スタートアップ創業者は知っておきたい「J-KISS1.0とJ-KISS2.0の違い」とは?

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はじめに

スタートアップの資金調達において、「J-KISS(Japan Simple Agreement for Future Equity)」は、投資契約の簡素化と効率化を図るために設計されたツールです。特に初期段階の企業にとって、従来の株式発行や融資に比べて柔軟な資金調達方法として注目されています。この記事では、J-KISSの基本概要に触れながら、J-KISS1.0とJ-KISS2.0の違いを整理します。

J-KISSとは?

J-KISSは、主にスタートアップと投資家の間で締結される契約で、将来的に株式に転換できる投資形式です。日本版のSAFEs(Simple Agreement for Future Equity)としても知られており、初期段階のスタートアップにとって、手続きの簡便さと柔軟性が魅力です。J-KISS契約により、スタートアップは資金調達をスムーズに行い、成長に集中することが可能です。

J-KISS1.0の特徴

  • 導入背景: J-KISS1.0は、日本のスタートアップの資金調達を簡素化するために設計されました。2018年に登場し、株式に転換する条件を予め定めて投資家との契約を行う方式です。
  • 株式転換: 一定の条件(主に資金調達額や企業価値)が満たされた場合に、投資額が株式に転換されます。具体的には、次回の資金調達ラウンドや一定の企業価値に達した場合に自動的に株式が発行されます。
  • 優先順位の保証: 清算時の優先権が付与され、出資した投資家が他の株主よりも優先して資金を回収できる仕組みが整っています。

J-KISS2.0の特徴

  • 改善点: J-KISS1.0で生じた課題を踏まえて、J-KISS2.0は、2020年に導入されました。投資家とスタートアップ双方のニーズを反映し、より柔軟で透明性の高い契約内容に進化しています。
  • 投資額の柔軟性: J-KISS2.0では、投資家が資金を投入する際の条件が一層柔軟になり、契約において設定するプレマネーの企業価値に基づいて株式を割り当てます。
  • 株式転換条項の明確化: 2.0では、転換条件がより明確に定義され、株式転換時の合意がスムーズに進むよう改良されています。また、スタートアップが一定の基準に達した場合にのみ株式に転換される方式も取り入れられています。
  • 清算優先順位の強化: 2.0では清算時の優先権において、投資家がさらに優先して資金を回収できる条件が強化されています。

J-KISS1.0と2.0の具体的な違い

  1. 株式転換条件: 1.0では株式転換条件が固定されている一方、2.0は柔軟な条件設定が可能で、投資家とスタートアップの双方のニーズに応じてカスタマイズ可能です。
  2. 優先順位の強化: J-KISS2.0では、清算時や事業売却時における投資家の優先順位がより強化されています。
  3. 透明性の向上: 契約内容がより明確で、双方が契約内容を理解しやすく、誤解が生じにくい仕組みとなっています。

J-KISSのメリット

  • シンプルで手続きが少ない: 契約書が簡素化されているため、短期間で資金調達が可能です。
  • スタートアップに優しい: スタートアップは初期段階の成長に集中でき、資金調達の複雑な手続きを避けられます。
  • 投資家にとっても有利: 企業価値が上昇する前に投資することで、株式転換時の利益が大きくなる可能性があります。

まとめ

J-KISS1.0とJ-KISS2.0は、どちらもスタートアップの資金調達において重要な役割を果たしていますが、2.0ではより柔軟性と透明性が高められており、スタートアップと投資家双方にとってメリットがあります。スタートアップ創業者にとって、どのバージョンのJ-KISSを選択するかは、企業の成長戦略や投資家との関係性に基づいて慎重に検討する必要があります。

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