事業再生、企業倒産の「清算価値保証原則」とは?

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1. 清算価値保証原則の概要

**清算価値保証原則(Liquidation Value Principle)**は、企業再生や倒産手続きにおいて、債権者が企業の清算価値以下であってはならないという原則です。つまり、企業が再生計画を立てる場合、その計画は企業を清算した場合に債権者が受け取るであろう金額以上のものを保証しなければならないということです。

この原則に基づくと、企業が破産や倒産手続きに進むか、事業再生を図るかを検討する際に、少なくとも清算価値以上の価値を生み出す再生計画を提示する必要があります。債権者は清算時に得られるであろう金額を基準に再建案を受け入れるか判断するため、この原則は企業再生の重要な基準となっています。

2. 清算価値保証原則の適用場面

清算価値保証原則は、特に中小企業が倒産や経営再建を行う際に重要な役割を果たします。債権者は、企業の再生計画が自分たちに対して清算時よりも良い条件を提供することを期待します。再建計画がこの期待に応えられない場合、債権者は再建計画を拒否し、代わりに企業を清算する方が有利だと判断するかもしれません。

3. 清算価値の算定方法

清算価値は、企業の資産を売却し、その売却から得られる現金を基に算定されます。具体的には、以下のような項目が含まれます。

  • 不動産や機械設備などの資産の売却価値
  • 在庫や備品の売却価値
  • 売掛金の回収可能性
  • 金融資産の売却価値

このような資産の現実的な売却価格を基に、企業の清算価値が算定され、債権者が受け取ることのできる金額が見積もられます。

4. 債権者の視点

債権者にとって、企業再建案が清算価値以上の利益を保証することが重要です。例えば、債務再編や資本注入などの再生計画が提案される際に、清算価値以下のリターンであれば、債権者は企業を清算する方が経済的に有利と考えることがあるためです。

5. 清算価値保証原則の意義

企業にとって、この原則は再建計画を立てる際の大きな基準となります。再建計画が清算価値を下回る場合、再建が成功する可能性は低く、再建計画の立案者は債権者に受け入れられる計画を作成する必要があります。清算価値保証原則は、債権者の利益を守りつつ、企業が再生を試みるための透明性を提供する役割を果たします。

6. 中小企業における具体的な適用事例

例えば、ある中小企業が経営難に陥り、再建計画を立案することになったとします。企業が所有する不動産や機械設備の売却を行うと、債権者に対して1億円を返済できると見積もられたとします。この場合、企業の再建計画は少なくとも1億円以上の返済を債権者に提供するものでなければ、債権者にとって清算する方が有利となるため、再建案は受け入れられない可能性があります。

7. まとめ

清算価値保証原則は、企業再生において重要な基準となる原則であり、債権者の利益を守りつつ、企業が持続可能な形で事業を継続できるかを判断する上での指針となります。中小企業の経営者は、この原則を理解し、再生計画を策定する際に清算価値を考慮し、債権者にとっても魅力的な再生案を作ることが求められます。

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