【自販機ビジネス崩壊?】ダイドー2万台撤去・コカコーラ減損…日本の自動販売機ビジネスに何が起きているのか

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日本の象徴「自動販売機ビジネス」に起きている異変

日本といえば「自動販売機大国」と言われるほど、自販機が街の至るところに設置されています。
実際、日本の自販機の設置台数は約400万台とも言われ、人口当たりの設置数は世界でもトップクラスです。

しかし今、この自販機ビジネスが大きな転換点を迎えています。

飲料業界では最近、次のようなニュースが相次ぎました。

  • ダイドーグループHD:自販機不振で過去最大赤字

  • コカ・コーラボトラーズジャパン:自販機事業で巨額減損

  • 伊藤園:自販機事業で減損損失計上

そして最も象徴的なのが、ダイドーによる約2万台の自販機撤去という決断です。

これは単なるコスト削減ではありません。
業界関係者の間では、「自販機ビジネスの構造転換の象徴的な出来事」とも言われています。

では、なぜ今、自販機ビジネスはこれほど厳しい状況にあるのでしょうか。


ダイドーが過去最大の赤字、2万台撤去へ

まず、ダイドーグループホールディングスの状況を見てみましょう。

2026年1月期の決算では、最終損益が303億円の赤字となりました。
これは同社にとって過去最大の赤字です。

その主な原因は、自販機事業の不振でした。

自販機事業の収益性低下により、同社は298億円の減損損失を計上しています。
その結果、国内飲料事業の営業損益も赤字に転落しました。

これを受けて同社は、

約1万5000台〜2万台の自販機を撤去する

という大規模なリストラを決断しました。

自販機は設置すれば収益が上がるビジネスというイメージがありましたが、今は設置しているだけで赤字になる場所も増えているのです。


コカコーラや伊藤園も減損損失

この問題はダイドーだけではありません。

コカ・コーラボトラーズジャパンも、自販機事業で約881億円の減損損失を計上しました。
その結果、最終損益は507億円の赤字となっています。

また伊藤園も、自販機事業で137億円の減損損失を計上しています。

つまり、自販機ビジネスの苦境は

業界全体の構造問題

と言える状況になっているのです。


自販機ビジネスが苦しくなった3つの理由

では、なぜ自販機ビジネスはここまで厳しくなったのでしょうか。

主な理由は大きく3つあります。


①購買行動の変化

最も大きいのは、消費者の購買行動の変化です。

以前は

「喉が渇いたら自販機」

という行動が一般的でした。

しかし現在は

コンビニで買う

という行動が定着しています。

さらに大きな影響を与えたのが、コンビニコーヒーです。

缶コーヒーはかつて自販機の主力商品でしたが、コンビニのカウンターコーヒーの登場により大きく需要を奪われました。

コンビニは全国に約5万店舗あり、利便性では自販機を上回る存在となっています。


②価格競争の激化

2つ目は価格競争です。

現在、自販機の飲料価格は150円前後が一般的です。

一方、スーパーや量販店では

80円〜100円程度

で販売されていることも珍しくありません。

物価高の影響で節約志向が強まる中、消費者はより安い販売チャネルを選ぶ傾向が強まっています。

その結果、

自販機は割高な販売チャネル

というイメージが定着してしまいました。


③労働集約型ビジネスの限界

3つ目の理由は、自販機ビジネスの構造そのものです。

自動販売機という名前から「自動化されたビジネス」と思われがちですが、実際には非常に労働集約的なビジネスです。

例えば、以下の作業はすべて人間が行っています。

  • 商品の補充

  • 売上金の回収

  • ゴミ箱の清掃

  • メンテナンス

  • 在庫管理

つまり、自販機ビジネスは

人が巡回して初めて成立するビジネス

なのです。

近年は人手不足が深刻化し、人件費も大きく上昇しています。

さらに

  • 原材料価格の高騰

  • 物流費の上昇

  • 電気代の上昇

などが重なり、コスト構造が急激に悪化しました。


業界が進める自販機ビジネス改革

こうした状況を受け、飲料メーカーは自販機ビジネスの改革を進めています。

主な対策は次の3つです。


①不採算機の撤去

最も直接的な対策は、不採算自販機の撤去です。

ダイドーは約2万台の撤去を進めています。

今後は「とにかく台数を増やす」時代から、

収益が出る場所に集中する

という戦略に変わっていくと考えられます。


②DXによる効率化

次に進められているのが、自販機のデジタル化です。

最新の自販機では

  • 在庫状況

  • 売れ筋商品

  • 売上データ

などをリアルタイムで把握できます。

これにより、

  • 補充ルートの最適化

  • 売れ筋商品の自動調整

などが可能になり、オペレーションコストを削減できます。


③商品構成の見直し

商品構成の見直しも進められています。

例えば、コーヒー豆の価格が高騰しているため、コーヒーの比率を下げ、

  • ミネラルウォーター

  • お茶

  • 炭酸飲料

などの比率を増やす動きが見られます。

売れ筋商品をデータ分析で判断することで、販売効率を高める取り組みも進んでいます。


自販機ビジネスは消えるのか?

では、自販機ビジネスは今後なくなるのでしょうか。

結論から言えば、

完全に消えることはありません。

ただし、今までのように「どこにでもあるビジネス」ではなくなる可能性は高いでしょう。

今後は

  • 人通りの多い場所

  • 観光地

  • 駅や高速道路

など、収益性の高い場所に集中する形になると考えられます。

つまり、

量のビジネスから質のビジネスへ

と変化していくのです。


自販機ビジネスの変化は日本経済の縮図

今回の自販機ビジネスの問題は、単なる飲料業界の話ではありません。

これは、

  • 人手不足

  • 物価高

  • 消費行動の変化

という、日本経済全体の変化を象徴しています。

つまり、自販機ビジネスの苦境は

日本のビジネスモデルの転換

を示しているとも言えるのです。

これからの企業経営では、

「これまで儲かっていたモデルが永遠に続く」

という前提は通用しません。

市場環境が変化すれば、ビジネスモデルそのものを変える必要があります。

今回のダイドーの2万台撤去は、まさにその象徴と言えるでしょう。

日本の街に当たり前のように存在していた自販機。
その風景も、これから大きく変わっていくのかもしれません。

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