【格付けを知ろう】旧金融検査マニュアルとは?債務者区分とは?

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はじめに

旧金融検査マニュアルは、金融機関が保有する資産(特に貸出債権)の健全性を評価するためのガイドラインです。金融機関はこのマニュアルに基づき、債務者の財務状況や返済能力を評価し、貸出債権をいくつかのカテゴリに分類します。これらの分類は、金融機関がリスクを管理し、適切な引当金を積み立てるための重要なプロセスです。

債務者区分とは

債務者区分とは、債務者の財務状況、資金繰り、収益力などを基にして、その返済能力を評価し、債務者をいくつかのカテゴリに分類することを指します。この区分は、金融機関が貸出債権のリスクを適切に管理するための基礎となるものです。

債務者区分には以下のような主要なカテゴリがあります:

  1. 正常先: 業況が良好で、財務内容にも特段の問題がなく、返済能力に問題がないと判断される債務者。
  2. 要注意先: 金利減免や元本返済の延滞が見られるなど、財務状況に不安があり、管理上注意が必要な債務者。
  3. 破綻懸念先: 経営破綻に陥る可能性が高いものの、まだ実際には破綻していない債務者。
  4. 実質破綻先: 法的・形式的には破綻していないが、深刻な経営難で再建の見込みがない債務者。
  5. 破綻先: 破産、清算、会社更生などの法的手続きに入った債務者。

自己査定と分類区分

自己査定とは、金融機関が自らの資産の健全性を評価するプロセスを指します。旧金融検査マニュアルでは、債務者区分に基づき資産を「正常先」「要注意先」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」の5つに分類し、それぞれに応じた引当金を設定することが求められています。

これらの分類は、貸出債権の回収可能性や価値の毀損リスクに応じて行われ、具体的には以下のように分類されます:

  • Ⅰ分類: 回収の危険性が低く、価値の毀損のリスクがない資産。
  • Ⅱ分類: 通常のリスクを超える回収の危険性がある資産。
  • Ⅲ分類: 回収に重大な懸念があり、損失の可能性が高い資産。
  • Ⅳ分類: 回収不可能または無価値と判断される資産。

債務者区分の詳細

  1. 正常先

    • 業況が良好で、財務内容に問題がない債務者がここに分類されます。創業赤字であっても、当初の事業計画と大幅に乖離がない場合は、正常先と判断されることがあります。
  2. 要注意先

    • 財務内容に問題があり、金利減免や元本返済が滞っている債務者がこの区分に該当します。要注意先の中でも、特に管理が必要な「要管理先」としてさらに細かく区分されることがあります。
  3. 破綻懸念先

    • 現状は経営破綻に至っていないものの、経営改善計画が進展せず、今後破綻に陥る可能性が高い債務者が該当します。特に実質債務超過の状態にある場合や、経営改善計画が不十分で支援が得られない場合には、この区分に分類されます。
  4. 実質破綻先

    • 法的・形式的には破綻していないが、深刻な経営難に陥り、再建の見込みがない債務者がここに分類されます。たとえば、事業を形式的には継続しているが、財務内容に多額の不良資産を抱え、長期にわたり延滞が続いている場合などが該当します。
  5. 破綻先

    • 破産、清算、会社更生などの法的手続きが開始された債務者がこの区分に該当します。これは最も深刻な区分であり、回収の見込みが非常に低いと判断される債権が含まれます。

債権管理と担保評価

旧金融検査マニュアルでは、債権の安全性を確保するため、担保や保証の評価方法も詳細に定められています。担保には「優良担保」と「一般担保」があり、それぞれ処分可能見込額に基づいて資産が評価されます。また、保証についても「優良保証」と「一般保証」に分類され、その履行可能性に基づいて評価が行われます。

担保や保証が債権の価値を支える重要な要素であるため、その評価は客観的かつ合理的な方法で行われる必要があります。特に、不動産担保については、公示地価や基準地価、相続税路線価などのデータを用いて年1回以上の評価見直しが求められます。

経営改善計画とその実行

破綻懸念先や実質破綻先の債務者に対しては、経営改善計画の策定とその実行が求められます。この計画が合理的であり、その実現可能性が高いと判断された場合には、金融機関は支援を継続することが期待されます。しかし、計画が適切に進行しない場合や実現が困難な場合には、さらに深刻な区分へと移行することが検討されます。

まとめ

旧金融検査マニュアルは、金融機関が保有する貸出債権の健全性を評価し、リスク管理を行うための重要なガイドラインです。債務者の財務状況や経営状態に基づき、債務者区分が設定され、それに応じた資産の分類が行われます。これにより、金融機関は適切な引当金を積み立て、リスクを管理し、健全な経営を維持することが可能となります。

特に、中小企業や個人事業主に対する融資では、経営状況の変化に応じて柔軟な対応が求められます。金融機関と債務者の間で信頼関係を築き、適切な経営改善計画を策定・実行することが、再建への道筋を作る重要な要素となります。

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