Contents
- 1 ✔ 年金分割制度とは何か
- 2 ✔ “必ず分割される部分” と “合意が必要な部分” の違い
- 3 ✔ 2025年時点の最新ルール
- 4 ✔ 経営者が特に注意すべきポイント
- 5 ✔ 手続きの流れ・期限
- 6 ✔ 実際の分割割合の決め方
- 7 ■ 1. 年金分割制度とは?
- 8 ■ 2. 「合意分割制度」──夫婦で話し合って決める部分
- 9 ■ 3. 「3号分割制度」──専業主婦(夫)期間は自動で分割される
- 10 ✔ 厚生年金加入の報酬比例部分のうち、“第3号被保険者期間に対応する部分のみ”が1/2になる
- 11 ■ 4. 年金分割で“どれくらい”変わるのか(イメージ例)
- 12 ■ 5. 年金分割の手続きの流れ
- 13 ✔ 離婚後2年以内に請求しないと、年金分割ができなくなる
- 14 ■ 6. 年金分割制度の2025年時点の最新トピック
- 15 ■ 7. 経営者が知っておくべき“落とし穴”
- 16 ■ 8. まとめ:年金分割は「老後の財産分与」。理解しないと損をする制度
- 17 ✔ 合意分割:話し合いで0〜50%
- 18 ✔ 3号分割:専業主婦(夫)期間は自動で1/2
- 19 ✔ 厚生年金の報酬比例部分が対象
- 20 ✔ 離婚後2年以内に請求
- 21 ✔ 経営者は特に影響が大きい(報酬比例が大きいため)
──離婚時に“老後資産”をどう守るか。経営者が知っておくべき公的年金の権利
公的年金には、
離婚時に夫婦間で年金記録を分け合う
「年金分割制度」 があります。
特に経営者層の相談として多いのが、
-
「会社役員として厚生年金が長いが、離婚時にどこまで分割されるのか」
-
「専業主婦(夫)がいた期間の年金はどう扱われるのか」
-
「離婚後に請求漏れがあった場合、過去にさかのぼって分割できるか」
-
「手続きの期限を過ぎると損をするって本当?」
といった疑問です。
年金分割は、
老後の生活資金に直結する重要テーマ にもかかわらず、
誤解されている部分が非常に多い制度でもあります。
本記事では、
✔ 年金分割制度とは何か
✔ “必ず分割される部分” と “合意が必要な部分” の違い
✔ 2025年時点の最新ルール
✔ 経営者が特に注意すべきポイント
✔ 手続きの流れ・期限
✔ 実際の分割割合の決め方
を、初心者でも理解しやすく、かつ経営者視点で押さえるべき点に絞って解説します。
■ 1. 年金分割制度とは?
──厚生年金(報酬比例部分)を離婚時に分ける仕組み
年金分割とは、
夫婦の婚姻期間中に形成された 厚生年金の報酬比例部分 を、
離婚時に夫婦で分け合う制度です。
ポイントは次の通り。
◆ 対象となるのは「厚生年金の報酬比例部分」だけ
対象になるのは、
-
給料や賞与に応じて増減する「報酬比例部分」の記録
のみです。
◆ 基礎年金(老齢基礎年金)は分割できない
国民年金(老齢基礎年金)は
あくまで“個人単位”の制度のため、分割の対象外です。
◆ 分割制度には2種類ある
-
合意分割(夫婦の合意が必要)
-
3号分割(専業主婦・夫期間は自動で按分)
この2つを理解することが最重要です。
■ 2. 「合意分割制度」──夫婦で話し合って決める部分
婚姻期間中の厚生年金の報酬比例部分について、
離婚時に 0〜50%の範囲で分割割合を決める 制度です。
◆ 合意分割が適用されるケース
-
夫が会社員、妻がフルタイム勤務で厚生年金加入
-
夫婦ともに会社員
-
婚姻期間に2号被保険者(会社員・公務員)として働いていた
-
婚姻期間に専業主婦(夫)であっても、3号期間に該当しない場合
◆ 合意分割の特徴
-
最大50%まで 分けられる
-
当事者間の「合意」が必要
-
合意できない場合は、家庭裁判所の調停・審判で決定
-
離婚後2年以内に請求が必要(重要)
◆ 経営者が注意すべき点
多くの経営者・役員は、
-
報酬比例部分が大きい
-
在職期間が長く報酬も高い
-
役員報酬が高額
という傾向があるため、
合意分割で 実質的に大きな金額が分割されるケース が多いのです。
特に、
-
長年の役員報酬
-
社長給与の増額
-
賞与の大きさ
は、報酬比例部分を大きく押し上げます。
そのため、離婚時には
老後の受取額が大きく変わる可能性 があるという点を必ず把握しておきましょう。
■ 3. 「3号分割制度」──専業主婦(夫)期間は自動で分割される
3号分割は、
婚姻期間中に配偶者が 第3号被保険者(専業主婦・専業主夫) であった期間について、
自動的に 1/2ずつに分ける制度 です。
◆ 3号分割の特徴
-
専業主婦(夫)期間は「自動的に1/2で按分」
-
合意は不要、裁判所も不要
-
“対象期間だけ” が1/2になる
-
夫婦のどちらからでも請求できる
◆ 3号分割の誤解
よくある誤解は、
「専業主婦期間は全部半分になる」
というもの。
正しくは、
✔ 厚生年金加入の報酬比例部分のうち、“第3号被保険者期間に対応する部分のみ”が1/2になる
これ以外の期間については 合意分割の対象 です。
◆ 経営者が注意すべきポイント
経営者側からすると、
-
専業主婦期間が長いほど、自動で分割される部分が増える
-
合意分割よりも強制力が高い
-
手続きしないと適用されない(請求必要)
という点が重要です。
■ 4. 年金分割で“どれくらい”変わるのか(イメージ例)
たとえば、
-
夫:厚生年金加入35年、報酬比例部分が15万円
-
妻:専業主婦期間15年(3号期間)
というケースを考えます。
◆ リタイア時(分割前)
-
夫:報酬比例部分 15万円
-
妻:0円
◆ 分割適用後
【3号分割】
専業主婦期間15年に相当する部分が自動で 1/2。
【合意分割】
残りの期間について、たとえば50%で合意した場合、
夫婦ともに約7.5万円ずつ になる。
つまり、
年金分割は老後資金に 数千万円規模の影響が出る ことがあります。
経営者ほど報酬比例部分が大きいため、
より影響は深刻です。
■ 5. 年金分割の手続きの流れ
手続きは以下のステップになります。
STEP1:年金分割の「情報通知書」を取り寄せる
必要書類:
-
夫婦の年金記録
-
婚姻期間中の加入記録
-
ねんきんダイヤルまたは年金事務所で取得可能
この「情報通知書」がなければ、
具体的な分割割合を決めることができません。
STEP2:夫婦で分割割合を協議(合意分割の場合)
-
0〜50%の範囲で決める
-
合意できない場合は家庭裁判所で調停
-
調停・審判で決まった内容は法的拘束力あり
STEP3:分割請求の提出(離婚後2年以内)
年金事務所に提出:
-
年金分割請求書
-
離婚がわかる書類(戸籍謄本など)
-
情報通知書
-
合意文書または調停調書・審判書
STEP4:分割が記録として確定
確定後は、
-
夫婦それぞれの年金記録に反映
-
受給開始時(65歳など)に自動で反映される
◆ 注意:離婚後2年を過ぎると請求不可
これは非常に重要です。
✔ 離婚後2年以内に請求しないと、年金分割ができなくなる
(※合意分割・3号分割ともに同じ)
「請求忘れ」は想像以上に多く、
取り返しのつかない損失になります。
■ 6. 年金分割制度の2025年時点の最新トピック
◆ ① デジタル化により“情報通知書”の取得が簡易化
年金事務所での取得手続きがスムーズになり、
事前の相談支援も強化されています。
◆ ② 夫婦の働き方の多様化によりケースが複雑化
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共働き夫婦
-
役員報酬と給与の両方があるケース
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海外勤務を挟むケース(社会保障協定との関係)
-
企業型DC・iDeCoとの併用
など、個別の判断が必要なケースが増えています。
◆ ③ 年金分割は“受給額”だけではなく“受給資格”にも影響
とくに妻側の場合、分割があることで受給資格(10年)を満たすこともあります。
■ 7. 経営者が知っておくべき“落とし穴”
経営者層は多くの点で一般の会社員とは事情が異なるため、
以下のポイントを特に意識してください。
① 役員報酬が大きいほど分割額も大きくなる
高報酬=老齢厚生年金も大きい
→ 分割時の影響も大きい。
② 合意分割は“必ず50%になるわけではない”
話し合い or 裁判所の判断で決まります。
ただし一般に、長期専業主婦期間があれば 50%に近づきやすい 傾向あり。
③ 財産分与とは別に行われる
-
年金分割
-
財産分与
-
養育費
-
退職金の扱い
はすべて別制度。
混同すると不利になります。
④ 請求期限の2年を逃すと“完全にアウト”
老後の資金に致命的影響。
⑤ 海外勤務期間がある場合は協定国か否かで扱いが変わる
海外勤務中の年金記録は複雑。
情報通知書を必ず取得して確認すること。
■ 8. まとめ:年金分割は「老後の財産分与」。理解しないと損をする制度
年金分割は、
婚姻期間中に形成された“老後資産”を公平に分け合う仕組みです。
✔ 合意分割:話し合いで0〜50%
✔ 3号分割:専業主婦(夫)期間は自動で1/2
✔ 厚生年金の報酬比例部分が対象
✔ 離婚後2年以内に請求
✔ 経営者は特に影響が大きい(報酬比例が大きいため)
老後の生活に数千万円単位の差が出る可能性があるため、
「離婚時の最重要項目」と言っても過言ではありません。
経営者としては、
-
年金記録の確認
-
情報通知書の取得
-
期限内の請求
-
必要に応じた専門家への相談
を徹底しておくべきです。
人生100年時代、
老後の資金戦略は事業戦略と同じくらい重要です。