フリーキャッシュフロー(FCF)の算出方法にはいくつかのパターンがあります。一般的な計算式をベースに、さまざまな状況に応じたパターンを紹介します。
フリーキャッシュフローがそもそもどのようなものか?については、「ファイナンスの基本「FCF(フリーキャッシュフロー)」とは?概要・ポイントまとめ」をご覧ください。
この記事の要点
- 最も基本的なFCFの計算式は「営業キャッシュフロー − 設備投資額」です。
- FCFは、営業キャッシュフローのほか、純利益・EBITDA・NOPAT(税引き後営業利益)を起点にしても計算できます。
- 純利益・NOPATを起点にする場合は、減価償却費を足し戻し、設備投資と運転資本の増減を差し引きます。
- 株主に帰属するキャッシュフロー(FCFE)は、FCFから借入金返済を差し引き、新規の借入金調達額を加算して求めます。
- 計算パターンごとに起点や支払利息の扱いが異なるため、目的に応じて計算式を選び、比較するときは同じ計算式で揃えることが大切です。
フリーキャッシュフロー(FCF)の代表的な5つの計算パターン
FCFの代表的な計算パターンは、営業キャッシュフロー・純利益・EBITDA・NOPATを起点にする4つと、株主に帰属するFCFEを求める1つの、計5つです。
1. 営業キャッシュフローを基にしたパターン
営業キャッシュフローを基にしたFCFは「営業キャッシュフロー − 設備投資額」で求めます。キャッシュフロー計算書の数値だけで計算できる、最も基本的な計算式です。
FCF = 営業キャッシュフロー - 設備投資額
営業キャッシュフローを基にしたパターンは、最も基本的なパターンです。営業キャッシュフローから設備投資に使用したキャッシュを差し引くことで、手元に残るキャッシュを算出します。
例
- 営業キャッシュフロー:500,000円
- 設備投資:200,000円
- FCF = 500,000円 - 200,000円 = 300,000円
2. 純利益を基にしたパターン
純利益を基にしたFCFは「純利益 + 減価償却費 − 設備投資 − 運転資本の増減」で求めます。運転資本が増加した場合はその分を差し引き、減少した場合は加算します。
FCF = 純利益 + 減価償却費 - 設備投資 - 運転資本の増減
企業の純利益から、減価償却など非現金支出を加算し、設備投資と運転資本の増減を差し引くパターンです。
例
- 純利益:1,000,000円
- 減価償却費:300,000円
- 設備投資:400,000円
- 運転資本の増加:100,000円
- FCF = 1,000,000円 + 300,000円 - 400,000円 - 100,000円 = 800,000円
3. EBITDAを基にしたパターン
EBITDAを基にしたFCFは「EBITDA − 税金 − 設備投資 − 運転資本の増減」で求めます。減価償却費を差し引く前の利益が起点のため、減価償却費の足し戻しは不要です。
FCF = EBITDA - 税金 - 設備投資 - 運転資本の増減
EBITDA(利払い・税引前・減価償却前の利益)を基に、税金や設備投資、運転資本の変動を加味したパターンです。
例
- EBITDA:2,000,000円
- 税金:300,000円
- 設備投資:600,000円
- 運転資本の増加:200,000円
- FCF = 2,000,000円 - 300,000円 - 600,000円 - 200,000円 = 900,000円
4. フリーキャッシュフロー to エクイティ(FCFE)
株主に帰属するキャッシュフロー(FCFE)は「FCF − 借入金返済 + 借入金調達額」で求めます。借入金の返済は株主の取り分を減らし、新規の借入は増やします。
FCFE = FCF - 借入金返済 + 借入金調達額
株主に帰属するキャッシュフローを算出する場合、FCFから借入金返済を差し引き、新たな借入金調達があれば借入金調達額を加算します。
例
- FCF:700,000円
- 借入金返済:200,000円
- 新規借入金:100,000円
- FCFE = 700,000円 - 200,000円 + 100,000円 = 600,000円
5. 税引き後営業利益(NOPAT)を基にしたパターン
NOPATを基にしたFCFは「NOPAT + 減価償却費 − 設備投資 − 運転資本の増減」で求めます。支払利息を差し引く前の本業の利益が起点になる点が、純利益を基にしたパターンとの違いです。
FCF = NOPAT + 減価償却費 - 設備投資 - 運転資本の増減
税引き後営業利益(NOPAT:Net Operating Profit After Tax)を基にしたパターンです。NOPATは、純粋に営業活動から得た利益に基づき、減価償却費や設備投資などを加減して算出します。
例
- NOPAT:1,500,000円
- 減価償却費:250,000円
- 設備投資:400,000円
- 運転資本の増加:150,000円
- FCF = 1,500,000円 + 250,000円 - 400,000円 - 150,000円 = 1,200,000円
● 5つの計算パターンの比較
5つの計算パターンは、計算の起点となる数値が異なります。下の表の計算例は、パターンごとに別々の説明用の数値を使っているため、結果同士を比較するものではありません。
| パターン | 計算式 | 計算の起点 | 計算例の結果 |
|---|---|---|---|
| 1. 営業キャッシュフロー | 営業キャッシュフロー − 設備投資額 | キャッシュフロー計算書 | 300,000円 |
| 2. 純利益 | 純利益 + 減価償却費 − 設備投資 − 運転資本の増減 | 損益計算書(支払利息控除後) | 800,000円 |
| 3. EBITDA | EBITDA − 税金 − 設備投資 − 運転資本の増減 | 利払い・税引前・減価償却前の利益 | 900,000円 |
| 4. FCFE | FCF − 借入金返済 + 借入金調達額 | FCF(株主に帰属する分を算出) | 600,000円 |
| 5. NOPAT | NOPAT + 減価償却費 − 設備投資 − 運転資本の増減 | 税引き後営業利益(支払利息控除前) | 1,200,000円 |
● FCFEを計算するときの注意点(支払利息の扱い)
FCFからFCFEを求めるとき、起点のFCFが支払利息を差し引く前の金額(NOPATやEBITDAが起点)であれば、税引き後の支払利息も差し引く必要があります。
- 純利益を基にしたFCF:純利益は支払利息を差し引いた後の利益のため、借入金の返済額と調達額を加減すればFCFEになります。
- NOPAT・EBITDAを基にしたFCF:支払利息を差し引く前の金額のため、FCFEを求めるときは「支払利息 ×(1 − 税率)」も差し引きます(Corporate Finance Institute)。
まとめ|FCFは目的に応じて計算パターンを選ぶ
FCFの基本は「営業キャッシュフロー − 設備投資額」です。純利益・EBITDA・NOPATを起点にする方法や株主向けのFCFEもあり、目的に応じて使い分けます。
以上の5つのパターンのように、フリーキャッシュフローの算出にはさまざまなアプローチがあります。状況や目的に応じて、適切な方法を選ぶことが大切です。
よくある質問(FAQ)
フリーキャッシュフロー(FCF)の計算について、よくある質問に結論から回答します。
Q. フリーキャッシュフロー(FCF)の最も基本的な計算式は何ですか?
FCFの最も基本的な計算式は「営業キャッシュフロー − 設備投資額」です。たとえば営業キャッシュフローが500,000円、設備投資が200,000円なら、FCFは300,000円です。
Q. 純利益からFCFを計算するにはどうすればよいですか?
「純利益 + 減価償却費 − 設備投資 − 運転資本の増減」で計算します。減価償却費は現金支出を伴わない費用のため足し戻し、運転資本が増加した分は差し引きます。
Q. FCFとFCFEの違いは何ですか?
FCFEは株主に帰属するキャッシュフローで、FCFから借入金返済を差し引き、新規の借入金調達額を加算して求めます。FCFが支払利息控除前の金額なら、税引き後の支払利息も差し引きます。
Q. NOPATを基にしたFCFと純利益を基にしたFCFは何が違いますか?
NOPATは支払利息を差し引く前の本業の税引き後利益、純利益は支払利息を差し引いた後の利益です。そのため、同じ会社でも起点によってFCFの金額が変わります。
Q. FCFの計算パターンはどう使い分ければよいですか?
手元に残る現金を手早く把握するなら営業キャッシュフローを基にした計算式、株主の取り分を見るならFCFEを使います。期間や他社と比較するときは、同じ計算式で揃えることが大切です。
出典・参考
- Corporate Finance Institute「How to Calculate FCFE from Net Income」(FCFEとFCFFの関係、支払利息の扱い)
- 株式会社RAD「ファイナンスの基本「FCF(フリーキャッシュフロー)」とは?概要・ポイントまとめ」
- ※本文中の計算例の金額は、計算方法を説明するための数値例です。
