事業承継・M&Aにおける役員選任権付株式の活用とメリット

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事業承継・M&Aにおける「役員選任権付株式」について

事業承継やM&Aの場面では、企業の株主構成や経営権の分配に関する調整が重要なポイントとなります。その中でも、「役員選任権付株式」を活用することによって、経営の安定化や株主間の調整をスムーズに進めることができます。この記事では、役員選任権付株式の定義、活用のメリット、そして事業承継やM&Aにおける実務での使い方について解説します。

役員選任権付株式とは?

「役員選任権付株式」は、特定の株式に役員の選任や解任の権利を与える種類株式の一種です。この株式を保有している株主は、会社の取締役や監査役などの役員の選任に関与する権利を持ちます。通常の株式とは異なり、特定の役員に対する選任・解任権を持たせることが可能です。


役員選任権付株式の活用場面

  1. 事業承継時の活用
    事業承継において、後継者に経営権を引き継ぐ際、従来の株主との間で経営の安定性を保つ必要があります。役員選任権付株式を発行することで、特定の株主が経営に関与し続けることができるため、後継者のサポートや企業の経営方針の一貫性を保つことが可能になります。

  2. M&Aにおける活用
    M&Aの場面では、外部からの出資者や新たなパートナー企業との関係構築が必要です。役員選任権付株式を導入することで、経営の方向性に大きな影響を与える役員の選任を特定の株主に委ねることができ、企業の独自性を守りながら外部との協力体制を構築することができます。


役員選任権付株式のメリット

  1. 経営の安定化
    役員選任権を持つ株主が明確に定められているため、経営陣の選定において予期しない変動が発生しにくく、企業の経営が安定します。これにより、事業承継やM&A後の経営体制が一貫性を持つことが期待されます。

  2. 株主間の調整が容易
    株主が複数存在する場合、各株主の役割や影響力を調整することが重要です。役員選任権付株式を活用することで、特定の株主に経営に対する影響力を持たせつつ、他の株主とのバランスを図ることができ、株主間の摩擦を軽減することが可能です。

  3. 外部投資家の導入
    外部からの資金調達を行う際、外部投資家に対して経営への影響を持たせるために役員選任権付株式を活用することができます。これにより、外部投資家に対する経営関与を認めながらも、既存の株主との間で経営権のバランスを保つことが可能になります。


税務・法務における注意点

役員選任権付株式を導入する際には、税務面や法務面での確認が必要です。特に、役員選任権付株式が税務上どのように取り扱われるかについては、専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。また、会社法に基づいて適切な手続きが行われているかの確認も重要です。


実際の導入事例

  1. 事業承継での事例
    ある家族経営企業では、創業者が子供に経営権を引き継ぐ際に、役員選任権付株式を導入しました。これにより、創業者は引き続き経営に関与しながら、後継者が主導権を持って経営を行う体制を構築し、スムーズな事業承継が実現しました。

  2. M&Aでの事例
    ある企業が外部投資家を導入する際、投資家に役員選任権を付与する種類株式を発行しました。これにより、投資家は経営陣の選任に関与しつつも、企業の日常的な経営には影響を与えない形で協力関係が構築され、経営の独立性が保たれました。


まとめ

役員選任権付株式は、事業承継やM&Aの場面で非常に有効なツールです。経営の安定性を確保し、株主間の調整を図るための手段として、また外部投資家との協力関係を築く際に役立ちます。導入を検討する際には、企業のニーズや株主の意向に基づいて慎重に設計し、専門家のサポートを受けることが推奨されます。

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