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はじめに
2025年に新しくスタートした「新事業進出補助金」。既存の事業とは異なる分野に挑戦する中小企業の取り組みを支援する制度として大きな注目を集めています。
その第1回公募(1次公募)の採択結果が先日公表されました。本記事では、そのデータと採択案件一覧をもとに、採択率や業種別の傾向、採択された事業の特徴を徹底分析します。これから申請を検討している方にとって、第2回以降で採択されるためのヒントとなる内容です。
1. 新事業進出補助金1次公募の全体結果
今回の1次公募の結果は以下の通りです。
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応募件数:3,006件
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採択件数:1,118件
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採択率:約37.2%
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うち関税加点対象:590件
採択率は4割弱とやや厳しめ。補助金全般で見ても比較的競争率が高く、計画の新規性や付加価値性が重視された結果といえます。
2. 業種別の傾向
応募・採択の件数を業種別に見ると、以下の傾向が浮かび上がります。
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製造業が最も多く、全体の中心を占める
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卸売業・小売業、建設業がそれに続く
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情報通信業、サービス業も一定数採択
特に製造業では、既存技術を活かしつつ新市場に参入する計画や、設備投資による新商品開発が目立ちました。一方でサービス業やIT分野の採択事例も多く、業種の幅広さが特徴です。
3. 地域別の傾向
地域別に見ると、大都市圏が優位な傾向がはっきり表れています。
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東京都:応募571件 → 採択199件(最多)
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大阪府:応募313件 → 採択118件
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愛知県:応募208件 → 採択83件
地方からも採択は出ていますが、福岡・北海道・静岡・京都・兵庫など、比較的産業基盤や観光資源のある地域に集中。都市部中心の傾向がある一方で、地方では「地域資源活用型事業」や「観光関連事業」が評価されやすい傾向が見られました。
4. 補助金申請額の傾向
申請金額別に見ると以下のような分布でした。
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2,000万~2,500万円未満が最も多い
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次いで 1,000万~1,500万円未満、500万~1,000万円未満
つまり、中小企業が実施する「中規模の設備投資・商品開発プロジェクト」が中心。大規模投資よりも、リスクを抑えた現実的なプランが目立ちました。
5. 採択案件の特徴
採択された事例を一覧から分析すると、以下の4つのキーワードが浮かび上がります。
(1) AI・IT活用型事業
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AIナレッジ基盤開発
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ノーコードAIチャットSaaSの開発
デジタル技術を用いた新サービスや業務効率化が高く評価されています。
(2) 健康・食関連の高付加価値商品
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腸活用ペットフード
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高付加価値野菜の差別化流通
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機能性食品の新商品開発
健康志向や食の高付加価値化は、幅広い分野で採択が見られました。
(3) 観光・地域資源活用
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クラフトビール醸造事業
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古民家再生宿泊施設
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地域観光モデルの創出
地域資源を活かした観光・宿泊・飲食関連事業も多く採択されています。
(4) ものづくりの高度化・新分野進出
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精密加工機の導入による新市場参入
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光学機械部品分野への展開
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環境対応部材の製造
既存のものづくり技術をベースに、新市場へ進出する事例が目立ちました。
6. 第2回公募以降に向けたポイント
1次公募の結果から、第2回以降で採択を狙うためには以下が重要です。
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AI・DX、健康・食、観光・地域資源活用のテーマは採択実績が多く有望
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都市部は競争が激しいため、地方企業は「地域課題解決」を前面に出すと強みになる
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補助額2,000万円前後の中規模投資が主流であり、過大な投資計画よりも堅実な計画が評価されやすい
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新市場性と高付加価値性を明確に示すことが必須
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新しい顧客層をターゲットにできているか
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既存商品との差別化・高付加価値化の根拠が明確か
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まとめ
新事業進出補助金の1次公募は、採択率37.2%と競争率が高い結果となりました。採択案件の多くは、AI・DX、健康・食、観光・地域資源活用、ものづくりの高度化といったテーマに集中しています。
第2回以降で採択を狙うには、自社の強みを活かしつつ、新市場への進出性と高付加価値性を客観的データで裏付けることが鍵となります。都市部は競争が激しいため、地方企業は地域課題や観光資源を活かした事業で勝負するのも有効です。
本記事を参考に、ぜひ自社の事業計画をブラッシュアップし、次回の採択に向けた準備を進めてください。
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