~アラームボックス調査から見える顧客対応の課題と改善策~
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はじめに
SNSや口コミサイトの普及によって、消費者の声はかつてないほど可視化されるようになりました。特に「悪評」や「クレーム」は一気に拡散し、企業のブランドイメージや売上に直結する重大なリスク要因です。2025年上半期、AI与信管理サービスを提供するアラームボックス株式会社が、インターネット上に投稿された口コミを分析し「悪評・クレームが多い業種ランキングTOP10」を発表しました。本記事ではその調査結果を紐解きつつ、各業種が直面している課題と改善のヒントを整理していきます。
調査概要と背景
調査対象はアラームボックスがモニタリングしていた 11,230社。期間は 2025年1月1日~6月30日 にSNSやネット上で発信された口コミが対象です。
SNSを情報収集に活用している人は 84%超 とされており、ネット上の評判は企業にとって無視できない情報資産です。悪評が積み重なれば、取引先や金融機関からの信用にも影響します。そのため、今回の調査は単なる「クレームランキング」ではなく、レピュテーションマネジメントの観点からも大変示唆に富む結果といえるでしょう。
全体傾向
ランキングの上位には 生活密着型のサービス業 が並びました。
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ECや通信:問い合わせや配送遅延などの「対応の遅さ」
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医療や飲食:接客態度や説明不足
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宿泊業:人手不足に伴う清掃やオペレーション不備
特に特徴的だったのは「連絡がつかない・返信がない」といった不満が多い点です。商品やサービスそのものの質以上に、企業の対応力が信頼を左右していることが明らかになりました。
業種別ランキングTOP10
第1位:無店舗小売業(EC)
平均悪評数:7.33件/社
EC業界は便利さと引き換えに「見えない不安」が顧客に残ります。
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配送が遅れる
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返品・交換の対応が遅い
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問い合わせても返信がない
これらはすべて「注文後の不透明さ」に起因しています。顧客は商品が届くまでの間、企業を信頼するしかありません。その不安が解消されないと、すぐに悪評としてネットに書き込まれるのです。
第2位:通信業
平均悪評数:4.86件/社
携帯キャリアやネット回線業者が対象です。
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電話がつながらない
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解約・契約変更手続きが不透明
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契約内容と請求が一致しない
通信はライフラインに近いサービスのため、少しの不備でもストレスが大きくなりやすい業界です。オンラインサポートの導入が進む一方で、「人に繋がらない不満」が爆発している状況が浮き彫りになりました。
第3位:各種商品小売業
平均悪評数:4.63件/社
百貨店や総合スーパーが該当します。
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店員の態度が高圧的
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包装が雑、箱が潰れていた
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オンラインショップで返答がない
特に「ブランドへの期待」と「現実の接客品質」とのギャップが悪評に繋がる傾向があります。百貨店ブランドの信用を失うと、顧客離れは一気に進みかねません。
第4位:医療業
平均悪評数:4.35件/社
医療機関は本来「信頼」が基盤ですが、不満の声は少なくありません。
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美容クリニック:施術が雑、予約が取れない
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一般病院:受付が高圧的、説明が不足
「医療はサービス業ではない」という意識が残る施設では、患者体験に不満が集中しやすいことが伺えます。
第5位:飲食店
平均悪評数:4.08件/社
料理そのものよりも オペレーションの不備 が目立ちます。
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提供が遅い
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注文が通っていない
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接客態度に不満
SNSで「まずかった」「店員が冷たかった」と書かれると一瞬で拡散し、集客に直結します。
第6位:宿泊業
平均悪評数:3.78件/社
観光需要が回復する一方で、人手不足が深刻です。
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設備の老朽化
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清掃不備
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チェックインや朝食会場の混雑
オーバーツーリズムによるオペレーション不足が、悪評の温床になっています。
第7位:放送業
平均悪評数:3.58件/社
ケーブルテレビ事業者が中心。
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解約がスムーズにできない
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契約説明が不十分
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工事や連絡が遅れる
放送業は「解約のしにくさ」が特に顕著で、利用者の不満を強めています。
第8位:その他の小売業
平均悪評数:3.55件/社
書店・ホビー・スポーツ用品・化粧品など多様な小売。
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EC:不良品や梱包不備、返品遅延
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店舗:説明不足、スタッフの態度が冷たい
専門性が期待される業種だからこそ、知識不足の接客が悪評につながりやすい傾向があります。
第9位:飲食料品小売業
平均悪評数:3.45件/社
コンビニ・スーパー・健康食品販売などが対象。
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EC:写真と違う商品が届く、発送連絡がない
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店舗:レジ対応や説明不足
日常利用が多いため、顧客は細かい点にも敏感です。小さな不満が大量にSNSへ流れ込む構造になっています。
第10位:持ち帰り・配達飲食サービス
平均悪評数:3.44件/社
フードデリバリーや配食サービスに多い不満。
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注文が勝手にキャンセルされる
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返金されない
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配達遅延、問い合わせに返信がない
非対面のやり取りが中心であるため、フォロー体制の弱さが顧客不満に直結しています。
総括:悪評に潜む共通要因
今回の調査結果から浮かび上がるキーワードは以下の3つです。
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対応の遅さ
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説明不足
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接客態度
背景には 人手不足 や 短期バイトの増加 もあり、現場で十分な教育が行き届いていない現実があると考えられます。
企業が取るべき改善策
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顧客対応の透明化:問い合わせへの即時返信、自動通知、状況の可視化
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接客教育の強化:短期スタッフにも最低限の接客研修を実施
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レピュテーション管理:SNS上の声を定期的にモニタリングし、早期警告システムとして活用
悪評は「顧客が離れる前のサイン」です。適切に拾い上げ、改善に結び付けられる企業こそが、競争の激しい市場で生き残ることができるでしょう。
まとめ
2025年上半期の調査で、最も悪評が多かったのは 無店舗小売業(EC) でした。続いて通信業、各種商品小売業、医療業、飲食店といった生活に直結する業種が並んでいます。背景には「顧客対応の遅さ」や「説明不足」、「接客態度」など、いずれも“人と人の接点”に起因する問題が見られました。
レピュテーションマネジメントはもはや大企業だけの課題ではなく、あらゆる中小企業にとっても避けて通れないテーマです。悪評を恐れるのではなく、“改善のチャンス”として活かせる企業こそ、次の時代に選ばれる存在になるのではないでしょうか。
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