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初任給40万円時代が到来した現実
近年、賃上げに関するニュースを目にしない日はありません。
特に衝撃的なのが、「初任給30万円超」「初任給40万円」という言葉です。
実際に、
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ファーストリテイリングは新卒初任給を37万円へ
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オープンハウスは初任給40万円+入社支度金30万円
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大和証券は5年連続賃上げで初任給31万円を検討
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ソニーグループはボーナスを月給化し初任給32万円超
といった具合に、大企業を中心に「初任給インフレ」が進んでいます。
このニュースを見て、多くの中小企業経営者がこう感じているのではないでしょうか。
「正直、うちはそこまで出せない」
「もう中小企業は採用できないのでは?」
しかし重要なのは、
これは単なる“賃上げ競争”ではないという点です。
本質は「賃上げ」ではなく「人材の二極化」
今回起きている現象を一言で表すなら、
人材の二極化です。
大企業は、
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人件費を「コスト」ではなく「投資」と捉え
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採用・定着・生産性向上をセットで設計し
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高付加価値人材を囲い込む
という戦略を明確に取っています。
一方で中小企業は、
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賃上げ余力が乏しい
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採用は後手
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人が辞めてから慌てる
という構造から抜け出せていません。
結果として、
「選ばれる会社」と「最初から比較対象にすらならない会社」
に分かれ始めています。
Z世代の価値観が決定的に変わった
この流れを加速させているのが、Z世代の就職観です。
各種調査によると、
Z世代が就職先選びで最も重視するのは
「給与・待遇(約78%)」。
2位の「仕事のやりがい」とは30ポイント以上の差があります。
さらに、
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出世志向は低下
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副業・兼業志向は7割超
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終身雇用への期待は低い
つまり彼らは、
「会社に尽くす」より「自分の人生を守る」
という視点で会社を選んでいます。
この前提を理解せずに、
「やりがいがあるよ」
「アットホームだよ」
だけを訴求しても、響かなくなっているのです。
中小企業に広がる“静かな危機”
実際、中小企業側では深刻な事態が起きています。
調査によると、
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中小企業の半数以上が「採用・定着に課題あり」
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約85%が「将来的な人材流出」に危機感
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最大の問題は「応募者が集まらない」
つまり、
問題は「辞める人」よりも「そもそも来ない人」
なのです。
この状態で放置すると、
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採用できない
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現場が疲弊
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残った人が辞める
という負のスパイラルに入ります。
絶対にやってはいけない「初任給マジック」
ここで多くの中小企業が陥る罠があります。
それが初任給マジックです。
これは、
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新卒の初任給だけを無理に上げる
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その原資を既存社員の昇給抑制や賞与カットで捻出
という対応です。
一見、採用対策に見えますが、結果は最悪です。
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既存社員:「自分たちは評価されていない」
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新入社員:「気まずくて居づらい」
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経営者:「組織がギスギスする」
最終的に、
誰も得をしない組織が出来上がります。
中小企業が取るべき現実的な5つの対策
では、中小企業はどうすればいいのか。
結論から言えば、金額勝負はしない、しかし設計勝負は必須です。
① 給与を「点」ではなく「線」で見せる
初任給だけを見せるのではなく、
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昇給モデル
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3年後・5年後の到達点
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評価と報酬の連動
を言語化します。
「この会社で働くと、どう増えるのか?」
を説明できる会社は、選ばれやすくなります。
② 正当な人事評価制度を構築する
評価基準が曖昧な会社から、人は必ず辞めます。
重要なのは、
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何をすれば評価されるか
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どう成長すれば報酬が上がるか
が見えること。
制度は、社員を縛るものではなく、
社員を守るものです。
③ 働きやすさを「人」ではなく「仕組み」で作る
「いい上司がいるから大丈夫」は危険です。
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業務の属人化を減らす
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業務量を見える化する
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上司ガチャを防ぐ仕組みを作る
人ではなく、構造で守ることが必要です。
④ 成長機会を明文化する
Z世代は出世より「市場価値」を見ています。
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どんなスキルが身につくのか
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どんな経験ができるのか
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何年後にどうなれるのか
これを言語化できる会社は強いです。
⑤ 採用コンセプトを絞る
「誰でもいいから来てほしい」は失敗の元。
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価値観
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働き方
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成長志向
を明確にし、合わない人を最初から取らない。
これが結果的に定着率を高めます。
まとめ|賃上げできるかではなく、設計できるか
賃上げ格差は、今後も確実に拡大します。
しかし、それは「中小企業の終わり」を意味しません。
問われているのは、
人が辞めない構造を設計できるかどうか。
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給与
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評価
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成長
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働き方
これらを場当たり的ではなく、
経営として設計できた会社だけが生き残る。
もし、
「うちはどこから手をつけるべきか分からない」
「今の制度が危険かどうか診断したい」
と感じた方は、一度立ち止まって整理することをおすすめします。