Contents
- 1 ■ 1. 海外勤務時の年金は“働き方の形態”によって大きく変わる
- 2 ✔ 日本企業からの海外赴任
- 3 ✔ 現地法人への転籍
- 4 ✔ 海外フリーランス・個人事業
- 5 ✔ 海外移住(リタイア含む)
- 6 ■ 2. ケース①:日本企業からの「海外赴任(出向)」の場合
- 7 ✔ 日本の厚生年金にそのまま加入継続
- 8 ✔ 日本の健康保険も継続
- 9 ✔ 会社が保険料を負担し続ける
- 10 ■ 3. 社会保障協定とは?(2025年時点:29カ国と締結)
- 11 ◆ 二重加入の防止
- 12 ◆ 年金加入期間の通算
- 13 ■ 4. ケース②:現地法人へ転籍・海外企業への就職
- 14 ✔ 日本の厚生年金脱退
- 15 ✔ 日本の健康保険も脱退
- 16 ✔ 国民年金に加入するかは「居住地」による
- 17 ◎ 日本国内に住所がない場合
- 18 ■ 5. ケース③:海外でフリーランス・自営業として働く場合
- 19 ◆ 日本国内に住所がない
- 20 ■ 6. ケース④:老後に海外移住した場合(リタイアメント)
- 21 【重要】日本の年金は海外でも受け取れる
- 22 ■ 7. 社会保障協定国と“未協定国”での扱いの違い
- 23 ■ 8. 海外勤務時の年金加入のまとめ(わかりやすい一覧)
- 24 ■ 9. 帰国後の年金手続き
- 25 ✔ 住民票の転入手続き
- 26 ✔ 国民年金または厚生年金の加入手続き
- 27 ■ 10. 経営者が知るべき海外勤務と年金の“実務ポイント”
- 28 ■ 11. まとめ:海外勤務は年金に大きな影響を与える
- 29 ✔ 日本企業からの赴任 → 厚生年金継続
- 30 ✔ 現地法人に転籍 → 年金空白期間が生じやすい
- 31 ✔ 海外移住 → 国民年金は任意加入
- 32 ✔ 協定国なら期間通算できる
- 33 ✔ 未協定国では二重加入のリスク
- 34 ✔ 帰国後は加入手続きを忘れずに
──海外赴任・海外移住・海外法人役員など、経営者が必ず理解すべき年金の仕組みを徹底解説
グローバル化が進む中で、
日本企業だけでなく中小企業でも、
- 海外子会社の設立
- 現地法人への役員派遣
- 欧米・アジアへの駐在
- 海外移住(リタイア・投資目的)
- デジタルノマドとしての海外居住
が増えています。
しかし、海外勤務で「日本の年金がどうなるか」を正しく理解している方は非常に少なく、
間違った認識のまま海外勤務を続けたことで、
- 帰国後に年金が極端に少ない
- 未納扱いとなり将来の年金が減額
- 社会保障協定を利用しなかったために損
- 二重加入(日本と海外の両方で保険料発生)
- 海外の勤務年数が日本の受給資格にカウントされない
といったトラブルが数多く発生しています。
本記事では、
2025年時点の最新制度に基づき、
「海外勤務と年金の関係」を経営者視点で分かりやすく整理します。
■ 1. 海外勤務時の年金は“働き方の形態”によって大きく変わる
まず最も大切な結論を示します。
海外勤務時の年金の扱いは、
✔ 日本企業からの海外赴任
✔ 現地法人への転籍
✔ 海外フリーランス・個人事業
✔ 海外移住(リタイア含む)
という 4つのケースでまったく異なる という点です。
ではそれぞれ見ていきます。
■ 2. ケース①:日本企業からの「海外赴任(出向)」の場合
これは最も一般的なパターンです。
日本企業に在籍したまま海外で働く「出向」や「駐在員」の場合、
✔ 日本の厚生年金にそのまま加入継続
✔ 日本の健康保険も継続
✔ 会社が保険料を負担し続ける
という扱いになります。
◎ 海外に住んでいても、日本の社会保険に加入したまま
→ 日本国内と同じ扱いになる
ただし 海外現地での社会保険も加入義務あり となる国があるため、
ここで登場するのが「社会保障協定」です。
■ 3. 社会保障協定とは?(2025年時点:29カ国と締結)
日本は2025年時点で 29カ国と社会保障協定を締結しています。
この協定により、
◆ 二重加入の防止
◆ 年金加入期間の通算
が可能になります。
● 二重加入防止
「日本企業から派遣された駐在員は日本側の年金だけ加入し、
海外の年金加入を免除する」
という取り扱いができる国が多い。
● 加入期間の通算
たとえば
- 日本で15年勤務
- ドイツで10年勤務
のようなケースでも、
合算して老齢年金の受給資格(10年)を満たすことができる。
(※給付は各国が自分の期間に応じて支給)
■ 4. ケース②:現地法人へ転籍・海外企業への就職
日本企業との雇用関係が切れ、
海外企業に直接雇用される場合は大きく異なります。
✔ 日本の厚生年金脱退
✔ 日本の健康保険も脱退
✔ 国民年金に加入するかは「居住地」による
ここで重要なのは、
◎ 日本国内に住所がない場合
→ 国民年金に加入できない(=空白期間になる)
これは非常に多くの日本人が誤解しているポイントです。
海外住居を選んだ瞬間
→ 日本の公的年金の加入義務が消える
→ 加入できない期間は「未加入期間」として残る
この期間は 老齢基礎年金の支給額に大きく影響 します。
■ 5. ケース③:海外でフリーランス・自営業として働く場合
- 海外移住者
- 海外デジタルノマド
- フリーランスITエンジニア
- 投資家・独立起業家
など、住所を海外に移して働くケースが増えています。
この場合、
◆ 日本国内に住所がない
→ 国民年金に加入できない
つまり、
海外期間=日本の年金に加入しない空白期間 になります。
しかし!
◎ 任意加入制度(国民年金)を利用すれば加入可能
・日本国籍を持っていれば海外居住でも任意加入ができる
・保険料は自分で負担
・満額年金を目指す人は絶対に利用すべき制度
→ 知らないと老後の年金額が大きく減ります。
■ 6. ケース④:老後に海外移住した場合(リタイアメント)
定年後に海外移住(例:マレーシア・タイ・ハワイなど)の場合、
【重要】日本の年金は海外でも受け取れる
海外口座へ直接振り込み可能な国も多数あり、
税制上の扱いも国によって異なります。
また、日本の住民票を抜いた後も、
老齢年金の受給資格や金額は変わりません。
■ 7. 社会保障協定国と“未協定国”での扱いの違い
◆ 社会保障協定国
- 二重加入の回避
- 加入期間の通算
- 老齢年金の資格確保がしやすい
◆ 未協定国(例:中国・フィリピンなど一部)
- 自国側の社会保険加入が義務
- 日本の厚生年金も加入したまま
→ 保険料の二重払いが発生
(企業負担が重くなる)
経営者としては、海外赴任者を出す際に
「協定国かどうか」の確認が必須です。
■ 8. 海外勤務時の年金加入のまとめ(わかりやすい一覧)
| 働き方 | 日本の厚生年金 | 日本の国民年金 | 海外の社会保険 | 社会保障協定の影響 |
|---|---|---|---|---|
| 日本企業からの海外赴任 | 継続加入 | 不要 | 国による | 二重加入回避可 |
| 現地法人への転籍 | 脱退 | 国内住所がなければ加入不可 | 加入義務 | 期間通算あり |
| 海外フリーランス | 加入なし | 任意加入可能 | 国による | 加入期間通算のみ |
| 老後の海外移住 | 受給OK | 影響なし | 不要 | 影響なし |
■ 9. 帰国後の年金手続き
海外勤務から帰国したら、
✔ 住民票の転入手続き
✔ 国民年金または厚生年金の加入手続き
を行う必要があります。
特に注意すべきは以下の点。
◎ 国民年金の未加入期間がある場合
→ 老後の年金額が減額
→ 60歳未満なら追納可能
◎ 厚生年金基金や確定拠出年金の期間
→ 海外勤務期間がどう扱われるか確認が必要
■ 10. 経営者が知るべき海外勤務と年金の“実務ポイント”
① 海外赴任者を出す企業は、社会保障協定の確認が必須
→ 二重負担は企業経営に大きな影響を与える。
② 経営者が海外移住する場合、国民年金の任意加入を検討すべき
→ 満額年金(約78万円)を維持するために重要。
③ 現地法人への転籍は、年金空白期間のリスクが大きい
→ 退職後の生活に直結する。
④ 海外の年金制度は国によって大きく異なる
→ 受給資格・税金・社会保険料などを事前に調査すべき。
⑤ 海外勤務の期間は「ねんきんネット」で必ず確認
→ 記録漏れが起きやすい期間のひとつ。
■ 11. まとめ:海外勤務は年金に大きな影響を与える
海外勤務と言っても、
働き方によって日本の年金制度の扱いは大きく変わります。
✔ 日本企業からの赴任 → 厚生年金継続
✔ 現地法人に転籍 → 年金空白期間が生じやすい
✔ 海外移住 → 国民年金は任意加入
✔ 協定国なら期間通算できる
✔ 未協定国では二重加入のリスク
✔ 帰国後は加入手続きを忘れずに
海外勤務や海外移住の影響は、
老後の生活に直結します。
特に経営者は、自身だけでなく従業員への対応も必要なため、
制度理解は必須です。