事業承継・M&Aにおけるパススルー課税の仕組みとメリット

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事業承継・M&Aにおける「パススルー課税」とは?

パススルー課税は、法人やビジネスの利益がオーナーやパートナーに直接課税される仕組みを指します。通常、企業の収益には法人税が課せられ、その後、株主に配当が分配される際に再度課税される「二重課税」が発生します。しかし、パススルー課税では、企業レベルでの課税を避け、オーナーやパートナーが直接その収益に対して個別の所得税として申告します。


パススルー課税の仕組み

パススルー課税の対象となるのは、主に、LLP(Limited Liability Partnership=有限責任事業組合)であり、LLPの性格は民法上の組合の特例です。これらの事業体は法人税の支払いを免除され、代わりに各オーナーがその利益に応じた所得を申告し、個別に所得税を支払うことになります。企業そのものが法人税を支払わないため、収益に対する「二重課税」を避けられます。

事業承継やM&Aにおけるパススルー課税の利点

事業承継やM&Aの場面において、パススルー課税の仕組みは以下のような利点を提供します。

  • 二重課税の回避: 通常の法人と異なり、パススルー課税では収益がオーナーに直接渡されるため、企業レベルでの法人税を支払う必要がありません。これは、特に小規模事業や家族経営企業において、コストの削減に寄与します。

  • 税制優遇: パススルー課税を選択することで、個々の株主やパートナーが自身の所得税率に基づいて課税されるため、法人税率よりも低い税率で収益を処理できる場合があります。これにより、事業承継やM&A後のキャッシュフローの維持がしやすくなります。

  • 柔軟な財務管理: 企業レベルでの課税がないため、収益の分配や再投資に関して、より柔軟な財務管理が可能です。事業承継やM&A時にキャッシュをどのように分配するかの選択肢が広がります。


パススルー課税の具体例

  1. LLP(Limited Liability Partnership=有限責任事業組合)の例
    LLPは、法人税を支払うのではなく、オーナーがその利益を受け取る形で所得税を納付します。この場合、事業承継が発生した際にも、新しいオーナーが直接その利益に対して課税されるため、会社そのものに法人税が課されることはありません。

  2. パートナーシップの事例
    パートナーシップ企業の場合、各パートナーが事業の利益や損失を個別に申告します。M&Aの際にも、この仕組みが適用され、パートナー間で利益の分配方法を柔軟に調整することができます。


パススルー課税の注意点

パススルー課税には多くのメリットがある一方で、注意すべき点もいくつか存在します。

  • 個人負担の増加: 法人税がかからない分、個々の株主やパートナーが所得税を負担するため、所得が多い場合、結果的に高い税率で課税される可能性があります。

  • 会計上の複雑さ: パススルー課税は、各オーナーの所得税申告が必要であり、事業全体の収益を正確に分配するための会計処理が求められます。特にM&Aの際には、事業価値の評価や利益の分配が複雑になる可能性があります。


まとめ

パススルー課税は、事業承継やM&Aの場面において、法人税の二重課税を避け、柔軟な財務管理を実現できる有効な手段です。特に、家族経営や中小企業の経営者にとっては、税制面でのメリットが大きく、事業の引き継ぎや売却時に有効な選択肢となります。ただし、税務上の複雑さや、所得税負担の増加のリスクもあるため、専門家の助言を受けることが重要です。

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