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はじめに
2025年、日本の中小企業にとって衝撃的なニュースが発表されました。帝国データバンクの調査によると、休廃業・解散件数が年間7万件超ペースに達し、過去最多を大幅に更新する見通しです。しかも、その中には「黒字でも会社を畳む」ケースが増えているという事実があります。
本記事では、休廃業・解散の最新動向を整理するとともに、中小零細企業が今取るべき対応策を具体例とともに解説します。
2025年 休廃業・解散の最新データ
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2025年1~8月の休廃業・解散件数:47,078件(前年同期比+9.3%)
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年間では7万件超え確実視
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「資産超過型」廃業:64.1%(過去最高)
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「黒字廃業」:49.6%(初の50%割れ、過去最低)
つまり、経営はまだ成立しているにもかかわらず、「余力があるうちに畳む」企業が増加しています。
「黒字廃業」急増の背景
なぜ黒字で余力がある企業が廃業を選ぶのでしょうか。その要因は複合的です。
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支援策終了
コロナ禍での給付金・雇調金などが縮小され、資金繰りが悪化。 -
物価・コスト高騰
電気代、原材料費、人件費の上昇で将来収益の見通しが厳しい。 -
代表者の高齢化と後継者不足
70代経営者は依然多いが、50代・60代でも廃業増加。 -
制度対応の負担
インボイス制度や社会保険関連のコスト増。 -
「円満廃業」支援の広がり
事業再生ガイドラインや経営者保証ガイドラインの改定で、前向きな廃業を後押し。
経営者年齢と廃業動向
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平均年齢:71.65歳
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最多は74歳(前年より1歳低下)
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「70代」割合は39.6%と減少
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「50代・60代」廃業が増加
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「80代以上」も24.7%と増加 → 承継困難による退出
従来の「高齢化による引退」だけでなく、現役世代の経営者も将来を見据え廃業を選んでいることが特徴です。
休廃業が増えることで生じるリスク
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サプライチェーンの崩壊
仕入先や協力業者が突然廃業 → 自社の生産・販売がストップ。 -
連鎖倒産の危険性
依存度の高い取引先が消えることで資金繰り悪化。 -
地域経済の縮小
特に地方では、商圏全体の活力低下に直結。
中小零細企業が今取るべき対応
では、こうした状況下で中小企業はどう動くべきでしょうか。
1. 財務の「見える化」
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キャッシュフロー、借入、固定費を早期に整理
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「続ける」or「畳む」の判断材料を持つ
2. M&A・事業承継の検討
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黒字のうちに会社を売却 → 従業員・取引先を守れる
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第三者承継や共同承継も選択肢に
3. サプライチェーン対策
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主要取引先の後継者問題を把握
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代替取引先をリスト化しリスクヘッジ
4. 事業多角化・DX導入
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既存事業一本足打法からの脱却
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IT導入補助金・省力化投資補助金を活用
5. 廃業シナリオの準備
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無理に続けて資産を失うより、計画的な撤退
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退職金・老後資金の確保を最優先
事例から学ぶ「円満廃業」
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黒字M&A事例:従業員と顧客を守りつつ事業承継に成功
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早期撤退事例:余力があるうちに廃業し、第二の人生へシフト
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共同承継事例:取引先同士で引き継ぎ合い、連鎖廃業を防止
いずれも共通するのは「早めの判断と準備」です。
まとめ
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2025年、休廃業・解散は年間7万件超えペース
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「黒字でも廃業」が常態化
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中小企業は「続けるか」「円満に畳むか」の選択を迫られる時代へ
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重要なのは「決断を先送りしないこと」
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生存戦略と撤退戦略、両方を持つ経営が必要
結論
休廃業の急増は「日本経済の衰退」の象徴ではなく、むしろ「新しい経営の選択肢」の広がりでもあります。無理に会社を存続させて資産を失うより、余力があるうちに廃業やM&Aを活用し、従業員や取引先、そして経営者自身の人生を守る。
これからの中小企業経営者に必要なのは、「事業を続ける力」と「会社を畳む勇気」です。
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