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──経営者が「使える人・使えない人」を正しく理解すべき理由
相続・資産承継の相談現場で、
時折出てくる制度が 特定贈与信託 です。
ただし、この制度は
- 名前は聞いたことがある
- 何となく節税になりそう
- でも実際はよく分からない
という理解にとどまっている経営者がほとんどです。
結論から言えば、特定贈与信託は
✔ 使える人はかなり限定される
✔ だがハマる人には非常に強力
という 「ピンポイント型の制度」 です。
この記事では、
2026年時点の最新制度を前提に、
- 特定贈与信託とは何か
- 税制上の優遇内容
- 向いている経営者・向いていない経営者
- よくある誤解と失敗
を、実務目線でわかりやすく解説します。
■ 1. 特定贈与信託とは?(まず結論)
特定贈与信託とは、
✔ 障害のある方の生活・療養のために
✔ 財産を信託銀行などに信託し
✔ 贈与税を非課税(または軽減)にできる制度
です。
この制度は、
相続税対策ではなく「福祉的配慮」を目的とした制度
である点が最大の特徴です。
■ 2. 制度の法的な位置づけ
特定贈与信託は、
- 相続税法
- 信託法
に基づく 税制優遇付き信託制度 です。
✔ 誰が関与するのか?
- 委託者:財産を出す人(多くは親・祖父母)
- 受益者:障害のある方
- 受託者:信託銀行などの金融機関
👉 個人同士で自由に作れる信託ではありません。
■ 3. 特定贈与信託の最大の特徴|贈与税の非課税枠
この制度の核心は、
贈与税の非課税措置 にあります。
【非課税限度額(2026年時点)】
| 障害の区分 | 非課税限度額 |
|---|---|
| 特定障害者(重度障害) | 6,000万円 |
| 特定障害者以外の障害者 | 3,000万円 |
👉 この金額までは、
贈与税がかかりません。
✔ 「暦年贈与」や「相続時精算課税」とは別枠
- 年110万円とは無関係
- 相続時精算課税とも併用可
■ 4. どんな人が「受益者」になれるのか?
ここが最も重要な制限です。
✔ 受益者になれるのは「障害者」に限られる
具体的には、
- 身体障害者手帳
- 療育手帳
- 精神障害者保健福祉手帳
などを有する方が対象。
✔ 「将来障害が心配」では使えない
❌ 健常者の子・孫には使えない
❌ 老後不安対策では使えない
この点を誤解して検討すると、
時間とコストを無駄にします。
■ 5. 特定贈与信託の仕組み(お金の流れ)
① 親・祖父母が金銭を信託銀行へ預ける
② 信託契約を締結
③ 銀行が受益者(障害者)のために管理
④ 生活費・医療費などとして定期的に給付
👉 一括で自由に使えるお金にはならない
という点が重要です。
■ 6. 経営者にとってのメリット
✔ メリット①:高額な贈与税非課税枠
- 最大6,000万円
- 生前に安心して資金を移せる
✔ メリット②:資金の使途が管理される
- 浪費・詐欺リスクを回避
- 親亡き後も生活費を確保
✔ メリット③:相続対策と福祉配慮を両立
✔「税金対策」ではなく「安心の設計」
として評価される。
■ 7. デメリット・制約(ここを理解しないと失敗)
❌ デメリット①:使途の自由がない
- 生活費
- 医療費
- 療養関連費用
👉 投資や贅沢目的には使えない。
❌ デメリット②:信託銀行しか受託できない
- 家族信託のように柔軟ではない
- 契約条件は金融機関主導
❌ デメリット③:コストがかかる
- 初期費用
- 信託報酬(継続費用)
❌ デメリット④:相続税対策の万能薬ではない
- 健常な相続人には無関係
- 株式承継には使えない
■ 8. 経営者が検討すべき典型ケース
✔ 障害のある子がいる
✔ 親亡き後の生活が最大の不安
✔ 相続で兄弟間トラブルを避けたい
✔ 十分な金融資産がある
✔ 「管理」まで含めて任せたい
■ 9. 向いていないケース(重要)
❌ 障害者がいない
❌ 純粋な節税目的
❌ 自社株の承継が主目的
❌ 柔軟な資金運用をしたい
この場合は、
- 家族信託
- 遺言信託
- 生前贈与
の方が適しています。
■ 10. よくある誤解(経営者編)
❌ 誤解①:誰でも使える贈与信託
→ 障害者限定
❌ 誤解②:相続税対策の切り札
→ 目的が違う
❌ 誤解③:自由に使えるお金
→ 使途制限あり
■ 11. 実務上の注意点(2026年時点)
- 必ず税務署への届出が必要
- 受益者の障害区分の確認が必須
- 相続全体設計と必ずセットで検討
- 他の兄弟姉妹への説明が重要
■ 12. まとめ|特定贈与信託は「福祉と承継のための制度」
最後に要点を整理します。
✔ 特定贈与信託は障害者のための制度
✔ 最大6,000万円まで贈与税非課税
✔ 信託銀行が管理・給付
✔ 経営者でも使えるのは限定ケース
✔ 節税目的だけでは使えない
✔ 相続・信託設計の一部として検討
特定贈与信託は、
✔ 税金を減らすための制度ではなく
✔ 家族を守るための制度
です。
経営者が検討する場合は、
相続・信託・税務を一体で設計できる専門家とともに、
慎重に進めることが不可欠です。