができ、会社のニーズや株主間の関係に応じて柔軟に株式を設計できます。

種類株式には主に以下のような権利が含まれます。

  1. 議決権の制限
    特定の株式に対して議決権を制限し、他の株主が経営判断に対してより強い影響力を持つことを可能にします。

  2. 優先配当
    利益配当の際に、特定の株主が優先的に配当を受け取る権利を持つ種類株式です。

  3. 残余財産の分配に関する優先権
    企業解散時に、残余財産の分配において優先的な取り扱いを受ける権利です。

  4. 取得条項付き株式
    事前に定めた条件に基づいて、会社が株式を買い取ることができる権利です。M&Aや事業承継時に株主間の調整が必要な場合に役立ちます。


種類株式の活用方法

種類株式は、その柔軟性からさまざまな事業承継やM&Aのシナリオで活用できます。以下のような活用方法が考えられます。

  1. 事業承継での活用
    事業承継の場面では、後継者に経営権を譲渡しつつ、創業者が株主としての影響力を保持するために、議決権制限株式が活用されます。これにより、後継者に経営権を委ねつつも、重要な経営判断において創業者が引き続き関与できる仕組みを作ることができます。

  2. M&Aでの活用
    M&Aの際には、株主の中で異なる立場や利益を持つグループ間での調整が必要になることが多いです。優先配当株式を導入することで、特定の株主に対してメリットを提供し、全体的な合意形成を容易にすることが可能です。


種類株式のメリット

種類株式を導入することによって、以下のような具体的なメリットが得られます。

  1. 株主間の利益調整
    株主が複数存在する場合、利益や経営権に関する調整が必要です。種類株式を使うことで、各株主に異なる権利を持たせ、株主間の不満を軽減し、スムーズな事業承継やM&Aを実現することができます。

  2. 資本政策の柔軟性
    種類株式は資本政策を柔軟にし、経営戦略に応じて異なる権利を持つ株式を発行できるため、投資家のニーズに応じた資本調達が可能です。特に、経営権を維持しつつ、外部資本を導入する際に有効です。

  3. 税務対策
    種類株式は、税務面でのメリットもあります。例えば、優先配当株式を用いることで、株主に配当を提供しながらも会社の経営権を保持することができ、株主間での相続税や贈与税の調整にも役立ちます。


事業承継やM&Aでの具体的な事例

  1. 家族経営の事業承継
    創業者が子供に経営権を譲りたいが、まだ経営が不安定なため、株主としての影響力を残したい場合、議決権制限株式を使います。これにより、創業者は株主としての影響力を保持しつつ、次世代に経営を引き継ぐことが可能です。

  2. 外部投資家の導入時のM&A
    外部からの投資を受け入れたいが、経営権を保持したい場合、種類株式を活用します。投資家には優先配当株式を提供し、会社の利益分配において優先的な権利を付与しながら、議決権を制限することで、経営陣が引き続き会社のコントロールを持ちます。


まとめ

種類株式は、事業承継やM&Aの場面で非常に強力なツールです。各株主に異なる権利を持たせ、利益調整や資本政策を柔軟に対応できるため、事業の円滑な引き継ぎや売却が実現しやすくなります。導入を検討する際には、企業のニーズや株主間の関係性を十分に考慮し、専門家のアドバイスを得ることが重要です。

Copyright© 株式会社RAD , 2025 All Rights Reserved.