「うちはOJTで人を育てている」──その言葉が、今や若手離職の温床になっているとしたら、あなたの会社はどう対応しますか?
Z世代と呼ばれる若手社員が次々と辞めていく企業。その多くが口にするのは「現場で学ばせているから大丈夫」というOJT信仰です。しかし実態は、教えられていない、育てられていない、放置されているのが現場のリアルです。
この記事では、OJT偏重型の人材育成の落とし穴と、今企業に求められる「人材定着のための育成改革」について解説します。
Contents
【1】OJTだけでは若手は定着しない
OJT(On-the-Job Training)は、実務を通じて仕事を覚える教育法で、かつては日本企業の育成手法の王道でした。しかし現代では、この「OJTだけ」の体制が若手の成長を阻み、離職につながっています。
Z世代の若手社員はこう語ります。
「『とりあえずやってみて』と言われるけど、やり方が分からない。何も教えてもらえず、間違えると怒られる」
これはもはや育成ではなく“放置”です。
▶ OFF-JTの併用が定着率を高める
中小企業白書2024によると、定着率が50%以上の企業の多くが「OJT+OFF-JT(外部研修など)」を組み合わせていると報告されています。
育成の多様化が進む今、「現場で見て覚える」だけでは通用しません。成長機会を可視化し、段階的にスキルアップできる環境が求められているのです。
【2】上司が部下育成を勘違いする3つの理由
なぜ、多くの上司がOJTだけで十分だと信じているのでしょうか?
① 自分がOJTだけで育った成功体験の呪縛
「自分もOJTだけでやってきたから、今の若手にも通じる」という思い込み。これは育成の現場でよく見られる誤解です。しかし、時代背景も求められるスキルも異なる現在、それは通用しません。
② 「教える力」の欠如
そもそも育成には、以下の3つのスキルが必要です。
-
体系的な理解:業務全体の流れと論理を把握する力
-
言語化能力:自分のスキルを明確に言葉で説明できる力
-
教え方の技術:順序立てて、理解しやすく伝える力
実績のある上司でも、「できるけど教えられない」ことはよくあります。
③ ダメ出しだけのOJTが蔓延
OJTを「その都度のダメ出しや指示」と勘違いしている上司も多く、若手は「何が正解かわからないまま、怒られ続ける」という状況に置かれてしまいます。
【3】人材が定着する会社の育成の仕組み
では、若手が定着する企業はどのような教育をしているのでしょうか?
▶ 教育の“複線化”が当たり前になっている
学校教育でも、今や塾やYouTubeを組み合わせた「複線型学習」が主流です。企業も同じく、次のような複数のチャネルを活用した教育体制が求められます。
-
OJT(現場)
-
OFF-JT(研修・セミナー)
-
オンライン学習(動画・eラーニング)
-
外部コンサルによるトレーナートレーニング
-
キャリアマップによる見える化
これにより、若手は「自分が今どの段階で、次に何を学ぶべきか」を理解でき、モチベーションと定着意欲が高まります。
【4】中小企業経営者が学ぶべき4つの視点
① 「育成=上司の仕事」という幻想を捨てる
人を育てるには時間とスキルが必要です。プレイヤー上司にすべてを任せる体制は限界に来ています。
② 外部リソースを活用することは恥ではない
「研修に頼るのは甘え」という考えは過去の遺物。効率的・体系的な学習環境を整えるのも経営の仕事です。
③ 育成の属人化を防ぐ
誰が教えても一定の水準で育てられるように、「育て方の標準化」が不可欠です。
④ 上司自身も“教え方”を学ぶ
育成に必要なスキルは「後天的に習得するもの」。トレーナー研修の導入で、上司も育成スキルを磨くべきです。
【5】まとめ:若手が辞めるのは“会社が育てられないから”
Z世代の若手は、“成長実感”と“未来の見通し”を重視します。
OJTだけではそれが得られないと気づいたとき、彼らはすぐに職場を去ります。
経営者の皆さん、育成体制を見直す時期です。
「OJTさえやっていればいい」という考えを捨て、複線型・可視化型の育成体制へ移行することが、定着率向上の鍵となるでしょう。
お問い合わせ