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事業承継・M&Aにおける「買取人指定請求」とは?
事業承継やM&Aにおいて、株式譲渡が発生する際、特に株式に譲渡制限がある場合、会社や既存の株主が譲渡先を指定できる「買取人指定請求」という手続きが存在します。この仕組みは、会社や株主が、株式の譲渡先を適切に選定し、外部の予期せぬ株主が会社経営に関与することを防ぐために重要です。
買取人指定請求は、会社が譲渡を拒否する場合に、譲渡先を指定する制度です。これは、譲渡を承認しない場合でも、譲渡者が望む譲渡を妨げるのではなく、適切な株主を指定することを目的としています。譲渡者にとっては、株式を譲渡する自由が保たれる一方、会社側にとっては経営に悪影響を与えない株主を選ぶことができるというバランスを取る手続きです。
株式譲渡制限と買取人指定請求の関係
多くの中小企業や非上場企業は、株式の譲渡に制限を設けています。これは、外部の第三者が自由に株式を取得することを防ぎ、会社の安定経営を図るための措置です。しかし、株主が株式を売却したい場合、譲渡制限が存在する場合でも、その意思が完全に封じられることはありません。このとき、譲渡承認や買取人指定請求が機能します。
買取人指定請求は、会社が株式譲渡を拒否する場合に、代わりに会社や他の株主がその株式を買い取る人を指定できる制度です。この手続きにより、譲渡者は株式の売却を進めることができ、会社側も信頼できる新しい株主を迎えることが可能になります。
事業承継やM&Aにおける買取人指定請求の重要性
事業承継やM&Aの場面では、株式の譲渡が頻繁に発生します。特に、外部からの投資家や新しい株主を迎える際には、株式譲渡制限が大きな課題となります。買取人指定請求を活用することで、事業承継やM&Aをスムーズに進めることができます。
1. 事業承継における買取人指定請求の役割
オーナー企業では、後継者に株式を譲渡する際、譲渡制限が問題になることがあります。特に、親族外の後継者や外部の経営者を迎える場合、会社が譲渡先を指定することで、後継者選びのリスクを軽減することができます。
2. M&Aにおける株式譲渡の調整
M&Aでは、株式譲渡が重要な取引の一部となります。買収側が株式を取得する際、既存株主や会社が株式の譲渡先を指定できるため、M&Aプロセスの途中で不適切な譲渡が発生しないように調整することが可能です。
買取人指定請求の具体的な手続き
買取人指定請求の手続きには、いくつかのステップが含まれます。
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譲渡承認の申請 株主が第三者に株式を譲渡しようとする場合、まず会社に譲渡承認を求める必要があります。会社がこれを承認するかどうかの判断を行います。
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会社による譲渡拒否と買取人の指定 会社が譲渡を拒否した場合、会社は買取人指定請求を行うことができます。このとき、会社は指定された買取人に株式を譲渡することを要求することができ、指定された買取人が株式を買い取るか、譲渡者が第三者に譲渡することが可能です。
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買取価格の決定 買取人指定請求が行われた場合、指定された買取人と譲渡者の間で株式の買取価格が協議されます。この価格は、公正な市場価格を基に決定されることが一般的です。
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株式の譲渡完了 合意に至った場合、指定された買取人が株式を取得し、譲渡が完了します。この手続きは、会社が譲渡の承認を行う代わりに、適切な株主を迎えるためのプロセスとして重要です。
買取人指定請求のメリットとリスク
買取人指定請求には、以下のようなメリットとリスクがあります。
メリット
- 会社の安定性の確保: 不適切な株主が株式を取得することを防ぎ、会社の経営に悪影響を与えない。
- 株主の譲渡自由の確保: 株主は譲渡の自由を持ちながらも、会社が適切な買取人を指定できる。
- 事業承継のスムーズな進行: 買取人指定請求により、後継者問題を解決し、円滑な事業承継が実現する。
リスク
- 価格交渉の難航: 買取価格の設定が難航する場合、譲渡プロセスが長引く可能性がある。
- 株主間のトラブル: 会社が指定する買取人に対して株主が不満を持つ場合、トラブルが発生することがある。
事業承継・M&Aの成功に向けたポイント
買取人指定請求を効果的に活用するためには、以下のポイントを抑えておくことが重要です。
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事前の合意形成 会社と株主、そして取締役会の間で事前に買取人指定に関する方針を定めておくことで、スムーズな手続きを実現できます。
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価格設定の透明性 買取価格が公正に決定されるよう、専門的な評価機関を利用するなどの対策が必要です。特に事業承継やM&Aの場面では、価格設定がスムーズに行われることが、成功への鍵となります。
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株主との協力関係の強化 株主間のトラブルを防ぐために、日頃から株主とのコミュニケーションを深め、譲渡や買取に関する透明なプロセスを築くことが大切です。
まとめ
買取人指定請求は、事業承継やM&Aにおいて非常に有効な手段であり、会社と株主双方の利益を守るために重要な役割を果たします。株式譲渡制限が存在する中小企業においては、株主が譲渡を進めたい場合でも、適切な買取人を指定できることで、円滑な譲渡が実現します。事業承継やM&Aの成功には、譲渡承認や買取人指定請求のプロセスを適切に理解し、透明な手続きを踏むことが欠かせません。