【採択率33.6%】ものづくり補助金20次公募 結果発表と採択者が今すぐ確認すべき「手引き」ポイント完全解説!

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はじめに:第20次公募の結果速報と全体動向

2025年10月、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(通称:ものづくり補助金)の第20次公募結果が発表されました。
今回の公募は中小企業の“生産性向上”と“賃上げ”の両立を目的とし、制度の成熟期に入った今、採択率はより厳格な審査基準のもとで推移しています。

【結果概要】

区分 申請者数 採択者数 採択率
総計 2,453件 825件 33.6%
製品・サービス高付加価値化枠 2,276件 784件 34.4%
グローバル枠 177件 41件 23.2%

採択率は前回(19次:およそ36%前後)よりやや低下。特にグローバル枠は2割強に留まり、採択ハードルの高さが際立ちました。


1.20次公募の特徴と審査傾向

(1)政策的重点の変化:「生産性+賃上げ」の両立

20次では、従来からの「付加価値額3%増加」「賃金2%以上増加」「最低賃金+30円以上」などの基本要件3項目に加え、政府方針である「賃上げ促進型支援」への明確なシフトが強化されました。

  • 大幅賃上げに取り組む企業には、補助上限100〜1,000万円の上乗せ

  • 最低賃金引き上げに取り組む企業は、補助率を最大2/3まで引上げ

このため、単なる設備導入型申請では不採択リスクが高い傾向にあり、「どのように付加価値と賃金を同時に引き上げるか」を定量的に説明できた事業が優位となりました。


2.採択者が押さえるべき「補助事業の手引き」主要ポイント

20次採択者向けに公表された『補助事業の手引き』には、採択後の流れ・注意事項・報告義務が詳細に示されています。以下に要点を整理します。


(1)交付申請は「採択から2か月以内」

採択後は補助金の交付を受けるための「交付申請」を行う必要があります。
手引きによると、採択日からおおむね2か月以内が提出期限の目安。これを過ぎると採択取消しのリスクがあります。

主な流れ:

  1. 採択通知受領

  2. 交付申請(2か月以内)

  3. 交付決定通知(約1か月)

  4. 補助事業の実施(発注・納品・検収・支払い)

  5. 実績報告・検査

  6. 交付額確定・補助金請求・入金

交付申請時点でスケジュールが遅れている場合、実現可能性を再審査されるため、早期準備が必須です。


(2)補助事業期間内に「発注・納入・支払・実績報告」すべて完了

補助事業期間内に、機械装置等の発注から支払いまで完了していなければなりません。
たとえ納期遅延がメーカー都合であっても、期間内完了が原則です。

ただし、天災・不可抗力等でやむを得ない場合は、「事故等報告書」を提出し、事務局の承認を得た場合のみ延長可能とされています。


(3)補助金の対象経費と精査ポイント

交付申請時、事務局が経費の妥当性を再確認します。
その際、以下のような理由で減額または全額対象外になるケースが増えています。

  • 見積書の不備・同一日付・相見積の形式的作成

  • 相手先が関係会社(親族・同一経営)

  • 仕様書・機能説明の不足

  • 単なる省力化・修繕目的で新製品開発が伴わない内容

したがって、交付申請前にすべての見積書を最新日付・仕様明記・第三者発行で揃えることが重要です。


(4)補助事業完了後も「事業化報告」が必要

採択企業は、補助金受領後も以下の3段階の報告義務があります。

タイミング 内容
実績報告 事業完了後に提出。補助対象経費・支払証憑等を添付
額の確定 事務局による検査・補助金額確定
事業化状況報告 補助金支払い後3年にわたって毎年提出。成果・付加価値・賃上げ達成を報告

特に事業化状況報告で賃金・付加価値要件を未達の場合、補助金返還義務が発生するため、
初年度から計画値を追えるよう会計・給与データの記録体制を整備しておくことが肝要です。


(5)「目的外使用」に注意:設備の転用・貸与は禁止

補助金で取得した設備は「専ら本補助事業のため」に使用する必要があります。
他事業への転用、別会社への貸与、レンタル運用などは目的外使用に該当し、残存簿価分の返還義務が発生します。


3.審査で評価された事業計画の傾向(20次採択傾向分析)

今回の採択案件を分析すると、採択企業に共通する3つの特徴が浮かび上がります。

① 技術的優位性と市場性を両立した計画

単なる設備更新ではなく、「自社技術を用いた新製品開発」や「既存顧客層以外の市場開拓」を明確にした事業が多く採択。
例)BtoB製造業での「試作機→量産化ライン導入」や、IT企業での「自社サービスのSaaS転換」など。

② 賃上げ・人材投資との整合性

賃上げ・人材育成の実行計画を“給与支給総額ベース”で定量化していた企業が高評価。
「補助設備導入による利益増=人件費・報酬還元」を論理的に説明する構成が重要でした。

③ ESG・地域貢献の要素を盛り込んだ事業

地域素材の再活用、脱炭素・カーボンニュートラル対応、障がい者雇用・多様性推進を含む計画が政策加点で優遇される傾向が継続しています。


4.20次採択者が今後準備すべき5つの実務チェックリスト

項目 内容 注意点
1 交付申請 採択発表から2か月以内。見積書・契約書・仕様書を完備。
2 補助事業実施 発注〜支払完了までを期間内に。納期遅延の際は事故等報告。
3 実績報告 経費証憑を電子データで整理。支払日と領収日を一致させる。
4 確定検査 不備があると支払遅延。必ず事務局の検査完了を確認。
5 事業化状況報告 年1回×3年。賃金・付加価値要件を数値で管理。

5.21次・22次公募への接続ポイント(今後の展望)

20次の結果を踏まえ、22次(2025年10月24日公募開始)では審査・要件がさらに強化されています。
特に注目すべきは次の3点です。

  1. 新加点項目②「人的資本経営の取組」が22次から追加。

  2. グローバル枠の定義明確化(海外売上比率・調査書類必須)。

  3. 不適切コンサル排除方針の強化(高額成功報酬型の警告明記)。

つまり、今後は「自社経営の変革ストーリーを持つ事業者」しか採択されにくくなる構造です。
単なる設備導入ではなく、企業文化・人材・地域連携まで含む中長期計画を描く必要があります。


まとめ:20次採択企業が今から行うべき3つの行動

  1. 交付申請を最優先で準備する
     採択取消し防止のため、2か月以内にすべての見積・契約を整える。

  2. 賃上げ・付加価値目標を「経営計画書」に落とし込む
     給与支給総額・営業利益・人件費・減価償却費を毎期追跡。

  3. 事業化状況報告を見据えたKPI管理体制を構築
     労務・経理・経営が一体でデータを記録する体制づくりを。

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