株券発行会社・株券不発行会社とは?概要、違い、注意点まとめ

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株券発行会社と株券不発行会社の概要

株券発行会社と株券不発行会社は、株式会社が株主に対して株式の所有権を証明する株券の取り扱いに関する違いを示すものです。特に、中小企業や非上場企業にとっては、この違いが経営や事業承継、資金調達に大きく影響を与えることがあります。

株券発行会社は、株式の所有を証明するために物理的な株券を発行する会社です。一方、株券不発行会社は、物理的な株券を発行せず、株式の権利や所有は電子的に管理されます。


株券発行会社の特徴

株券発行会社では、株主が株式を取得した際に、その権利を証明するための株券を受け取ります。株券が発行されることで、株主はその株式を第三者に譲渡する際に、物理的な株券を利用して取引を行います。この方式は歴史的に広く採用されてきましたが、特に以下のような特徴があります。

  • 物理的な証明: 株式の所有を明確に証明する手段として株券が必要。
  • 譲渡の簡便性: 株券があるため、第三者への株式譲渡が比較的簡単。
  • リスク: 株券の紛失や盗難のリスクが存在。

また、株券を発行する会社は株券の発行・管理にコストがかかるため、これを避ける目的で株券不発行に切り替える企業が増えています。


株券不発行会社の特徴

株券不発行会社は、株式の所有や譲渡の管理を物理的な株券ではなく、電子的に行います。この方式は特に、上場企業を中心に主流となっており、次のようなメリットが考えられます。

  • コスト削減: 物理的な株券の発行や管理にかかるコストが削減される。
  • リスクの低減: 株券の紛失や盗難といったリスクを回避できる。
  • 管理の容易さ: 株主名簿の電子管理が可能となり、株式の譲渡や管理が効率的になる。

特に、非上場企業においても株券を発行しない会社が増えており、電子的な管理に移行することで経営の透明性を高めています。


株券発行会社と株券不発行会社の違い

項目 株券発行会社 株券不発行会社
株式の証明手段 物理的な株券による証明 電子的な株主名簿で管理
譲渡の方法 株券を譲渡 電子的に譲渡
コスト 株券発行や管理にコストがかかる コストは比較的低い
リスク 株券の紛失や盗難のリスクがある 株券紛失のリスクがない
取引の迅速性 株券の受け渡しが必要でやや遅れる 迅速に取引が可能

株券発行・不発行における注意点

  1. 事業承継やM&Aにおける影響: 株券発行会社の場合、株券の物理的な受け渡しが必要となるため、事業承継やM&Aの際に迅速な対応が難しくなる可能性があります。一方で、株券不発行会社では、電子的に所有権の移転が行われるため、効率的な取引が可能です。

  2. 法的要件の確認: 日本では、会社法に基づき、企業が株券を発行するかどうかを選択できますが、一部の企業においては、法的な義務や株主の要請によって株券を発行しなければならない場合もあります。特に、非上場企業では、この選択が経営方針に大きく影響します。

  3. 透明性の確保: 株券不発行に切り替えることで、株主名簿の管理がより透明かつ正確になるため、経営の健全性を高めることができます。特に、非上場企業やファミリービジネスでは、株主構成の管理がより容易になり、事業承継や資本政策の柔軟性が増します。


株券発行・不発行に関する事例

  1. A社の株券発行から株券不発行への移行
    製造業を営むA社は、従来株券を発行していましたが、事業承継を見据えて株券不発行に切り替えました。これにより、株式の譲渡がスムーズになり、事業承継の際に株券を物理的に渡す手間を省けました。

  2. 株券紛失によるトラブル回避事例
    IT企業B社では、以前株券を発行していましたが、株券の紛失によって株主が所有権を証明できなくなるトラブルが発生しました。この経験から、株券不発行を選択し、電子的な株主名簿管理に移行することで同様のトラブルを回避しました。


まとめ

株券発行会社と株券不発行会社の違いは、中小企業にとって重要な経営判断の一つです。特に、事業承継やM&Aを視野に入れた際に、どちらの方法を選択するかによって、資産や経営権の移行プロセスが大きく変わる可能性があります。

企業が持続的な成長を続けるためには、株式の管理方法について深く理解し、適切な選択をすることが重要です。株券の発行・不発行の選択は、それぞれの企業のニーズや状況に応じた戦略的な意思決定に結びつきます。

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