企業価値担保権とは?中小企業経営者が知るべき新しい融資制度を徹底解説【2026年施行】

更新日:

2026年5月。

中小企業の資金調達の考え方を大きく変える可能性がある新しい制度、「企業価値担保権」がいよいよ施行されます。

現時点ではまだ耳慣れない制度ですが、今後数年で金融機関との融資のあり方を大きく変える可能性があります。

私はこれまで約8年間、補助金申請や経営改善計画策定、金融機関との交渉支援など数多くの中小企業を支援してきました。

その中で感じるのは、

「良い会社なのに融資が受けられない」

という企業が非常に多いことです。

例えば、

  • 技術力はある
  • リピーターも多い
  • 利益も出始めている
  • 将来性もある

それにもかかわらず、

「担保になる不動産がない」
「社長が保証人になれない」

という理由だけで融資が難しくなるケースは珍しくありません。

こうした課題を改善するために誕生したのが企業価値担保権です。

金融庁は、この制度の目的を「不動産担保や経営者保証によらず、事業の将来性に基づく融資を後押しすること」としています。

つまり、

会社そのものの価値

を担保として評価する時代が始まろうとしているのです。

本記事では、

  • 企業価値担保権とは何か
  • なぜ導入されるのか
  • どんな会社が対象になるのか
  • 中小企業経営者は何を準備すべきか

まで、できるだけ分かりやすく解説します。


Contents

第1章 なぜ企業価値担保権が必要なのか?

今までの融資は「過去」を見るものだった

現在の銀行融資では、

主に評価されるのは

  • 不動産
  • 工場
  • 機械設備
  • 預金
  • 決算書

などです。

つまり、

目に見える資産

が重視されてきました。

もちろん財務内容は重要です。

しかし現在では、

企業価値を生み出す源泉は大きく変わっています。

例えば

  • ブランド
  • 技術力
  • ノウハウ
  • 人材
  • 顧客基盤
  • サブスク契約
  • 独自システム
  • AI活用ノウハウ

などです。

こうした無形資産は会社の価値そのものですが、

従来の担保制度では評価しづらいという課題がありました。金融庁の研究会でも、現代ではノウハウや顧客基盤など無形資産の重要性が高まり、有形資産の価値と事業全体の価値が乖離していることが制度見直しの背景として整理されています。


スタートアップだけの話ではない

企業価値担保権というと、

スタートアップ向け制度と思われがちです。

確かに、

AI企業やIT企業には追い風になります。

しかし、

金融庁が例として示しているのは、

老舗料亭や地域企業も含まれています。

例えば、

長年営業している老舗旅館。

建物の価値は低くても、

  • 地域ブランド
  • 常連客
  • 高い評価
  • 接客品質

これらは会社にとって大きな資産です。

こうした価値まで評価して融資を考えようというのが、

企業価値担保権なのです。制度概要では、技術力を持つスタートアップだけでなく、長年営業を続ける料亭についても、ブランドや顧客基盤、事業計画を評価した融資の例が示されています。


中小企業にも大きなメリット

日本の中小企業は、

不動産を保有していない企業も多くあります。

また、

創業したばかりで

資産が少ない企業もあります。

そうした企業は、

「借りたいけど借りられない」

という状況になりがちでした。

企業価値担保権では、

会社全体を評価対象とするため、

従来よりも資金調達の可能性が広がることが期待されています。制度の目的は、事業の将来性に着目した融資を後押しし、有形資産に乏しい企業や経営者保証により積極投資をためらう事業者の資金調達を円滑化することです。


第2章 企業価値担保権とは?

会社全体を担保にする新しい考え方

従来の担保は、

土地や建物など、

一つひとつの資産を担保にしました。

企業価値担保権では、

会社全体が担保対象になります。

つまり、

  • 商品
  • 在庫
  • 売掛金
  • ブランド
  • 顧客基盤
  • ノウハウ
  • ソフトウェア
  • 知的財産
  • 将来生み出される価値

まで含めた、

事業全体

を評価する制度です。

法律上も、担保目的財産は「会社の総財産」とされ、企業価値担保権は商業登記簿に登記される仕組みとなっています。


「会社を丸ごと評価する」という発想

ここが最も重要です。

銀行は

「この土地はいくら」

ではなく、

「この会社は10年後も成長できるか」

を見るようになります。

つまり、

評価対象は

会社の未来

です。

そのため、

金融機関にも

事業内容を理解する努力が求められます。

制度の基本的な考え方では、金融機関は融資時だけでなく継続的なコミュニケーションを通じて事業計画や将来性を理解し、必要に応じて経営改善や事業再生も支援することが期待されています。


銀行にも変化が求められる

これは、

銀行側にも大きな変化です。

今までは

担保評価中心でした。

これからは

  • 社長の考え
  • 市場
  • 技術
  • 人材
  • ビジネスモデル
  • 成長戦略

まで理解しなければ

融資できません。

金融庁も、

金融機関と企業との

「継続的なコミュニケーション」

を制度の中核に位置付けています。事業計画を起点にした対話を継続し、計画との差異を早期に把握して経営改善につなげることが、事業性融資の重要な考え方として示されています。


私がこの制度で最も注目している点

私は、この制度の本質は「担保制度」ではないと考えています。

本当に変わるのは、

銀行と企業の関係性です。

これまでの融資は、「お金を貸す・返す」という取引が中心でした。

一方、企業価値担保権が想定しているのは、金融機関が事業内容を理解し、定期的に対話を重ね、経営改善や成長まで伴走する関係です。金融庁の基本的な考え方でも、継続的なコミュニケーションと信頼関係の構築が事業性融資の前提であり、企業価値担保権はその有力な選択肢の一つと位置付けられています。

これは、単なる融資制度の変更ではありません。

中小企業と金融機関の付き合い方そのものを変える、大きな転換点になる可能性があります。

第3章 企業価値担保権と従来の融資制度は何が違うのか?

企業価値担保権は「担保が変わる制度」と紹介されることが多いのですが、それだけでは制度の本質は理解できません。

実際には、

金融機関の審査方法そのものが変わる制度

と言った方が正確でしょう。

従来の融資と比較すると、その違いは次のようになります。

項目 従来の融資 企業価値担保権
担保 土地・建物・設備 会社全体
評価対象 過去の決算・資産 将来の成長可能性
重視するもの 財務内容 事業内容・経営力
個人保証 必要な場合が多い 依存しない方向
銀行との関係 融資先 伴走支援パートナー
モニタリング 年1回程度 継続的な対話
資金調達 過去の実績重視 将来のキャッシュフロー重視

金融庁も制度概要で、「財務情報(過去)」だけではなく、「技術・ノウハウ・事業計画などの定性・将来情報」を含めて評価することを明確に示しています。


最大の違いは「過去」ではなく「未来」を見ること

今まで銀行は、

「この会社は返済できるか」

を確認していました。

これからは

「この会社は成長できるか」

まで見ます。

つまり、

返済能力だけではなく

企業価値を生み出す力

が評価対象になります。

だからこそ、

事業計画書の重要性は今まで以上に高くなります。

金融庁も、事業計画は形式よりも、「何を実行し、それがどのように成果につながるのか」を金融機関と共有できることが重要だとしています。


第4章 企業価値担保権のメリットとは?

この制度には、多くのメリットがあります。

しかし、

単純に

「借りやすくなる制度」

ではありません。

会社によって恩恵は大きく異なります。

ここでは代表的なメリットを紹介します。


メリット① 不動産がなくても評価される

最も大きなメリットです。

例えば、

IT企業

AI企業

コンサル会社

人材会社

デザイン会社

士業

などは、

大きな不動産を持っていないケースが多くあります。

しかし、

実際には高い利益を出している会社も少なくありません。

企業価値担保権では、

そうした会社でも

事業そのものを評価して融資できる可能性があります。


メリット② 経営者保証への依存を減らせる

日本では

「社長が保証人」

というケースが非常に多くあります。

このため

会社が失敗すると

社長個人まで大きなダメージを受けます。

その結果、

新しい挑戦をためらう経営者も少なくありません。

企業価値担保権は、不動産担保や経営者保証に過度に依存しない融資を推進する制度として創設されました。


メリット③ スタートアップの資金調達がしやすくなる

創業間もない会社には

利益も資産もありません。

しかし、

優れた技術を持つ企業は多くあります。

金融庁でも、

企業価値担保権の代表例として

スタートアップを挙げています。

VCとの協調融資や、新株予約権付き融資なども想定されています。


メリット④ 株式の希薄化を防げる

成長企業は、

資金調達のために

第三者割当増資を行うことがあります。

しかし、

増資を繰り返すと

創業者の持株比率が低下します。

企業価値担保権による融資という選択肢が増えることで、

必要以上の株式発行を避けられる可能性があります。

これはスタートアップだけでなく、

オーナー企業にとっても大きなメリットです。


メリット⑤ 銀行から経営支援を受けやすくなる

私が最も期待しているのは、

ここです。

企業価値担保権では

金融機関は

融資したら終わりではありません。

会社の成長を継続して確認します。

つまり、

金融機関が

経営相談相手になる可能性があります。

制度の基本的な考え方でも、事業計画との乖離を早期に把握し、延滞など深刻な事態になる前に経営改善策を事業者と協議することが重要とされています。


第5章 企業価値担保権のデメリット・注意点

ここは非常に重要です。

企業価値担保権は

メリットばかりが紹介されがちですが、

実際には経営者が理解しておくべき注意点も数多くあります。


注意点① 事業計画が極めて重要になる

今後は、

「決算書だけ」

では融資は難しくなります。

むしろ、

銀行は

事業計画を見ます。

例えば

・市場はどう変わるか

・競合との差別化

・利益率

・人材確保

・DX

・設備投資

などを

説明できる必要があります。

金融庁も、事業計画を通じて「どのような行動を取り、それが事業見通しの達成にどう寄与するのか」を共有することが重要としています。


注意点② 情報開示が増える

企業価値担保権は

信頼が前提です。

そのため

金融機関へ

定期的に

  • 月次資料
  • 業績
  • 進捗
  • 財務状況

などを共有する場面が増える可能性があります。

これは負担ではありますが、

逆に言えば

経営を見える化する良い機会でもあります。


注意点③ 重要資産の売却には事前協議が必要になる

例えば

会社を大きく変えるような

  • 事業譲渡
  • 重要資産の売却

などは、

金融機関との事前コミュニケーションや同意が必要となる場合があります。制度概要でも、通常の事業活動の範囲を超える財産処分については、企業価値担保権者との事前コミュニケーション・同意が必要とされています。


注意点④ 商業登記される

企業価値担保権は

商業登記簿に登記されます。

そのため、

金融機関だけでなく

第三者も

担保権の存在を確認できます。

これをマイナスと捉える必要はありません。

むしろ、

金融機関が将来性を評価した会社

という見方をされるケースも考えられます。


注意点⑤ 「誰でも借りられる制度」ではない

ここは誤解されやすいポイントです。

企業価値担保権は

魔法の制度ではありません。

当然、

銀行は

将来性を評価します。

つまり、

事業計画に説得力がなければ

従来と同じように融資は難しくなります。

制度が変わっても、

「信頼される会社」であることが前提です。


私の考え

私は、この制度によって最も変わるのは、

**「会社の説明力」**だと考えています。

これまでは、

「決算書が良ければ融資」

という側面が強くありました。

これからは、

経営者自身が

「自社の強み」

「市場」

「競争優位性」

「5年後の姿」

を言語化できる会社ほど評価されやすくなるでしょう。

これは、補助金申請や経営改善計画の支援で私が長年感じてきたこととも一致しています。

数字だけではなく、

未来を語れる会社が、資金調達でも選ばれる時代に入っていくのです。

第6章 コベナンツとは?「抵触=融資回収」は誤解です

企業価値担保権について調べると、必ず出てくる言葉があります。

それが、

コベナンツ(Covenants)

です。

この言葉だけで

「銀行に縛られる」

「違反したら会社が終わる」

と不安になる経営者も少なくありません。

しかし、その認識は正確ではありません。

むしろ金融庁は、

コベナンツを経営改善のためのツール

として位置付けています。


コベナンツとは何か?

簡単に言えば、

銀行と会社が事前に約束しておくルール

です。

例えば、

・毎月試算表を提出する

・重要な設備を売却するときは相談する

・大きな借入をするときは事前協議する

・一定以上の利益を維持する

などです。

つまり、

銀行が会社を縛るためではなく、

互いに情報共有するためのルール

なのです。

金融庁は、コベナンツの役割を「融資後も事業計画の実現に向けた関係を継続するための仕組み」と説明しています。


コベナンツには2つの役割がある

金融庁では、

コベナンツには

2つの大きな役割があるとしています。


①マイルストーン機能

これは

事業計画の進捗確認です。

例えば

今年

売上3億円

営業利益3,000万円

設備投資1億円

という計画なら、

その進捗を確認していきます。

つまり

銀行も

「計画どおり進んでいますね」

「ここは遅れていますね」

という会話ができるようになります。


②予防的アラート機能

こちらの方が重要です。

例えば

利益率が急激に悪化した。

受注が減ってきた。

社員が大量退職した。

こうした兆候が見えた段階で、

銀行と一緒に

改善策を考えます。

つまり

病気で例えるなら

健康診断

なのです。

金融庁も、コベナンツの機能として「①マイルストーン機能」と「②予防的なアラート機能」を明示し、業況悪化の兆候を早期に捉えて対話を始めるための仕組みとしています。


「コベナンツ違反=即回収」ではない

これが一番誤解されています。

映画などでは

銀行が

「契約違反です」

「今日から融資回収します」

という場面があります。

しかし

企業価値担保権では

金融庁は

コベナンツ抵触≠即デフォルト

という考え方を明確にしています。

つまり

抵触したら

まず

話し合い。

改善策を考える。

条件変更を検討する。

それでも難しければ

事業再生。

という流れになります。

金融庁の解説では、軽微な違反であれば権利放棄(Waiver)、改善が必要なら条件変更(Amendment)、さらに深刻な場合には再建協議や事業再生という段階的な対応が想定されています。


コベナンツは会社を守る仕組みでもある

私は、

この制度で最も評価しているのは

ここです。

多くの中小企業は

調子が悪くなっても

銀行へ相談しません。

すると

半年後

一年後

資金繰りが悪化し、

初めて銀行へ行く。

しかし、

その時には

選択肢が少なくなっています。

コベナンツがあれば

もっと早い段階で

相談できます。

これは

会社を守る制度とも言えるでしょう。


第7章 金融機関との関係は「審査」から「伴走」へ

企業価値担保権では

銀行の役割も大きく変わります。


従来の銀行

従来は

融資実行

年1回決算確認

返済

という流れでした。


新しい銀行

これからは

事業計画

定期面談

経営相談

改善支援

資金調達

成長支援

という

伴走型になります。

金融庁は、融資後も継続的なコミュニケーションを通じて事業計画との乖離を把握し、必要に応じて事業計画の見直しや経営改善につなげることを重視しています。


銀行も変わらなければならない

これは

銀行にも大きな宿題です。

今までは

財務分析中心でした。

これからは

・業界分析

・市場分析

・DX

・AI

・人材

・マーケティング

まで理解する必要があります。

つまり

金融機関自身も

コンサルティング能力が求められる時代になります。

金融庁も、融資担当者には企業財務だけでなく事業を深く理解し、借り手にとって「信頼できる財務アドバイザー」となることが期待されるとしています。


伴走支援とは何をするのか?

伴走支援という言葉は

よく使われますが、

実際には

・資金繰り相談

・設備投資

・事業承継

・M&A

・販路開拓

・DX

・人材

など

幅広くなります。

つまり

銀行が

会社を理解するほど

支援の幅も広がるということです。


第8章 企業価値担保権が向いている会社・向いていない会社

では

実際に

どんな会社が

この制度を活用しやすいのでしょうか。


向いている会社① 技術力がある会社

例えば

製造業。

設備よりも

技術者が財産。

こうした会社は

評価されやすくなります。


向いている会社② ブランド力がある会社

例えば

老舗旅館

人気飲食店

地域ブランド

これらは

無形資産です。

制度概要でも、老舗料亭のブランド力や顧客基盤を評価した融資のイメージが紹介されています。


向いている会社③ IT企業

AI

SaaS

ソフトウェア

これらは

土地がなくても

高い企業価値があります。


向いている会社④ 事業承継を予定している会社

今後

後継者へ

会社を引き継ぐ企業も増えます。

企業価値担保権は

事業承継でも

活用が期待されています。制度の主な活用例として、事業承継・事業再生やM&Aも挙げられています。


向いている会社⑤ 第二創業を目指す会社

既存事業を活かしながら

新規事業へ挑戦する。

こうした会社も

将来性を説明できれば

評価されやすくなるでしょう。


一方で向いていない会社もある

例えば

・数字を管理していない

・試算表が毎月出ない

・事業計画がない

・社長しか会社を説明できない

・情報開示をしたくない

・場当たり経営

こうした会社は

企業価値を評価してもらう以前の課題があります。

制度は万能ではありません。

むしろ、

経営の透明性が高い会社ほど恩恵を受けやすい制度だと言えるでしょう。


私が経営者の皆さんに伝えたいこと

私は、この制度は「借りやすくなる制度」とだけ捉えるのはもったいないと思います。

本質は、

会社の経営品質そのものを高める制度です。

これから金融機関は、

決算書だけではなく、

「この会社にはどんな強みがあるのか」

「なぜ顧客から選ばれているのか」

「5年後、10年後にどんな企業になろうとしているのか」

を知ろうとします。

つまり、

経営者自身が自社の未来を言語化し、数字とストーリーの両方で説明できることが、これまで以上に重要になります。

これは補助金申請や経営改善計画でも同じですが、「良い会社」であるだけでは評価されません。「良さを伝えられる会社」が評価される時代へと移り変わっていくのです。

第9章 企業価値担保権を活用するために、経営者が今から準備すべき10のポイント

企業価値担保権は、「誰でも借りやすくなる制度」ではありません。

むしろ、

「企業価値を説明できる会社」が評価される制度

です。

では、そのために何を準備すればよいのでしょうか。


① 会社の存在意義(MVV・パーパス)を言語化する

金融機関が見ようとしているのは、

単なる利益ではありません。

  • なぜ存在する会社なのか
  • 誰の課題を解決しているのか
  • 将来どんな会社を目指しているのか

ここが説明できる会社ほど評価されます。

近年、企業価値は「数字」だけでなく、「理念」や「方向性」も重要な評価要素となっています。


② 事業計画を毎年作る

企業価値担保権では、

事業計画は提出資料ではありません。

金融機関との共通言語になります。

重要なのは

  • 売上計画
  • 利益計画
  • 投資計画
  • 採用計画
  • 借入計画

これらが一貫していることです。

金融庁も、形式的な計画書ではなく、事業者と金融機関が将来の行動や達成プロセスを共有できることを重視しています。


③ 月次決算を早く出せるようにする

年に一度の決算では遅すぎます。

銀行が見たいのは

「今」

です。

できれば

翌月10日頃までに

試算表が完成する会社を目指したいところです。


④ KPIを設定する

売上だけではなく

例えば

製造業なら

  • 稼働率
  • 歩留まり

建設業なら

  • 粗利率
  • 工期

飲食なら

  • 客単価
  • リピート率

など。

自社独自の指標を持つことが重要です。


⑤ 自社の強みを見える化する

「うちは技術があります」

では伝わりません。

例えば

✔特許

✔資格保有者

✔リピート率

✔紹介率

✔顧客継続率

✔市場シェア

など、

数字で示せるようにしましょう。


⑥ 顧客基盤を整理する

顧客数

契約期間

リピート率

解約率

紹介率

これらは

企業価値を説明する重要な材料になります。


⑦ 人材への投資を強化する

企業価値担保権では

「人」

も企業価値になります。

採用

教育

資格取得

評価制度

こうした取り組みは

企業価値そのものになります。


⑧ DXを進める

業務改善

AI活用

クラウド化

これらは

将来性を高める材料になります。

特に近年は

DXの有無が

金融機関からも評価されるケースが増えています。


⑨ 金融機関と日頃から対話する

融資が必要になってから銀行へ行く。

これは最も避けたい行動です。

本制度では

平時からのコミュニケーションが重要になります。

金融庁も、継続的な対話によって信頼関係を構築し、経営悪化の兆候を早期に把握することが制度の前提であるとしています。


⑩ 自社の企業価値を第三者目線で整理する

最後に重要なのは

社長だけが会社を理解している状態を卒業することです。

第三者が見ても

「強い会社」

と思えるように

企業価値を整理しておきましょう。


第10章 よくある質問(FAQ)

Q1. 不動産担保は完全になくなるのでしょうか?

いいえ。

企業価値担保権は新しい選択肢です。

従来の担保制度がなくなるわけではありません。

企業の状況に応じて使い分けられることが想定されています。


Q2. 中小企業でも利用できますか?

もちろんです。

むしろ

地域の中小企業が主要な対象です。

制度概要でも、地域の中小・中堅企業の設備投資や事業の継続・成長を支える資金調達が主な活用例として示されています。


Q3. 赤字企業でも利用できますか?

可能性はあります。

ただし

赤字であっても

将来の改善計画に説得力があることが重要になります。


Q4. コベナンツに違反するとすぐ融資回収されますか?

いいえ。

金融庁は

「対話の開始」

としています。

まずは改善策を一緒に考えることが基本です。


Q5. どんな会社が評価されますか?

例えば

・技術力

・ブランド

・顧客基盤

・継続収益

・DX

・人材

など

将来価値を説明できる会社です。


まとめ 企業価値担保権は「融資制度」ではなく「経営改革」の制度

ここまで解説してきたように、企業価値担保権は単なる新しい担保制度ではありません。

金融庁が目指しているのは、

**「資産ではなく、事業の将来性で評価する金融への転換」**です。

つまり、

評価される会社も変わります。

これからは、

  • 土地を持っている会社

ではなく、

  • 成長戦略がある会社
  • 顧客から選ばれる会社
  • 強みを数字で説明できる会社
  • 金融機関と信頼関係を築ける会社

が評価される時代になります。

金融機関との関係も、「融資を受ける相手」から「事業の成長を支えるパートナー」へと変わっていくでしょう。


私の考え 〜「融資される会社」から「選ばれる会社」へ〜

私は約8年間、補助金申請や事業計画策定、経営改善支援を通じて、多くの中小企業と金融機関の橋渡しをしてきました。

その経験から感じるのは、融資を受けやすい会社には共通点があるということです。

それは、決して売上規模や利益率だけではありません。

**「自社の未来を語れる会社」**であることです。

  • なぜ自社が存在するのか。
  • なぜ顧客に選ばれているのか。
  • 5年後、10年後にどんな企業になりたいのか。
  • そのために、どのような投資を行い、どのような価値を生み出していくのか。

こうしたストーリーを、数字と根拠を交えて説明できる会社は、金融機関からの信頼も得やすくなります。

企業価値担保権は、そのような会社を後押しする制度です。

一方で、この制度は「説明できない会社」にとっては厳しい制度でもあります。

だからこそ今、経営者に求められるのは、決算書を整えることだけではなく、自社の企業価値を言語化し、見える化することです。

2026年5月に始まったこの制度は、日本の融資文化を変える第一歩です。

そして、その変化は金融機関だけではなく、中小企業の経営そのものを変えていく可能性を秘めています。

Copyright© 株式会社RAD , 2026 All Rights Reserved.