中小企業の事業承継・M&A解説 「定款の絶対的記載事項」とは?

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はじめに

定款は企業運営における基本的なルールを定めた重要な文書です。特に中小企業が事業承継やM&Aを検討する際には、定款の見直しや変更が不可欠な要素となります。その際、定款の内容を正確に理解しておくことが求められます。定款には、必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」が存在します。本記事では、事業承継やM&Aに焦点を当てながら、定款の絶対的記載事項について解説し、その重要性を考察します。

定款の役割と基本構造

定款は会社法に基づいて定められ、会社の設立時に必ず作成しなければならない文書です。定款には、会社の基本的なルールや方針が記載されており、以下の3つの種類に分類されます:

  1. 絶対的記載事項
    必ず定款に記載しなければならない項目で、これらが記載されていない場合、定款自体が無効となる恐れがあります。

  2. 相対的記載事項
    記載がなくても法律上は問題ありませんが、記載することで効力が発生する項目のことです。

  3. 任意的記載事項
    会社が自由に定めることができる項目で、必ずしも記載する必要はありませんが、記載することで経営方針や事業の運営を明確化することができます。

定款の絶対的記載事項とは?

絶対的記載事項は、会社が設立されるために必ず定款に記載しなければならない項目です。これらの項目が不足している場合、会社の設立手続き自体が無効とされる可能性があり、企業運営に大きな影響を及ぼすことになります。以下は、定款の絶対的記載事項の主要な項目です:

  1. 商号(会社名) 会社の名前は、商号として定款に明記する必要があります。商号は、会社の対外的な認識において重要な役割を果たします。

  2. 目的 会社がどのような事業活動を行うかを明確に記載します。会社の目的は、事業承継やM&Aにおいても重要な判断材料となります。事業の売却や新たな事業の追加を検討する際、この項目を柔軟に変更できるかが、経営戦略に影響を及ぼします。

  3. 本店所在地 会社の本店がどこにあるのかを記載します。この情報は、会社の登記や税務手続きなど、行政手続きにおいて重要です。

  4. 設立に際して発行する株式の総数 会社が発行する株式の総数を定めます。この株式の数は、事業承継やM&A時に株主構成や資本政策を策定する際に必要となる情報です。

  5. 発起人の氏名および住所 会社設立に関与する発起人の情報が必要です。これにより、会社の創業者や出資者が明確化されます。

  6. 公告の方法 会社の法定公告の方法(官報、日刊新聞紙、電子公告など)を定めます。公告方法を定めていない場合、会社は官報により公告する義務があります。

絶対的記載事項の重要性

絶対的記載事項を定款に正しく記載していないと、会社設立の手続き自体が無効となり、法的な問題が生じることがあります。特に中小企業が事業承継やM&Aを進める際、定款の内容が適切であるかどうかを確認することが非常に重要です。たとえば、株式の発行に関する情報や会社の目的が不明確であれば、事業売却や譲渡の交渉が進まない可能性があります。

定款の変更と事業承継

事業承継やM&Aの場面では、定款を見直し、必要に応じて変更することが不可欠です。絶対的記載事項を含む定款の内容が古くなっていたり、現在の事業形態と合致していない場合、定款の変更を検討しなければなりません。以下の手続きが一般的です:

  1. 株主総会の特別決議 定款を変更するためには、株主総会における特別決議が必要です。これには、総株主の議決権の3分の2以上の賛成を得る必要があります。

  2. 登記手続き 定款の変更内容によっては、法務局に変更を登記する必要があります。登記が完了しなければ、変更の効力は生じません。

  3. 専門家のサポート 定款の変更や見直しは、法律や税務に関する専門知識が必要です。事業承継やM&Aを成功させるためには、弁護士や税理士などの専門家に依頼することが推奨されます。

まとめ

定款の絶対的記載事項は、会社設立の基礎となる重要な要素です。特に中小企業が事業承継やM&Aを検討する際、定款の内容が最新であり、現在の事業活動と一致していることを確認する必要があります。定款の見直しや変更を通じて、会社の経営基盤を強化し、円滑な事業承継やM&Aを実現することが可能です。

適切な定款を整備し、専門家のアドバイスを受けながら進めることで、将来的なトラブルを未然に防ぎ、持続的な成長と発展を目指しましょう。

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