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1. 序章:2025年秋、倒産ドミノが再び始まった
2025年10月、帝国データバンクと東京商工リサーチの統計が示すのは、
「新たな5業種で倒産が急増している」という現実です。
今回、倒産が目立つ業種は次の5つです。
スイーツ(菓子製造小売)/バー・キャバレー業態/ラーメン/ハンバーガー/クリーニング
これらは、いずれもコロナ禍で一時的に需要が回復し、「復活業種」と見られていた分野。
しかし2025年に入り、原材料高・人件費高騰・需要変化が重なり、
“再び淘汰の波”が押し寄せています。
2. スイーツ業界:高級化の罠と冷凍スイーツの台頭
倒産の現状
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2025年1〜9月の菓子製造小売業の倒産は37件。
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過去20年で最多ペース。年間50件超が確実視されています。
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うち8割が従業員5人未満の個人経営・零細店です。
背景と要因
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原材料の高騰:卵・乳製品・小麦の価格は過去5年で約1.5倍。
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エネルギーコスト増:電気・ガス料金の上昇が固定費を圧迫。
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価格転嫁の難しさ:「ケーキ1個800円」の心理的壁。
これにより「高級スイーツ化」を試みた店も、逆に顧客離れを起こしています。
さらに、コンビニやスーパーが販売する冷凍スイーツ・専門監修デザートが台頭し、
個人店の競争力を奪っています。
今後の方向性
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体験型スイーツ(カフェ併設・手作り体験・SNS映え)
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ギフト・EC展開(保存・配送・季節限定)
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ブランドコラボ戦略(有名ホテル・アニメ・地方特産品)
「味×体験×ストーリー」が新しい成功条件です。
3. 夜の街(バー・キャバレー業態):ゼロゼロ融資後の反動
現状
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2025年1〜8月で58件倒産。
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コロナ支援金終了後も倒産高止まり。
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ゼロゼロ融資返済が経営を圧迫し続けています。
背景
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若年層のアルコール離れ。
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接待文化の衰退で二次会需要が激減。
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健康・非接触志向が拡大。
“夜の街”が「昭和モデル」から脱却できていない現実。
生き残りの方向
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インバウンド対応ラウンジ化(観光×エンタメ)
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音楽・演劇・DJバーなど“体験型”イベント併設
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地域観光導線との統合(旅館・食事・ナイトカルチャー連携)
夜の街を「観光産業」として再構築する発想が必要です。
4. ラーメン業界:淘汰の波を超え、復活の兆しも
現状
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2025年1〜9月の倒産は46件(前年60件→減少)。
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4年ぶりに“改善”の兆し。
背景
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原価指数(食材・燃料・包装資材)は依然高いが、上昇は鈍化。
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「1杯1,000円の壁」が崩れ、消費者の理解が進む。
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一部の人気店では客単価1,200円〜1,400円が定着。
成功する店舗の特徴
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ブランドの明確化:「行列・SNS・味の一貫性」
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効率経営:セルフ注文、キャッシュレス、自動券売機。
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限定メニュー戦略:期間限定・地域コラボで客単価アップ。
小規模店は「味の専門性」、中堅店は「効率経営」で生き残る構図。
5. ハンバーガー業界:価格競争の板挟み
倒産状況
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2025年1〜8月:7件発生(過去最多)。
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8割が「販売不振」を理由に倒産。
背景
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原価上昇(肉・チーズ・レタスなど)
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値上げにより「600円超バーガー」は敬遠される傾向。
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大手(マクドナルド)は過去最高益、高級バーガーも行列。
→ 中価格帯(800〜1,200円)の独立店が最も苦戦。
教訓
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単価×顧客満足度のバランスが命。
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コンセプト特化(地元食材・クラフト・環境配慮)
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SNSマーケティング×ファンづくりが生死を分ける。
「おいしい」だけでは生き残れない時代。
「誰の、どんな時間を豊かにするバーガーか」を再定義する必要があります。
6. クリーニング業界:静かに進む“あきらめ廃業”
現状
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2025年1〜9月:倒産18件+廃業34件=計52件(過去最多ペース)。
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高齢経営者が設備故障を機に“自主廃業”するケースが増加。
背景
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テレワーク・カジュアル化でスーツ需要激減。
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コインランドリーや宅配クリーニングへの移行。
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原油・資材・電気代高騰が直撃。
再生の方向性
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BtoBモデル:ホテル・介護施設向けリネンサプライへ転換。
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宅配・アプリ化:集配・キャッシュレス決済・サブスク化。
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地域密着×物流連携:クリーニング+配送で地域インフラ化。
「店舗依存」から「ロジスティクス型事業」への転換がカギ。
7. 共通する“3つの危機構造”
(1) コスト高構造の固定化
エネルギー・人件費・原材料が長期高止まり。
「値上げできる企業」と「できない企業」で明暗が分かれています。
(2) 消費構造の変化
消費者は「モノ」より「体験」へ。
便利さ・共感・ストーリーに価値を感じる時代です。
(3) 人手不足・後継者難
高齢化が進み、後継者不在で廃業するケースが急増。
「人がいない=継続できない」構造的課題に。
8. 中小企業が取るべき“再設計戦略”5選
戦略 | 内容 | 成果イメージ |
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① 商品より体験を売る | 味+空間+物語を設計(例:地域素材×ストーリー) | 口コミ・SNS発信が自走 |
② DX・自動化 | 省人化・効率化投資(補助金活用) | 人件費圧縮・離職防止 |
③ 他業種共創 | カフェ×教育/スイーツ×ECなど | 顧客層拡大・固定費分散 |
④ 公的支援の活用 | 省力化投資補助金/業務改善助成金 | 設備・人材費を補填 |
⑤ M&A・事業承継 | 廃業せず譲渡・合併で継続 | ノウハウ・雇用の維持 |
9. 事例紹介:再生に成功した企業たち
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スイーツ店A:SNS発信+EC化で地方客3倍。
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バーB:外国人観光客向け“日本酒体験バー”に業態転換。
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ラーメン店C:自動食券導入と少人数シフトで黒字転換。
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クリーニングD:宅配・集配アプリ導入で新規顧客+40%。
これらは共通して、「発想を変えた」ことが成功の鍵でした。
10. まとめ:倒産は“終わり”ではなく“再設計の機会”
2025年、日本経済は“支援なき自力時代”に突入しています。
コロナ禍のゼロゼロ融資も終わり、事業再構築補助金も縮小傾向。
そんな中、倒産は単なる失敗ではなく、
「時代変化に対応できなかったビジネスモデルの終焉」にすぎません。
撤退ではなく、再設計。
競争ではなく、共創。
中小企業が生き残る道は、これからの社会課題――
人手不足・高コスト・価値転換――を“ビジネスチャンス”に変えられるかどうかにかかっています。
✅ この記事のポイントまとめ
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倒産増加の5業種:スイーツ/夜の街/ラーメン/ハンバーガー/クリーニング
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共通点は「コスト高・消費構造変化・人手不足」
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生き残る企業は「体験設計・DX・共創・支援活用・承継」の5本柱を持つ
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倒産は“終わり”ではなく、“再構築”のサイン