経営者は、日々の意思決定で会社の未来を守っています。
しかし、もうひとつ忘れてはならない未来があります。
Contents
- 1 ✔ 経営者に万が一があったとき、
- 2 “家族の生活はどう守られるのか?”
- 3 ✔ 経営者が厚生年金に加入しているかどうか
- 4 ✔ 配偶者の働き方
- 5 ✔ 子どもの有無
- 6 ✔ 役員報酬の設定
- 7 ✔ 納付期間の長さ
- 8 ■ 1. 遺族基礎年金とは──18歳までの子がいる家庭を支える“国民年金の遺族保障”
- 9 【遺族基礎年金の受給対象】
- 10 ✔「子どもがいるかどうか」で受給できるかが完全に決まる
- 11 【年額:約81万円(基本)+子の加算】
- 12 ■ 2. 遺族厚生年金とは──厚生年金加入者の家族に支払われる“非常に重要な制度”
- 13 【遺族厚生年金の受給対象】
- 14 ✔ 受給できる額は
- 15 「夫が本来65歳でもらえる厚生年金額 × 3/4」
- 16 経営者の役員報酬が高い
- 17 ■ 3. 遺族年金は“夫婦の年齢差”で大きく変わる(経営者は要注意)
- 18 ✔ 妻が遺族厚生年金を“長期間”受け取る可能性が極めて高い
- 19 ■ 4. 経営者に多い“遺族年金の落とし穴”
- 20 ■ 5. 遺族年金を最大限活かす「経営者の実務戦略」
- 21 ■ 6. 遺族基礎年金と遺族厚生年金の比較一覧(経営者向け)
- 22 ■ 7. まとめ:遺族年金は“家族の生活と事業承継を守る”経営者の必須知識
- 23 ✔ 遺族基礎年金は“子がいる家庭専用”
- 24 ✔ 遺族厚生年金は“厚生年金加入期間”で決まる
- 25 ✔ 経営者は役員報酬が遺族年金に直結する
- 26 ✔ 妻の老後は遺族厚生年金が柱になるケースが多い
- 27 ✔ 子どもがいるかどうかで遺族基礎年金は大きく変わる
- 28 ✔ 未支給年金の申請漏れは非常に多い
- 29 ✔ 遺族年金は事業承継・老後設計に必須の視点
✔ 経営者に万が一があったとき、
“家族の生活はどう守られるのか?”
その答えとなる制度が
遺族厚生年金と遺族基礎年金 です。
多くの経営者が誤解しているのは、
-
年金は高齢者だけのもの
-
遺族年金は専業主婦の家庭だけのもの
-
自分が厚生年金加入かどうかで差は出ない
-
会社役員は民間保険でカバーするもの
といった“思い込み”。
しかし現実には、
✔ 経営者が厚生年金に加入しているかどうか
✔ 配偶者の働き方
✔ 子どもの有無
✔ 役員報酬の設定
✔ 納付期間の長さ
これらがすべて、遺族年金の金額や受給可否に直結します。
特に 2025年時点の制度では、
経営者の家庭環境によって
年間100万円以上の差が生まれるケースも少なくありません。
本記事では、
経営者とその家族の未来を守るために必要な情報を
徹底的にわかりやすく解説します。
■ 1. 遺族基礎年金とは──18歳までの子がいる家庭を支える“国民年金の遺族保障”
遺族基礎年金は、
国民年金(基礎年金)に加入しているすべての人に共通する
“家族保障”の仕組みです。
受給できる遺族は次の通りです。
【遺族基礎年金の受給対象】
✔ 子のいる配偶者(夫 or 妻)
✔ 子(18歳年度末まで or 障害1・2級なら20歳未満)
ここで重要なのは、
✔「子どもがいるかどうか」で受給できるかが完全に決まる
ということです。
逆に言えば、
-
子どもがいない夫婦
-
子どもが成人している夫婦
の場合、遺族基礎年金は受給できません。
■ 遺族基礎年金の金額(2025年版)
【年額:約81万円(基本)+子の加算】
子1人目:+約22万円
子2人目:+約22万円
子3人目以降:+約7万円
例:子2人の場合
→ 81万円 + 22万円 + 22万円 = 約125万円/年
※ いずれも2025年の最新水準に基づく。
遺族基礎年金は子の有無で支給されるかが決まるため、
“会社の規模”や“役職”は一切関係ありません。
経営者でも、個人事業主でも同じです。
■ 2. 遺族厚生年金とは──厚生年金加入者の家族に支払われる“非常に重要な制度”
経営者の老後資産戦略で
「厚生年金加入は必須」と言われますが、
その理由のひとつがこの 遺族厚生年金 です。
遺族厚生年金は、
厚生年金加入期間のある人が亡くなった場合に
家族に支払われる年金です。
対象者は次の通り。
【遺族厚生年金の受給対象】
✔ 妻(夫)
✔ 子
✔ 父母
✔ 孫
✔ 祖父母
(優先順位あり)
実際には、配偶者(妻)が受給するケースが最も一般的です。
■ 遺族厚生年金の金額(経営者はここが最重要)
遺族厚生年金の金額は、
亡くなった人(夫)の老齢厚生年金額をベースに決まります。
簡潔に言うと、
✔ 受給できる額は
「夫が本来65歳でもらえる厚生年金額 × 3/4」
例:夫の老齢厚生年金見込み額
→ 年約100万円
→ 遺族厚生年金は約75万円/年
つまり、
経営者の役員報酬が高い
→ 厚生年金額も高い
→ 遺族厚生年金も高くなる
というダイレクトな関係があります。
■ 3. 遺族年金は“夫婦の年齢差”で大きく変わる(経営者は要注意)
経営者のご家庭には
「夫が10歳以上年上、妻が専業主婦」
というパターンが多く見られます。
この場合、
✔ 妻が遺族厚生年金を“長期間”受け取る可能性が極めて高い
結果として、
老後の家計における“妻の終身収入”として
遺族厚生年金が大きな柱になります。
特に、
-
妻に厚生年金加入期間が少ない
-
妻の老齢基礎年金も多くない
-
夫の事業収入が多く、妻の所得が少ない
という場合、遺族厚生年金の重要性はさらに増します。
■ 4. 経営者に多い“遺族年金の落とし穴”
遺族年金は複雑で、経営者ならではの注意点があります。
✔ 落とし穴①:配偶者が厚生年金加入すると遺族基礎年金はもらえない
遺族基礎年金は「子がいる場合のみ」。
妻が働いて厚生年金に加入するかどうかは関係ない。
→ 誤解が非常に多い。
✔ 落とし穴②:役員報酬が低いと遺族厚生年金も低くなる
法人化後に役員報酬ゼロで運営している経営者に多い問題。
-
厚生年金:極端に少ない
-
遺族厚生年金:さらに少ない
→ 結果、妻の老後が極端に不安定に。
✔ 落とし穴③:国民年金(国民基礎)だけの期間が長いと不利
個人事業主歴が長く、厚生年金期間が短い経営者は注意。
→ 遺族厚生年金の額が非常に小さくなる。
✔ 落とし穴④:再婚すると遺族年金が受給できなくなる場合がある
配偶者の婚姻状況で権利が消えるケースあり。
✔ 落とし穴⑤:死亡時に未支給年金が請求されない
経営者が亡くなった際、
年金未支給分は請求しない限り一切支払われない。
→ 実務では非常に多い“もらい忘れ”。
■ 5. 遺族年金を最大限活かす「経営者の実務戦略」
では、経営者はどのように遺族年金を戦略として組み込むべきか?
● 戦略①:役員報酬の設定は「老後年金 × 遺族年金」に直結
役員報酬が低すぎると、遺族厚生年金額も低くなる。
経営者の報酬は
「節税視点」だけでなく
「老後資産 × 家族保障視点」でも設定すべき。
● 戦略②:妻が第3号被保険者なら“遺族厚生年金+振替加算”が有力
妻が働いていない期間が多い家庭では、
遺族厚生年金が妻の老後の最大の収入源になる。
● 戦略③:事業承継と合わせて遺族年金の流れを設計
特に60代後半〜70代以降は
“経営者本人が亡くなったあと“のキャッシュフローが重要。
遺族厚生年金は妻の収入の柱となり、事業承継計画にも影響する。
● 戦略④:生命保険と遺族年金をセットで最適化
遺族年金を見込んだうえで
生命保険を減らせる場合もあれば、
不足分を民間保険で補うべき場合もある。
→ 特に子どもがいる家庭では必須の設計論点。
● 戦略⑤:未支給年金・年金記録の確認を怠らない
特に経営者は、年金記録に不備があるケースが多い。
-
起業前
-
法人成り前
-
社会保険の加入漏れ
-
役員在職中の報酬の変動
こうした要素が “遺族年金額を左右” する。
■ 6. 遺族基礎年金と遺族厚生年金の比較一覧(経営者向け)
| 項目 | 遺族基礎年金 | 遺族厚生年金 |
|---|---|---|
| 該当制度 | 国民年金 | 厚生年金 |
| 主な対象 | 子のある配偶者・子 | 妻(夫)・子など |
| 支給要件 | 子の有無 | 厚生年金加入期間 |
| 金額 | 約81万円+子の加算 | 老齢厚生年金 × 3/4 |
| 終身か | 子がいる間のみ | 妻は原則終身 |
| 経営者への影響 | 小 | 非常に大きい |
経営者家庭では
「遺族厚生年金」が最重要となる理由がわかるはずです。
■ 7. まとめ:遺族年金は“家族の生活と事業承継を守る”経営者の必須知識
最後に要点をまとめます。
✔ 遺族基礎年金は“子がいる家庭専用”
✔ 遺族厚生年金は“厚生年金加入期間”で決まる
✔ 経営者は役員報酬が遺族年金に直結する
✔ 妻の老後は遺族厚生年金が柱になるケースが多い
✔ 子どもがいるかどうかで遺族基礎年金は大きく変わる
✔ 未支給年金の申請漏れは非常に多い
✔ 遺族年金は事業承継・老後設計に必須の視点
“もしもの時に家族を守る力”
これが遺族年金です。
特に経営者は、
収入の大半が「事業に依存」しているため、
遺族年金の重要性は会社員以上に大きくなります。
ご自身の社会保険加入状況、
配偶者の働き方、
役員報酬の設定、
年金記録の棚卸し、
これらを見直すことで、
家族全体の未来をより強固に守ることができます。
この記事が、
経営者の老後と家族の生活を守るきっかけになれば幸いです。