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概要
株式の評価方法の一つである「配当還元方式」は、特に中小企業の株式評価において用いられる方式の一つです。この評価方式では、株主が受け取る配当金の額を基準として株式の価値を評価します。配当金が企業の利益分配であるため、株主にとっては実際の利益の一部を受け取る指標として機能します。
配当還元方式は、特に小規模な非上場企業に適しており、会社の純資産や収益性だけでなく、配当実績を重視しているのが特徴です。
配当還元方式のポイント
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配当の重視
配当還元方式は、企業がどれだけ配当を支払うか、という点に焦点を当てます。つまり、過去の配当金の実績を基準に、その株式の価値を算定します。株主に対する利益分配の部分が評価の中心となりますので、配当を出していない企業ではこの方式は適用されにくいと言えます。 -
株主の利益還元
株主が受け取る配当金は、事業の成功や業績に基づいて決まるため、この方式は、企業が株主にどれだけの利益を還元しているかという観点での評価が行われます。
配当還元方式の計算方法
この方式では、株主が年間に受け取る配当金をもとに株式の評価を行います。具体的には、配当金をある利回り(配当還元率)で割り戻して株式の価値を算出します。
計算式は以下のようになります:
株式評価額 = 1株当たりの年間配当額 ÷ 配当還元率
- 年間配当額:過去の実績に基づく年間配当額
- 配当還元率:一般的には株式市場や同業他社の平均配当利回りが参考にされます。
配当還元方式が適用される場面
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中小企業の株式評価
特にオーナーが少なく、外部からの資金調達を行わないような中小企業では、配当金が株主にとって重要な利益の還元手段となります。そのため、事業承継やM&Aの場面でも、配当還元方式は適用されることが多いです。 -
非上場企業の評価
非上場企業では、上場企業のように市場での株価が存在しないため、内部的に株式の価値を評価する必要があります。配当還元方式は、実際に株主が受け取る利益に基づいているため、非上場企業の株価評価に適しています。
配当還元方式のメリットとデメリット
メリット
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簡単でわかりやすい
配当還元方式は、配当実績に基づいて株式を評価するため、比較的簡単に算出が可能です。過去の配当金データさえあれば、複雑な計算が必要なく評価できる点が大きなメリットです。 -
配当を重視する株主に有効
特に配当を安定的に受け取っている株主にとっては、配当金の額を基にした評価が適切であると感じやすい方式です。株主の視点からの評価が行いやすくなります。
デメリット
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成長企業には不向き
配当還元方式は、あくまで過去の配当実績に基づくため、今後の成長が期待される企業や配当を控えめにしている企業には不向きです。特に、利益を内部留保して事業拡大を図っている企業では、この方式での評価は低くなる可能性があります。 -
配当がない企業では評価が難しい
配当を出していない企業や、配当金が少ない企業では、この方式での適切な株式評価が難しくなります。特に非上場の中小企業では、内部留保に重点を置いている場合が多く、その場合は配当還元方式の適用が困難です。
配当還元方式と他の株式評価方法との比較
配当還元方式は、企業の配当金を基準とした評価ですが、他の評価方式も存在します。これらの方式と比較して、企業の状況や目的に応じて使い分けが必要です。
- 純資産価額方式:企業の資産価値を重視して評価する方法。資産が多い企業や事業承継時に多く利用されます。
- 類似業種比準方式:業績や類似業種の上場企業の株価を基に評価する方法。成長性を重視する場面で有効です。
まとめ
配当還元方式は、過去の配当実績を基に株式を評価する方法であり、特に中小企業の株式評価や事業承継、M&Aにおいて有効な手段です。配当金を重要視する株主にとっては納得感のある評価方式ですが、成長企業や配当を重視していない企業には不向きであることを理解しておく必要があります。株式評価を行う際には、他の評価方法と併用することで、より精度の高い評価が可能になります。