【完全保存版】ものづくり補助金20次公募 採択者が今すぐ確認すべき「交付申請」手続きと返還リスク対策

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はじめに:採択=ゴールではない

2025年10月27日、第20次ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)の採択結果が発表されました。
採択率は全体で約33.6%(申請2,453件中825件採択)と、依然として高い競争率です。

しかし、採択はあくまでスタートラインに過ぎません。
採択後に行う「交付申請」「実績報告」「事業化状況報告」などの手続きを正しく理解し、期日を守り、
さらには「付加価値」「賃上げ」「最低賃金+30円」といった返還要件を確実に満たすことが、
補助金を本当に“自社の成長資金”として活かすためのカギになります。

本記事では、採択後に必ず行うべき手続きと注意点、そして将来的に補助金を返還しないために必要な実務対応を、
公式「補助事業の手引き(20次締切)」および関連資料をもとにわかりやすく解説します。


第1章:交付申請とは? ― 採択後最初の関門

1. 「交付申請」とは

採択された事業者が、補助金の交付を正式に受けるために提出する申請書類です。
採択=補助金決定ではなく、「交付申請」を行い、交付決定通知書を受けて初めて補助事業が開始可能となります。

2. 提出期限とスケジュール

手引きでは、原則として

採択発表日から2か月以内に交付申請を行うこと
と明記されています。

交付申請から交付決定までは約1か月程度を要するため、申請準備が遅れると、
実施期間が短くなり事業が完了できず返還リスクが生じます。

▼標準スケジュール

手続き 目安期間 内容
採択発表 2025年10月27日 補助金交付候補者決定
交付申請提出 ~12月下旬

見積・機械装置パンフレット・仕様書等を添付して申請

交付決定 ~2026年1月頃 決定通知書発行(ここから事業開始)
事業実施 ~2026年秋頃 発注・納品・検収・支払・完了報告
実績報告 事業完了後 支払証憑と共に実績提出
補助金確定・支払 約1か月後 補助金額確定後に振込

第2章:交付申請時に必要な主な書類と注意点

1. 必要書類一覧

手引きによると、交付申請では以下の書類を提出する必要があります。

書類名 内容
交付申請書 作成・入力が必要
見積書(複数)

見積依頼書

交付申請時に有効な、原則2社以上の相見積り。中古品は3社。

仕様・数量・単価明記

相見積もりが取れない合理的理由がある場合、業者選定理由書

カタログ・仕様書 機械・ソフトウェア等の機能を明確化
法人:履歴事項証明書 交付申請書提出日より過去3ヶ月以内に発行されたもの

個人事業主:直近の確定申告書(第1表)

 

2. よくある不備とリスク

  • 仕様が簡略すぎる → 実態確認ができない

  • 取引先が親族・グループ企業 → 不正取引とみなされる可能性

  • 補助金額を上回る申請 → 自動的に減額

この段階での不備は後の交付遅延・減額に直結するため、
早期に支援機関または事務局サポートに確認することが最重要です。


第3章:補助事業の実施と支払に関するルール

1. 期間内完了が原則

補助事業は、交付決定日から最長10か月以内(グローバル枠は12か月以内)に、
発注・納品・検収・支払・実績報告のすべてを完了させる必要があります。

  • 発注済みでも支払いが未完了の場合は対象外

  • クレジット払いやリース契約も実質支払い完了でなければ不可

  • 分割払い・先行納品も原則NG(明確な納期・支払証憑が必要)

2. 納期遅延・不測事態への対応

天災やメーカー遅延など、やむを得ない事情で期間内完了が困難な場合は、

「事故等報告書」を提出し、事務局の承認を得た場合のみ延長可能。

ただし承認なしの延長は交付取消・全額返還対象です。


第4章:実績報告と補助金の確定

1. 実績報告の目的

補助金は“成果払い”制度。実施後に提出する実績報告で、

事業内容・経費支出・効果(成果物)が公募要領どおり実現したことを証明しなければなりません。

2. 実績報告に必要な主な書類

  • 実績報告書(様式あり)

  • 領収書・振込明細・請求書など支払証憑(発注書、注文書などの様式あり)

  • 導入設備の写真(設置状況が分かるもの)

  • 実施結果概要(付加価値向上・売上増・雇用への影響など)

3. 「額の確定」とは

事務局による検査の結果、支出内容が全て認められた場合に「補助金額」が確定します。
不備があれば一部経費が不認定・減額されるため、証憑は確実に保管しましょう。


第5章:事業化状況報告と返還要件 ― 5年間の“アフターフォロー”

補助金の交付が完了しても、補助金を返還しないための義務が残ります。
それが「事業化状況報告」です。

1. 提出期間と回数

補助事業完了後、5年間にわたって毎年度提出します。
内容は次の通りです。

項目 内容
付加価値額 「営業利益+人件費+減価償却費」が基準年度比で3%以上の年平均成長
賃金 給与支給総額2%以上、または1人あたり給与が都道府県最低賃金の年平均成長率以上
最低賃金 事業所内最低賃金を地域最低賃金より+30円以上に維持

2. 未達成時の返還ルール

これら要件を達成できない場合、補助金の全部または一部返還が求められます。

返還対象の例

  • 計画時の賃金増加目標を未達

  • 最低賃金+30円を維持できなかった

  • 設備を他用途に転用(目的外使用)

  • 報告書未提出・虚偽報告

一方で、経済環境変化や災害等により不達が不可避な場合は返還免除となることもあります。
その際は、客観的資料を添付し「免除申請」を行う必要があります。


第6章:目的外使用・財産処分制限にも注意

補助金で取得した設備・ソフトウェア等は、原則として本補助事業専用です。
次の行為はすべて「目的外使用」となり、残存簿価相当額の返還対象です。

  • 他事業・他社への転用・貸与

  • 補助金で購入した機械を第三者へリース

  • 廃棄・売却を無断で実施

もし、売却や廃棄を行う場合は、残存簿価または時価に基づき国庫納付を行う必要があります。


第7章:採択後にトラブルを防ぐためのチェックリスト

項目 対応状況 補足
採択後すぐに交付申請準備を開始

2か月以内が期限。見積・契約を先に固める

電子申請システムから交付申請書をダウンロード

見積書2社以上・仕様詳細を明記 形式的な相見積は不認定
支払証憑は銀行振込を原則とする 現金払いや手形は原則不可
実績報告書のドラフトを早期作成 途中経過を随時整理しておく
賃金・付加価値の計算式を理解 営業利益+人件費+減価償却費=付加価値額
事業化報告を年次計画に組み込む 忘れると補助金返還リスク

第8章:採択後こそ問われる「経営力」

採択された事業者が次に取り組むべきは、
「補助金をどう使うか」よりも「補助事業を経営成長の起点にするか」です。

この補助金は単なる資金支援ではなく、
企業が「付加価値を上げ」「従業員に還元し」「地域経済を活性化する」ための制度です。

そのためには、

  • 経営計画書に沿ったKPIモニタリング

  • 賃金・利益・生産性の定期レビュー

  • 従業員への賃上げ表明と共有

  • デジタル化・省力化・人材育成の連動が欠かせません。

採択は終点ではなく「挑戦の始まり」です。
この制度を使いこなせるかどうかが、中小企業の未来の差を決めるのです。


まとめ:採択後3か月が勝負

ものづくり補助金20次公募の採択を勝ち取った今、まず最初の3か月が、今後の成否を分けます。

  1. 交付申請を期限内に完了させる

  2. 見積・契約書類の整合性を徹底する

  3. 事業完了・実績報告を期間内に完了させる

  4. 3年間の事業化報告と賃上げ実現を確実に

この4ステップを確実にこなせば、
ものづくり補助金は「単発の補助」ではなく、「企業の進化を後押しする成長エンジン」になります。

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