はじめに
中小企業にとって「人材の確保・定着」は大きな経営課題の一つです。採用コストの上昇や離職率の高さは、慢性的な人手不足を引き起こし、企業成長の足かせになります。こうした課題に対応するために国が用意している支援制度の一つが「人材確保等支援助成金」です。本記事では、2025年に利用可能な人材確保等支援助成金の内容や対象、具体的な活用事例、申請の流れを整理し、中小企業がどのように活用できるかを詳しく解説します。
人材確保等支援助成金の概要
人材確保等支援助成金は、事業主が雇用管理制度や業務負担軽減機器を導入し、離職率の低下などの成果を達成した場合に支給される助成金です。
支給額は最大230万円、賃金要件(従業員の賃上げ5%以上)を満たした場合は最大287.5万円が受給可能です。
対象となる取り組み
助成金を受けるには、次のいずれかの取り組みが必要です。
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雇用管理制度の導入
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賃金規定制度(賃金表の整備)
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諸手当等制度(資格手当など)
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人事評価制度
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職場活性化制度(メンター制度等)
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健康づくり制度(人間ドックの実施)
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業務負担軽減機器の導入
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従業員の業務負担を軽減できる機器・設備(例:電動アシスト台車、小型コンプレッサーなど)
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助成額の詳細
取り組みの内容ごとに助成額が決まっています。
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賃金規定制度:40万円(賃金要件ありで50万円)
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諸手当等制度:40万円(同50万円)
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人事評価制度:40万円(同50万円)
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職場活性化制度:20万円(同25万円)
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健康づくり制度:20万円(同25万円)
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業務負担軽減機器等:対象経費の1/2(上限150万円、賃金要件ありで187.5万円)
複数の取り組みを組み合わせることで、支給額は合算され、最大で287.5万円となります。
活用事例
具体的にどのような組み合わせがあるのか、例を挙げます。
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賃金要件なしの場合
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諸手当等制度(40万円)+職場活性化制度(20万円)+健康づくり制度(20万円)
→ 合計80万円
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賃金要件ありの場合
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賃金規定制度(50万円)+諸手当等制度(50万円)+業務負担軽減機器(187.5万円)
→ 合計287.5万円
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このように、制度と機器の組み合わせによって助成額を最大化できる点が大きな魅力です。
支給までの流れ
人材確保等支援助成金は、次の流れで進めます。
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計画策定
雇用管理制度等整備計画を作成し、都道府県労働局に提出・認定を受けます。 -
導入・実施
計画に基づき、制度や機器を導入します。 -
離職率の低下目標達成
計画期間終了後12か月間で離職率が目標値を達成している必要があります。 -
助成金申請・支給
最大230万円、または賃金要件を満たせば287.5万円が支給されます。
制度を活用するメリット
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人材定着率の向上
評価制度や手当の導入により、社員のモチベーションアップにつながる。 -
労働環境の改善
業務負担軽減機器の導入で、従業員の作業効率や安全性が向上。 -
採用力の強化
「働きやすい会社」としてのブランドイメージが向上し、人材獲得にも有利。 -
経営リスクの低減
助成金を活用することで、制度導入や設備投資の費用負担を軽減。
注意点
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助成金は「申請すれば必ずもらえる」ものではなく、離職率の改善実績などが必須条件です。
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賃金要件を満たすには、従業員の賃金を5%以上引き上げる必要があります。
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申請には専門的な知識が求められるため、社会保険労務士や認定支援機関に相談するのが現実的です。
まとめ
「人材確保等支援助成金」は、離職率低下や人材定着を実現したい中小企業にとって大きな味方です。最大287.5万円という助成額は、単なる補助金の枠を超えて、会社の人事制度や職場環境を一新するための後押しとなります。
採用・人材育成・評価制度・職場改善を同時に進めたい企業は、ぜひこの助成金を積極的に活用してみてください。
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