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はじめに
ハンバーガーは年齢や性別を問わず人気の高いメニューです。しかし2025年、この業界に暗いニュースが走りました。ハンバーガー店の倒産件数が過去最多を更新したのです。2024年はわずか1件の倒産でしたが、2025年はわずか8カ月間で7件に達し、過去最多だった2014年の6件を上回りました。
一見、人気が根強いように思えるハンバーガービジネスですが、実際には中小零細の店舗が厳しい経営環境に直面しています。
本記事では、倒産が増加した背景を整理し、勝ち組と負け組の構造を明らかにしたうえで、中小企業が生き残るための具体的な戦略を提案します。
ハンバーガー店倒産の現状(東京商工リサーチデータより引用)
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2024年の倒産件数:1件
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2025年(8月まで):7件 → 過去最多を更新
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倒産した企業の約8割が「販売不振」を理由に経営破綻
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倒産した企業の大半(6件)は従業員10名未満の小規模事業者
つまり、資本力が乏しい中小規模の店舗ほど、材料費や人件費の上昇に対応できず、競合に押し出されている構図が浮き彫りになっています。
倒産増加の背景要因
1. 原材料の高騰
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牛肉、チーズ、小麦粉、レタス、トマトなど主要食材の価格が高騰
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原材料コストは全体の4〜6割を占め、価格上昇の影響が直撃
2. 人件費の上昇
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人手不足と最低賃金の引き上げにより、人件費の負担増加
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アルバイトやパートの採用難が続き、店舗運営の効率化が進まない
3. 価格転嫁の難しさ
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大手チェーン(マクドナルド等)は「数百円の低価格」で強さを維持
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高級店は「2,000円前後のプレミアムバーガー」で差別化に成功
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中小は「安くもない・高級でもない」というポジションに追い込まれる
4. 消費者の節約志向
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東京都区部における平均価格:
2019年169円 → 2025年243円まで上昇 -
「600円を超えると食べられない」という声も増加
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牛丼やラーメンとの価格帯競争が厳しさを増している
勝ち組と負け組の構造
勝ち組:大手チェーン
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日本マクドナルドHD:8カ月連続で前年同月比売上アップ
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強力な仕入れ網、効率的なオペレーション、マーケティング力で盤石
勝ち組:高級ハンバーガー店
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2,000円前後でも「行列ができる」人気
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SNS映え・グルメ需要を背景に、価値提供に成功
負け組:中小零細店
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大手の低価格競争には太刀打ちできない
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高級店の品質・ブランド力には届かない
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結果として「中途半端」な価格帯で埋没
中小飲食店が取るべき生き残り戦略
1. 価格戦略の明確化
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ワンコイン戦略:500円以下で提供し、日常使いに強みを持つ
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プレミアム戦略:1,000円以上で「ご褒美感」を演出
2. 差別化ポイントの強化
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地元食材やご当地バーガーの開発
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オリジナルソースやトッピングの独自性
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「健康志向」「ベジタリアン対応」などターゲット特化
3. 販路拡大と販売チャネル多様化
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デリバリー・テイクアウト強化
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サブスク型(月額制バーガーパスなど)の導入
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フードフェス・イベント出店でブランド認知を拡大
4. コスト構造の見直し
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シェアキッチンの活用で固定費削減
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フランチャイズや共同仕入れでコスト圧縮
他業種への教訓
ハンバーガー店の倒産増加は、飲食業界だけの話ではありません。
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価格と付加価値のバランスが崩れると顧客離れが起きる
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大手か高級か、いずれかのポジションを明確にしないと中小は埋没する
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「値ごろ感」=顧客が納得できる価格戦略が必要
この原則は、美容室、タクシー業界、調剤薬局など、近年倒産が増えている他業種にも共通しています。
まとめ
2025年、ハンバーガー店の倒産が過去最多を更新しました。
背景には、原材料の高騰、人件費の上昇、価格転嫁の難しさという三重苦があります。勝ち残っているのは、大手チェーンか高級店。中小零細店はその狭間で苦戦を強いられています。
しかし、中小企業にも生き残る道はあります。価格戦略の明確化、独自性のある商品開発、販路の拡大、そして固定費の見直し。これらを実行することで、「地域に愛される唯一無二の店」として再生できる可能性は十分にあります。
ハンバーガー業界の倒産動向は、中小飲食業の未来を考えるうえで重要な警鐘です。
本記事を通じて、経営者の皆さまが「値ごろ感と独自性」の両立を再考するきっかけになれば幸いです。