Contents
- 1 ■ 1. まず結論:2025年から“51万円を超えると減額が始まる”
- 2 【在職老齢年金:2025年基準】
- 3 ■ 2. そもそも“総報酬月額相当額”とは何か?
- 4 ■ 3. “基本月額”とは何か?(経営者が勘違いしやすいポイント)
- 5 ● 基本月額とは「厚生年金」の部分だけ
- 6 ■ 4. 経営者・役員に一番影響する“51万円ルール”を図で理解する
- 7 【総報酬月額相当額】+【基本月額】
- 8 合計が 51万円超
- 9 超過額が大きい
- 10 ■ 5. 経営者が見落としがちな 3つの誤解
- 11 ■ 6. 経営者のための「役員報酬 × 年金」最適化戦略
- 12 ■ 7. 2025年以降の制度改正の方向性(経営者が特に注意)
- 13 ■ 8. まとめ:経営者にとって「51万円ルール」は老後資産戦略の基盤
- 14 ◎ 【総報酬月額+基本月額 ≦ 51万円】 → 年金満額
- 15 ◎ 51万円を超えた分の「1/2」 → 年金減額
- 16 ◎ 年金停止は“損ではない”
- 17 ◎ 役員報酬を調整すれば年金は自由に最適化可能
- 18 ◎ 事業所得は計算に入らない(経営者に有利)
- 19 ◎ 相続・事業承継にも影響する重要制度
経営者のための「在職老齢年金:支給停止基準額51万円」完全ガイド
2025年から、在職老齢年金制度における
「支給停止基準額」――“総報酬月額相当額+基本月額” の基準が51万円
となりました。
特に、
-
会社経営者
-
役員
-
自営業から法人化した人
-
65歳以降も働き続ける人
-
不動産収入や事業所得がある人
にとって、この“51万円ルール”は老後資金戦略に直結します。
働きながら年金を受け取ることが当たり前になっている現代では、
「給与や役員報酬をどれだけ受け取ると年金が減るのか?」
を理解することは、会社の資金戦略と同じくらい重要です。
本記事では、2025年時点の最新制度をもとに、
経営者が押さえるべき “在職老齢年金 × 51万円ルール” を
徹底的にわかりやすく整理します。
■ 1. まず結論:2025年から“51万円を超えると減額が始まる”
2025年の在職老齢年金の基準額は次の通りです。
【在職老齢年金:2025年基準】
● 総報酬月額相当額(給与+賞与の月換算)
+
● 基本月額(年金の月額)
> 51万円
→ 超えた分の「1/2」が年金減額
→ 条件によっては全額停止もあり
2024年までの基準額は「47万円」。
2025年より 4万円引き上げ → 51万円 へ。
これにより、
多くの経営者・高齢社員の「年金減額リスク」は緩和されています。
■ 2. そもそも“総報酬月額相当額”とは何か?
経営者が必ず理解しておくべきキーワードが
総報酬月額相当額(総報酬)。
これは、
-
月給
-
役員報酬
-
各種手当
-
賞与(年間を12で割る)
すべてを“月額換算”したもの。
つまり、
社長や役員は賞与を出していなくても、役員報酬が高ければ総報酬も高くなる
という仕組みです。
例:
| 役員報酬 | 賞与 | 総報酬月額相当額 |
|---|---|---|
| 40万円 | 0円 | 40万円 |
| 30万円 | 年間60万円 | 30万円+(60万円÷12)=35万円 |
| 55万円 | 0円 | 55万円(→すでに51万円超) |
経営者は役員報酬調整で年金額が大きく変わることを
理解しておく必要があります。
■ 3. “基本月額”とは何か?(経営者が勘違いしやすいポイント)
基本月額とは、
老齢厚生年金の年額 ÷ 12。
例えば、老齢厚生年金が年間120万円なら:
120万円 ÷ 12 = 10万円(基本月額)
これが計算式に組み込まれます。
ここで重要なのが、
● 基本月額とは「厚生年金」の部分だけ
● 「老齢基礎年金」(国民年金の部分)は含まれない
多くの人が「全部の年金額で計算」と誤解しているため注意。
■ 4. 経営者・役員に一番影響する“51万円ルール”を図で理解する
2025年の在職老齢年金は、
以下のように考えると極めてシンプルです。
【総報酬月額相当額】+【基本月額】
→ 合計が 51万円以内
= 年金は満額受給可能
合計が 51万円超
= 超過額の「1/2」年金カット
超過額が大きい
= 年金がゼロ(支給停止)
例:
役員報酬 40万円
厚生年金の基本月額 8万円
→ 合計 48万円 → 51万円以内 → 年金満額
例:
役員報酬 45万円
基本月額 10万円
合計 55万円 → 4万円超過
→ 4万円 ÷ 2 = 2万円減額
例:
役員報酬 70万円
基本月額 10万円
合計 80万円 → 29万円超過
→ 29万円 ÷ 2 = 14.5万円減額
老齢厚生年金が14万円なら → 全額停止
このように、
役員報酬が高すぎると支給はゼロになります。
■ 5. 経営者が見落としがちな 3つの誤解
経営者の相談を受けていて特に多いのがこの誤解です。
❌ 誤解①:年金が減らされると“損”
→ 正しくは、損ではない。将来の年金額には一切影響しない。
停止された年金が将来の額から引かれるわけではありません。
むしろ、働き続けることで増額されるケースがほとんど。
❌ 誤解②:事業所得・不動産所得も計算に入る
→ 正しくは “給与(役員報酬)と賞与だけ” が対象。
事業所得
不動産所得
配当所得
雑所得
これらは 総報酬に含まれない ため、
高所得者の経営者でも年金受給可能なケースは多い。
❌ 誤解③:65歳以上は減額されない
→ 正しくは、65歳以上も減額される(基準額が51万円に緩和された)。
■ 6. 経営者のための「役員報酬 × 年金」最適化戦略
在職老齢年金の本質は、
「役員報酬の設定が、年金の増減を直接左右する」
という点。
ここでは経営者に特化した最適化戦略を紹介します。
戦略①:年金満額を受けたいなら“51万円以内”に調整
総報酬+基本月額 = 51万円以内
に収めれば減額ゼロ。
→ 報酬を自由に調整できる経営者だからこそ可能。
戦略②:あえて“年金ゼロ”で働く選択も合理的
年金停止になっても
-
受給資格は維持
-
将来の年金額が減るわけではない
-
働き続けることで年金額はむしろ増える
ため、
高報酬で働きつつ70歳以降の増額を狙う戦略も有効。
戦略③:役員報酬+事業所得の2本立てが最強
役員報酬を低めに抑えて事業所得で利益を取ると
-
年金は減らない
-
税金計画がしやすい
-
社会保険負担が減る
というメリットがある。
戦略④:法人売却(M&A)直後の役員報酬設計が重要
事業売却後に役員として残るケースでは
-
売却時のキャピタルゲイン
-
新会社からの報酬
-
年金受給額
を総合調整する必要がある。
■ 7. 2025年以降の制度改正の方向性(経営者が特に注意)
厚労省は次の方向で議論を進めています。
● 支給停止基準額をさらに引き上げる可能性
→ “70歳まで働く社会” を事実上前提にした制度改正。
● 70歳以上の厚生年金加入義務化の議論
→ 役員・経営者は特に影響大。
● 年金増額制度の強化
→ 働けば働くほど年金額が増える仕組みへ。
● 高齢者雇用の拡大
→ 会社経営にも労働力確保として重要。
経営者は毎年制度をアップデートしておく必要がある。
■ 8. まとめ:経営者にとって「51万円ルール」は老後資産戦略の基盤
2025年からの“51万円ルール”は、
働き続ける経営者・役員にとって極めて重要です。
改めて本記事の要点をまとめます。
◎ 【総報酬月額+基本月額 ≦ 51万円】 → 年金満額
◎ 51万円を超えた分の「1/2」 → 年金減額
◎ 年金停止は“損ではない”
◎ 役員報酬を調整すれば年金は自由に最適化可能
◎ 事業所得は計算に入らない(経営者に有利)
◎ 相続・事業承継にも影響する重要制度
働き続ける経営者にとって、
在職老齢年金制度は
“年金をどう最大化するか”
“役員報酬をどう最適化するか”
という経営戦略そのものです。
今後、70歳以上まで働き続けることが当たり前になる時代に向けて、
経営者は自分自身のキャッシュフロー設計を
会社経営と同じレベルで戦略的に考えることが求められます。
ぜひ、この記事を参考に、
「役員報酬 × 年金 × 老後資金 × 相続」
の最適な設計を進めてください。