Contents
- 1 ✔ 再就職手当(早期再就職のボーナス)
- 2 ✔ 高年齢雇用継続基本給付金(賃金低下の補填給付)
- 3 ✔ 高年齢再就職給付金(再就職後の給付金)
- 4 ■ 1. 再就職手当とは?
- 5 基本手当の残日数 × 基本手当日額 × 支給率(60〜70%)
- 6 7,000円 × 100日 × 70% = 49万円
- 7 ■ 2. 「高年齢雇用継続基本給付金」とは?
- 8 賃金低下率に応じて最大15%の給付
- 9 ✔ 高年齢雇用継続基本給付金は “段階的廃止” 予定
- 10 ✔ ただし経過措置により60歳到達者は引き続き受給可能
- 11 ■ 3. 「高年齢再就職給付金」とは?
- 12 ■ 4. 3つの給付制度を比較する
- 13 ■ 5. 経営者・企業が実務上注意すべき点
- 14 ■ 6. まとめ:雇用保険の給付は“第二のキャリア設計の3本柱”
- 15 ✔ 再就職手当
- 16 ✔ 高年齢雇用継続基本給付金
- 17 ✔ 高年齢再就職給付金
「再就職手当」「高年齢雇用継続基本給付金」「高年齢再就職給付金」を徹底解説
──50代・60代のキャリア戦略に欠かせない“雇用保険の出口”を経営者視点で整理する
労働人口の減少、雇用延長義務化、人生100年時代のキャリア再構築。
企業と働く人を取り巻く環境は急激に変化しています。
その中で、
雇用保険からの給付制度を正しく使えるかどうか は
50代以降のライフプランに大きな影響を与えます。
特に次の3つは、
“キャリア転換・再就職・雇用延長” の局面で非常に重要です。
✔ 再就職手当(早期再就職のボーナス)
✔ 高年齢雇用継続基本給付金(賃金低下の補填給付)
✔ 高年齢再就職給付金(再就職後の給付金)
いずれも雇用保険からの給付ですが、
対象者・給付額・条件は大きく異なります。
本記事では経営者層に向けて、
-
制度の仕組み
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対象者
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金額
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65歳前後の違い
-
再雇用制度との関係
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会社経営に与える影響
をわかりやすく整理します。
■ 1. 再就職手当とは?
──“早期再就職”をすると最大70%支給されるインセンティブ
再就職手当は、基本手当(失業給付)を受給できる人が
早く再就職することで受け取れる “成功報酬型”の給付金 です。
◆ 支給対象者
次のすべてを満たす必要があります。
【再就職手当の主な条件】
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ハローワークに求職申込みをした
-
待期7日間が経過した
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失業給付が支給される人(雇用保険加入12ヶ月以上)
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基本手当の支給残日数が 1/3以上 ある
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再就職した会社に 1年以上雇用見込み がある
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自己都合退職の場合:給付制限期間経過後か、特別例に該当
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過去3年以内に再就職手当を受けていない
◆ 支給額(2025年時点)
支給額は、
基本手当の残日数 × 基本手当日額 × 支給率(60〜70%)
● 支給率の違い
| 基本手当の残日数 | 支給率 |
|---|---|
| 所定給付日数の1/3以上あって、1/2未満 | 60% |
| 所定給付日数の1/2以上残っている | 70% |
◆ 【例】
基本手当日額 7,000円
残日数 100日
所定給付日数 150日 → 残日数は 2/3 のため支給率 70%
計算すると:
7,000円 × 100日 × 70% = 49万円
50万円近い給付となり、非常にメリットの大きい制度です。
■ 2. 「高年齢雇用継続基本給付金」とは?
──60歳以降の賃金が75%未満に下がると給付される制度
60歳到達後に賃金が大幅に下がった場合、
雇用保険から補填として支給されるのが
高年齢雇用継続基本給付金 です。
従業員の賃金を守る制度として非常に重要ですが、
制度廃止の議論などにより複雑になっています。
◆ 支給対象者
以下の条件をすべて満たす必要があります。
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60歳以上65歳未満の雇用保険被保険者
-
60歳到達時点で雇用保険加入期間が 5年以上
-
60歳以降の賃金が、60歳到達時の75%未満に低下
-
引き続き同じ事業所で働いている
◆ 支給額の基本計算
賃金低下率に応じて最大15%の給付
賃金低下率の分類は以下の通り。
| 賃金水準(60歳時との比較) | 給付率 |
|---|---|
| 75%〜61%未満 | 賃金低下率に応じて段階的に給付(0〜15%) |
| 60%未満 | 給付率は一律 15% |
【例】
60歳時の賃金月額:40万円
60歳以降の賃金:20万円(50%)
→ 大幅低下のため、給付率 15%
→ 給付額:20万円 × 15% = 3万円/月
1年続けば36万円、5年なら180万円の給付となります。
◆ 2025年の重要ポイント(制度廃止の方向性)
国の方針により、
✔ 高年齢雇用継続基本給付金は “段階的廃止” 予定
✔ ただし経過措置により60歳到達者は引き続き受給可能
政策としては、
賃金補填ではなく「同一労働同一賃金」による待遇改善を促す流れです。
そのため、
“従業員の60歳以降の雇用戦略” を考える企業にとっては
制度依存からの脱却が必要になります。
■ 3. 「高年齢再就職給付金」とは?
──60歳以上で離職し再就職した人の賃金補填
高年齢再就職給付金は、
60歳以上で離職 → 再就職した場合に、
賃金が60歳時の75%未満に低下したときに給付される制度です。
高年齢雇用継続基本給付金と似ていますが、
“再就職した人” が対象 という点が異なります。
◆ 支給対象者
-
60歳以上65歳未満で再就職
-
再就職の前に雇用保険加入期間が5年以上
-
再就職後の賃金が60歳時の75%未満
-
1年以上雇用される見込みあり
◆ 給付額
給付額は、
高年齢雇用継続基本給付金と同じく 最大15% です。
◆ 【例】
60歳時点の賃金:40万円
再就職後の賃金:24万円(60%)
→ 給付率は段階的、概ね 8〜10%
→ 給付額:2〜2.4万円/月
再就職後の家計の立ち上がりを支える制度として機能します。
◆ この制度も縮小傾向
高年齢雇用継続基本給付金と同様、
国の方針により縮小・経過措置化が進んでいます。
将来的には制度全体が見直される可能性があります。
■ 4. 3つの給付制度を比較する
| 制度名 | 対象年齢 | 対象者 | 給付内容 | 制度の方向性 |
|---|---|---|---|---|
| 再就職手当 | 全年齢(主に65歳未満) | 基本手当受給者 | 残日数×日額×60〜70% | 重要制度として継続 |
| 高年齢雇用継続基本給付金 | 60〜65歳 | 同じ企業で継続雇用 | 賃金低下分の最大15% | 段階的廃止へ |
| 高年齢再就職給付金 | 60〜65歳 | 再就職者 | 賃金低下分の最大15% | 段階的廃止へ |
経営者が押さえるべきポイント
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再就職手当は今後も重要で、金額インパクトも大きい
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高年齢雇用継続基本給付金と再就職給付金は縮小方向だが、“経過措置で現行ルールの適用者は多い”
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従業員の 60歳以降の賃金設計に制度が直結する
制度自体の縮小は、
企業に「賃金制度の改善」を求める政策的意図でもあります。
■ 5. 経営者・企業が実務上注意すべき点
◆ ① 60歳以降の人材戦略をどう設計するか
給付金に頼れなくなり、
会社側に賃金制度の工夫が求められる時代に。
◆ ② 社員の再就職手当の活用は“離職→再就職”タイミングが鍵
離職票を速やかに発行することは企業の義務。
遅れると社員の不利益になる。
◆ ③ 再雇用制度との整合性
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再雇用で賃金が下がりすぎると従業員の不満につながる
-
給付金が廃止されていく中で“待遇改善”が必要
◆ ④ 経営者自身は受給できる?
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再就職手当 → 役員でも実態として労働者なら受給可能
-
賃金低下補填給付(60歳以降) → 役員は一般に対象外
経営者の老後資金としては期待しにくい制度です。
■ 6. まとめ:雇用保険の給付は“第二のキャリア設計の3本柱”
最後にポイントを整理します。
✔ 再就職手当
早期再就職すると 最大70%の給付。最も活用価値が高い。
✔ 高年齢雇用継続基本給付金
60歳以降の賃金低下を補填。最大15%。制度は縮小・廃止方向。
✔ 高年齢再就職給付金
60歳以上で再就職後に賃金が下がった場合に給付。最大15%。
これらは、
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定年後も働きたい人
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再就職を考えている人
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賃金が大きく下がる人
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キャリア変更を検討する人
にとって極めて重要な制度です。
特に経営者にとっては、
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従業員の60歳以降の処遇
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再雇用制度
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費用対効果の高い雇用戦略
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キャリア支援制度の設計
に直結するため、正確な理解が不可欠です。
2025年以降、制度の見直しはますます進むため、
「給付に依存するのではなく、企業と個人が自立的にキャリアを設計する時代」
と言えるでしょう。