2025年5月の国内景気動向が公表されました。
帝国データバンクのレポートによれば、景気DI(景況感指数)は42.6(前月比-0.1ポイント)と、わずかながら2カ月連続の悪化となり、国内景気は引き続き力強さを欠いていることが浮き彫りとなりました。
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◆ 今月の注目ポイント:景気DIは2カ月連続悪化
5月の景気DIは、4月の42.7から0.1ポイント低下して42.6。
この数字は、企業の経済活動における現状の体感値を示すもので、50を境に「好況」「不況」の分かれ目とされます。
今回の悪化要因として挙げられるのが、以下の3点です。
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米価や燃料価格の上昇 → 個人消費が冷え込む
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トランプ関税への懸念 → 自動車・製造業の受注に影響
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人手不足の長期化と仕入れコスト高止まり
一方、大型連休やインバウンド需要の回復といったプラス材料も見られたものの、全体としての景気の勢いにはつながりませんでした。
◆ 製造業が6カ月連続の悪化、サービス業も5カ月連続で低下
業界別に見ると、10業界中5業界で悪化、4業界で改善、1業界は横ばい。
特に製造業(DI:38.1)は6カ月連続で悪化し、景気全体の足を引っ張っています。
自動車関連では、トランプ関税の行方が不透明で、生産減や新車開発の停滞が続いています。関連する部品メーカーや下請け企業にも影響が波及し、2024年度の自動車部品メーカー倒産数は32件(過去10年で最多)に達しました。
サービス業も(DI:48.2)、飲食や医療福祉分野のコスト増が直撃し、5カ月連続の悪化。反面、リース・賃貸業(+1.1pt)や娯楽サービス(+2.2pt)は好調でした。
◆ 大企業と中小企業の景況格差が拡大
企業規模別では、「大企業:46.8(+0.1pt)」「中小企業:41.9(-0.1pt)」「小規模企業:40.8(-0.2pt)」という結果に。
つまり、大企業のみが改善、中小・小規模は2カ月連続で悪化という構図が明らかになりました。
その差は4.9ポイントに拡大し、規模間の景況格差が顕著になっています。
中小企業では、原材料高と人件費上昇に対する価格転嫁が難しく、消耗戦の様相を呈しています。
◆ 地域別:北海道・九州は好調、北関東・近畿は苦戦
地域別に見ると、北海道・九州など5地域が改善。
特に北海道では半導体工場や工業団地の造成、不動産開発が景気を押し上げました。
一方で、北関東(-1.2pt)・近畿(-0.5pt)など3地域が悪化。北関東では自動車関連の不調が影響し、景気DIが30台に沈んだ地域もあります。
◆ 今後の見通し:「実質賃金の回復」がカギ
2025年後半の見通しとして、以下のポジティブ要素が挙げられます。
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高水準の賃上げ
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インフレ率の落ち着き → 実質賃金の上昇
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大阪・関西万博や減税政策
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インバウンド観光・IT設備投資の回復
ただし、米中経済の減速・為替不安・家計の節約志向などの懸念材料も根強く、楽観は禁物です。
◆ 中小企業が取るべき対策とは?
このような状況下で、中小企業が生き残るために重要な視点は次の通りです。
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コスト構造の見直し
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仕入れ価格の見直し、在庫管理の効率化
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事業の多角化
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地域連携・補助金活用・ITサービス導入
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人材への投資
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教育・OJTによる定着率向上、採用コスト抑制
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また、価格転嫁のタイミングや顧客単価アップの仕掛けといった柔軟な経営判断が求められます。
◆ まとめ:変化に強い経営体質づくりを
2025年5月のデータは、「景気回復にはまだ時間がかかる」ことを物語っています。
しかし同時に、大企業との格差を埋めるヒントも示唆しています。
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トレンドを早期に察知し柔軟に対応する
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現場力と人材力を活かす「選択と集中」
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政策支援・IT投資を武器に変革を加速させる
景気が“弱含み”で推移する今こそ、「変化に耐えうる経営体質」が問われています。
中小企業経営者にとって、2025年の中盤は「次の一手」を打つ絶好のタイミングかもしれません。