【2025年最新版】所得税の準確定申告とは?

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──経営者が知らないと大きな損失につながる“死亡時の税務”を徹底解説

中小企業の経営者や個人事業主から意外なほど多い相談が、

「家族や配偶者が亡くなった場合、税務の手続きはどうすればいいのか?」
「準確定申告って聞くけど、通常の確定申告と何が違うの?」

というものです。

“準確定申告”は、
その人が亡くなった時点までの所得税を確定させるための申告 であり、
相続手続きの中でも極めて重要なタスクです。

しかし、

  • 申告期限が短い
  • 放置すると加算税・延滞税が発生
  • 税務署から通知が来るわけではない
  • 誰が申告すべきか分かりにくい
  • 相続税の計算にも影響する

など、注意しないと相続人が不利益を被るリスクがあります。

本記事では、経営者層が知っておくべき


✔ 準確定申告とは何か

✔ 誰が行うのか

✔ 期限はいつまでか

✔ 申告しないとどうなるか

✔ 必要書類

✔ 給与所得者・個人事業主・不動産所得者のケース別

✔ 相続手続きとの関係

✔ 2025年の注意点


を網羅的に解説します。


■ 1. 「準確定申告」とは?

亡くなった人の“死亡日までの所得税”を申告する制度

準確定申告とは、
納税者が亡くなった場合に、
死亡した年の1月1日から死亡日までの所得 を計算し、
相続人が代わりに行う所得税の申告です。

通常の確定申告は翌年に行いますが、
準確定申告は死亡後速やかに行う必要があります。

◆ なぜ申告が必要なのか?

法律上、所得税は“年単位”で課税します。
しかし納税者が年の途中で亡くなると、

  • その年の所得
  • 必要経費
  • 控除額
  • 既に源泉徴収された税額

が“宙ぶらりん”になってしまいます。

そこで、
亡くなった人の税務を整理して相続へと引き継ぐために
準確定申告が必要となります。

◆ 準確定申告は義務であり、任意ではない

税務署から案内が来ない場合もありますが、
申告義務は“法律上当然に発生”します。

放置した場合、
相続人に 延滞税・加算税のリスク が発生します。


■ 2. 誰が準確定申告を行うのか?

準確定申告を行う義務があるのは 相続人 です。

◆ 全ての相続人に連帯義務がある

相続人全員が義務者です。
1人がまとめて手続きする場合もありますが、
申告書には相続人全員の署名または押印が必要です。

◆ 相続放棄をした人は義務を負わない

相続放棄を家庭裁判所で受理された人は、
準確定申告の義務も負わなくなります。


■ 3. 申告期限(最重要ポイント)

準確定申告の期限は、


✔ 「死亡を知った日の翌日から4カ月以内」


例:
5月10日に死亡
→ 5月11日から起算して 9月10日まで が申告期限

◆ 土日祝の場合は翌営業日が期限

期限日が休日の場合は翌日まで延長されます。

◆ なぜ4カ月なのか?

相続税申告(10カ月期限)よりも早く税務整理を行い、
相続財産の確定をスムーズにするためです。


■ 4. 準確定申告が必要な人・不要な人

◆ 準確定申告が必要なケース

① 個人事業主(所得がある場合)
② 不動産所得がある人
③ 株の売却や配当所得がある人
④ 医療費控除・寄付金控除が受けられる人
⑤ 給与所得者で、年収や控除の関係で確定申告が必要だった人
⑥ 年金受給者で、確定申告の対象に該当する場合

◆ 準確定申告が不要なケース

① 年金収入のみで確定申告が不要だった人
② 給与所得者(会社員)で、源泉徴収で完結している人
③ 所得がない人

ただし、控除が使える場合は申告したほうが戻ってくるケースもあります。


■ 5. 準確定申告の「税額の計算方法」

死亡日までの所得を集計します。


◆ 個人事業主の場合

  • 売上(死亡日まで)
  • 必要経費
  • 減価償却(按分)
  • 青色申告控除(按分)
  • 各種控除(基礎控除、配偶者控除など)

按分計算が必要なため、通常の確定申告より複雑です。


◆ 給与所得者の場合

勤務先から「死亡退職に伴う源泉徴収票」を取得し、
死亡日までの給与・賞与で計算します。


◆ 年金受給者の場合

公的年金等の支払通知書を使用し、
死亡日までの受給額を集計します。


◆ 株式・投資信託所得がある場合

  • 特定口座(源泉徴収あり):申告不要のことも多い
  • 特定口座(源泉徴収なし):申告必要
  • NISA:非課税

◆ 損益通算も可能

事業所得・不動産所得・株式等の損益通算は、
死亡日までの範囲で通常の確定申告と同様に扱われます。


■ 6. 準確定申告で使える控除

死亡日までを対象として、
次の控除が適用可能です。


◆ 基礎控除

通常どおり受けられる(48万円)

◆ 医療費控除

死亡前の入院費用などは控除可能。

◆ 寄付金控除

生前に行われた寄付が対象。

◆ 社会保険料控除

死亡日までに支払った国民年金・健康保険料など。

◆ 生命保険料控除

生前に支払った分。


控除を適切に使えば、
相続人が受け取る税金(還付金)が発生する可能性もあります。


■ 7. 必要書類一覧

準確定申告には、以下の書類が必要です。

◆ 共通書類

  • 準確定申告書(確定申告書A or B)
  • 死亡日が確認できる戸籍謄本
  • 相続人全員の署名・押印
  • 源泉徴収票(給与所得者の場合)
  • 年金の支払通知書
  • 医療費・寄付金などの領収書
  • 個人事業主は帳簿・領収書
  • 株式の取引報告書
  • マイナンバー確認書類

準確定申告は、書類収集が最も時間を要するポイント です。


■ 8. 申告しないとどうなる?(罰則・リスク)

期限を過ぎると、


✔ 延滞税

✔ 無申告加算税(原則15%)

✔ 税務署からの問い合わせ

✔ 相続税の計算にも影響(債務控除ができなくなる可能性)


特に重要なのが相続税との関係です。

準確定申告をしていないと、
未払いの所得税を「相続財産の債務」として計上できない
という問題が生じます。

つまり、
相続税額が 増えてしまう可能性 があります。


■ 9. 準確定申告と相続税申告の関係

準確定申告は、
相続税申告(死亡後10カ月以内)よりも早いスケジュールで処理します。

流れは次のとおり。

① 準確定申告(死亡後4カ月以内)
② 未払税金の確定
③ 財産と債務の確定
④ 相続税の申告(死亡後10カ月以内)

つまり、


✔ 準確定申告が遅れると、相続税申告も遅れる

✔ 相続手続き全体のスケジュールに影響

✔ 財産の評価・分割協議が進まない


相続実務の中で、
準確定申告は“最初に片付けるべき大タスク”と言えます。


■ 10. 経営者が準確定申告で失敗しやすいポイント

① 個人事業の売上・経費の按分を誤る

死亡日の前日までの取引を正確に整理する必要がある。

② 事業用通帳とプライベート通帳が混在

=経費の判定が難しくなる。

③ 節税スキームが複雑で正確に申告できない

法人と個人の収入が複雑な人ほど要注意。

④ 相続人が税務知識を持っていない

=期限に間に合わないケースが非常に多い。

⑤ 税務署の案内が来ない

自分で気づかなければならない。


■ 11. 税理士に依頼するべきケースは?

以下のようなケースは、必ず税理士に依頼すべきです。

  • 個人事業主(特に青色申告)
  • 不動産所得が複数ある
  • 株式・FX・暗号資産取引がある
  • 海外資産を持っている
  • 亡くなった人が経営者で、法人と個人の収入が複雑
  • 相続人が複数で混乱している

経営者の多くはこれに該当するため、
早期に専門家へ相談した方が安全です。


■ 12. まとめ:準確定申告は“相続の第一歩”

ここまでの内容をまとめます。


✔ 亡くなった人の今年の所得税を確定させる制度

✔ 相続人が代わりに申告(連帯義務あり)

✔ 期限は「死亡を知った日の翌日から4カ月以内」

✔ 準確定申告が遅れると延滞税・加算税のリスク

✔ 相続税の計算にも影響

✔ 必要書類は多く、実務は複雑

✔ 特に経営者・個人事業主は注意


準確定申告は、
相続税の申告・遺産分割協議・名義変更など
すべての相続手続きの“起点”となる重要な手続きです。

経営者としては、

  • 家族に手続き方法を共有しておく
  • 顧問税理士と連携しておく
  • 事業と個人の財務を整理しておく

これらを進めておくだけで、
万が一の際の負担を大きく軽減できます。

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