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はじめに
中小企業が新分野へ挑戦する際に強力な追い風となるのが「新事業進出補助金」です。応募申請から採択までが大きな山場ですが、実際には「採択された後の流れ」がもっとも重要です。なぜなら、交付申請や実績報告、事業化状況報告など、手続きを誤るとせっかく採択された補助金が交付されなかったり、返還を求められるケースすらあるからです。
本記事では、採択後に必要となる交付申請から補助金の入金、そして事業化状況報告までの全体像を、交付申請ガイドや事務局の公式手引きをもとにわかりやすく整理します。これから補助事業を進める事業者の方はぜひ参考にしてください。
採択後の流れの全体像
まず、新事業進出補助金の「採択後」には、以下のステップが待っています。
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交付申請(採択発表から原則2か月以内)
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補助事業の実施(交付決定後にスタート)
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実績報告(事業完了後30日以内または完了期限まで)
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精算払請求(補助金額確定後の請求手続き)
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補助金の入金
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事業化状況報告(5年間、年1回の報告義務)
一見シンプルに見えますが、各ステップには厳格な期限やルールがあります。以下で詳しく見ていきましょう。
① 交付申請(採択発表から原則2か月以内)
採択後、まず行うのが「交付申請」です。これは「補助金を正式に受ける権利を確定させる手続き」であり、非常に重要です。
流れ
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事務局主催のオンライン説明会に参加(必須)
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電子申請システム(マイページ)で申請手続きを開始
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必要書類を揃えて提出
提出書類の例
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交付申請書
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経費明細表
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見積依頼書・見積書
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金融機関による確認書
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賃上げ計画の表明書
注意点
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採択発表から原則2か月以内に提出しないと採択取消となるリスクあり
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計画内容の変更は原則不可(交付決定前に調整を求められる場合はあるが、自主的な変更は認められない)
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見積書は原則2社以上から取得が必要
② 補助事業の実施(交付決定後)
交付申請が受理され、事務局の審査を経て「交付決定通知」が届いたら、ようやく補助事業を実施できます。
実施期間
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交付決定日から 14か月以内
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または、採択発表から 16か月以内
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上記のいずれか短い方
実施中の注意事項
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契約や発注、支払いは必ず「交付決定日以降」に行う必要あり
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補助対象経費以外の支出を補助対象に含めると不正受給に該当
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補助対象財産(機械装置、建物など)は「補助事業専用」である必要がある
③ 実績報告(事業完了後30日以内)
補助事業が完了したら、30日以内または補助事業完了期限日までに「実績報告書」を提出する必要があります。
実績報告で必要な書類
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実績報告書
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補助対象経費の証憑(請求書、領収書、振込記録など)
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納品書や工事完了報告書
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写真などのエビデンス資料
審査のポイント
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計画通りに実施されたか
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経費の支出が適正か
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賃上げや付加価値目標の達成に向けた進捗があるか
④ 精算払請求(補助金確定額の請求)
実績報告が承認されると、補助金の「確定額」が通知されます。その後、交付請求書を提出して補助金を請求します。
ここで注意すべきは、応募時に申請した額がそのまま満額支給されるとは限らないということです。審査の結果、一部経費が認められず、減額されるケースも少なくありません。
⑤ 補助金の入金
交付請求が受理されると、指定口座に補助金が振り込まれます。時期は事務局の処理状況によりますが、一般的には実績報告承認から1~2か月程度が目安です。
⑥ 事業化状況報告(5年間)
補助金を受け取った後も「義務」は続きます。事業終了後5年間は、年1回の事業化状況報告が求められます。
報告内容
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売上高・付加価値額の推移
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賃上げ実績(賃上げ計画との整合性)
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事業継続状況(導入設備の稼働状況など)
これを怠ると次回以降の補助金申請に悪影響が出るだけでなく、場合によっては補助金の返還を求められるリスクもあります。
採択後のよくある失敗と注意点
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交付申請の遅れ → 採択取消になる可能性
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契約・発注を交付決定前に実施 → 経費不認定
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見積書の不備 → 経費が削られる要因
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実績報告の証憑不足 → 補助金額減額や不認定
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事業化状況報告を怠る → 次回以降の補助金申請に悪影響
まとめ
新事業進出補助金は、採択されること自体が大きな一歩ですが、本当の勝負は「採択後」にあります。
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交付申請を2か月以内に行うこと
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補助事業は交付決定後に実施すること
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実績報告は完了後30日以内に提出すること
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補助金は精算払いで入金されること
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5年間の事業化状況報告が義務であること
この一連の流れを理解しておくことで、補助金を確実に受け取り、自社の成長につなげることができます。
✍️この記事を読んで「もっと具体的な申請サポートが欲しい」「書類作成のサポートが必要」と思われた方は、認定支援機関や専門コンサルタントへの相談も検討してみてください。
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