Contents
- 1 ■ 1. 国民年金の被保険者区分とは?
- 2 ◆ 第1号被保険者
- 3 ◆ 第2号被保険者
- 4 ◆ 第3号被保険者(3号)
- 5 ■ 2. 第3号被保険者の条件(2025年最新版)
- 6 ✔ 専業主婦
- 7 ✔ パート収入が少ない配偶者
- 8 ✔ 役員ではない妻
- 9 ■ 3. 第1号・第2号・第3号の比較(一覧表)
- 10 ■ 4. 第3号被保険者のメリット(経営者家庭が得をする理由)
- 11 ■ 5. 第3号のデメリット(誤解・リスク)
- 12 ■ 6. 経営者にとって最重要:役員報酬と妻の3号の関係
- 13 ✔ 妻を“役員にするかどうか”は
- 14 ✔ 3号の資格に直接影響する
- 15 ■ 7. 法人成りと第3号の大きな違い
- 16 ■ 8. 第3号から外れるケースとその後の対応
- 17 ■ 9. 第3号を「正しく理解して活用できる経営者」が老後不安から最も遠い
- 18 ✔ 保険料を払わずに年金加入
- 19 ✔ 妻の老後の生活基盤が保証される
- 20 ✔ 子育て期間も保険料負担ゼロ
- 21 ✔ 法人化との相性が非常に良い
- 22 ◆ 最後に結論
──第1号・第2号との違い、負担、リスク、役員報酬との関係を徹底解説
日本の年金制度において
「第1号・第2号・第3号被保険者」という区分は、
制度の根幹でありながら経営者でも正しく理解していないことが多い領域です。
特に 第3号被保険者(3号) は、
-
保険料負担ゼロ
-
将来の老齢基礎年金を受け取れる
-
会社員(厚生年金加入者)の配偶者に限られる制度
という“非常に優遇された制度”であり、
経営者家庭に与える影響は大きいにもかかわらず
制度の誤解が極めて多い分野です。
さらに、
-
妻を役員にした場合
-
妻のパート収入がある場合
-
事業主の働き方を変える場合
-
法人成りのタイミング
などの実務判断にも直結します。
本記事では、2025年の最新制度を踏まえて、
「第3号被保険者」を中心に
第1号・第2号との違い、メリット・デメリット、経営者の意思決定に役立つ視点を
徹底的にわかりやすく解説します。
■ 1. 国民年金の被保険者区分とは?
日本の公的年金は「全員が加入」する仕組みになっていますが、
立場に応じて次の3つに区分されます。
◆ 第1号被保険者
-
自営業者
-
フリーランス
-
学生(20歳以上)
-
無職
→ 国民年金に自分で加入・自分で保険料を払う
◆ 第2号被保険者
-
会社員
-
会社役員
-
公務員
→ 厚生年金加入者(給与天引き)
◆ 第3号被保険者(3号)
-
厚生年金加入者(第2号)の配偶者
-
年収130万円未満(扶養判定基準)
→ 保険料を払わずに年金加入扱い
つまり、
3号は「自分で保険料を払わなくても、将来の老齢基礎年金が満額に近いかたちで受け取れる制度」であり、
公的制度の中でも最も優遇された仕組みと言えます。
■ 2. 第3号被保険者の条件(2025年最新版)
3号になれる条件は次の通り。
【第3号の条件】
(1)厚生年金加入の配偶者(=第2号)がいる
(2)配偶者と生計を同一にしている
(3)配偶者(本人ではない)が年収130万円以上
(4)本人の年収が130万円未満(※週20時間未満の労働など)
(5)20歳以上60歳未満
重要ポイント
保険料は「第2号(夫・妻)」が加入する年金制度が負担しています。
本人の負担はゼロ。
つまり、
✔ 専業主婦
✔ パート収入が少ない配偶者
✔ 役員ではない妻
は 3号になれる可能性が高い。
経営者家庭では「妻が3号」というケースが非常に多いのが特徴です。
■ 3. 第1号・第2号・第3号の比較(一覧表)
以下の表を見ると、制度の違いが明確になります。
| 区分 | 主な対象者 | 加入制度 | 保険料負担 | 将来の年金 | 経営者家庭での例 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1号 | 自営業・無職・学生 | 国民年金 | 自分で払う(月額約17,000円) | 老齢基礎年金のみ | 個人事業主の配偶者 |
| 第2号 | 会社員・公務員・役員 | 厚生年金 | 給与から天引き(会社も負担) | 基礎+厚生年金 | 法人化した経営者 |
| 第3号 | 第2号の扶養配偶者 | 国民年金 | 負担ゼロ | 老齢基礎年金(満額に近い) | 経営者の妻で扶養の場合 |
第3号がいかに優遇されているかが分かります。
■ 4. 第3号被保険者のメリット(経営者家庭が得をする理由)
◆ ① 保険料ゼロで老齢基礎年金を受給できる
月額17,000円を払わずに年金加入扱いになります。
40年加入すると満額(約87万円)を受給可能。
◆ ② 妻が働いても一定収入までなら3号のまま
年収130万円未満、週20時間未満などの条件を満たす限り、
パート収入がある妻でも3号のまま年金加入扱い。
これは非常に大きなメリットです。
◆ ③ 出産・育児の間も保険料負担なし
妻が働けない時期でも年金加入が継続します。
◆ ④ 専業主婦・パート主婦の老後の生活費の柱になる
経営者家庭では、
夫の役員報酬からの老齢厚生年金 + 妻の老齢基礎年金
という組み合わせで老後総受給額が大きくなります。
■ 5. 第3号のデメリット(誤解・リスク)
◆ ① 妻が厚生年金に加入していないため、将来の厚生年金はゼロ
3号はあくまで「基礎年金だけ」です。
→ 老後の収入が夫に偏る
→ 遺族厚生年金も夫の加入実績に左右される
◆ ② 意図せず3号の資格を失うことがある
よくある例:
-
妻がパートで年収130万円超
-
法人の役員に就任した
-
扶養から外れた
-
夫が会社を辞めて国民年金に切り替わった
-
離婚
これらはすべて「自動的に3号資格喪失」。
喪失後に国民年金の届け出をしないと
未加入期間(空白期間)になり年金が減額される という危険があります。
◆ ③ 夫が自営業の場合、妻は自動的に「第1号」になる
つまり必ず保険料が必要になります。
経営者が法人化し「第2号」になると、
妻は3号になれるため、大きな差が生まれます。
■ 6. 経営者にとって最重要:役員報酬と妻の3号の関係
ここが経営者に最も理解してほしいポイントです。
✔ 妻を“役員にするかどうか”は
✔ 3号の資格に直接影響する
妻が役員の場合
→ 報酬がある
→ 第2号(厚生年金加入)になる
→ 第3号ではなくなる
→ 社会保険の負担が増える
一方、
妻が役員でない・扶養のまま
→ 年収130万円未満なら3号
→ 保険料ゼロで年金加入可能
【結論】
妻を役員にするかどうかは
「3号を維持するメリット」も加味して決める必要がある。
これは経営者ならではの実務判断です。
■ 7. 法人成りと第3号の大きな違い
個人事業主(=第1号)
→ 法人化すると経営者は 第2号(厚生年金) へ
→ 妻は 第3号になれる可能性 が高くなる
【この違いは40年で数百万円の差になる】
妻が国民年金(第1号)として保険料を何十年も払うか、
それとも3号で負担ゼロになるかで大きな差が生まれます。
法人化は税金だけでなく
「年金戦略としてもメリットが大きい」
ということです。
■ 8. 第3号から外れるケースとその後の対応
● 年収130万円以上になった
→ 第1号または第2号へ切替
→ すぐに届出をしないと“未加入期間”になり損をする
● 法人の役員になった
→ 第2号へ
→ 社会保険加入が必要
● 離婚した
→ 第1号へ
→ 国民年金の支払いが必要
● 夫が厚生年金を辞めて自営業に戻った
→ 妻も第1号になる
未加入期間は老齢基礎年金が減るだけでなく、
障害年金・遺族年金にも影響するため、
非常に危険です。
■ 9. 第3号を「正しく理解して活用できる経営者」が老後不安から最も遠い
第3号被保険者制度は、
日本の社会保障の中でも最も優遇された仕組みと言われます。
理由はシンプル。
✔ 保険料を払わずに年金加入
✔ 妻の老後の生活基盤が保証される
✔ 子育て期間も保険料負担ゼロ
✔ 法人化との相性が非常に良い
経営者の場合、
「妻の役員化」「扶養に入れるか」「パート収入の調整」など
実務と密接に関わるため、
制度を理解しているかどうかで
家計や老後の資産設計が大きく変わります。
◆ 最後に結論
経営者は、
税金と同じくらい “年金制度(特に3号)” を理解すべき です。
妻を守る、家族を守る、企業を守る。
そのために必要不可欠な知識だからです。