会社を任せられる人材が育たない理由──成長企業が陥る『経営者ワンオペ』の罠

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忙しくなっても「経営を任せられない」悩み

「社員にもっと任せたいけれど、結局自分でやった方が早い」 多くの成長企業の経営者から、こんな言葉を耳にします。

事業は拡大し、社員も増えた。でも、経営者の負荷は一向に軽くならない。むしろ年々重くなっている。これは「経営者ワンオペ状態」に陥っているサインです。

なぜ、任せられる人材が育たないのか?

第一に、創業期の「できる人が何でもやる」体制が、そのままスライドしているケースが多いこと。

創業時はスピードと柔軟性が命。それゆえ、属人的な判断や即断即決が功を奏します。しかし組織が一定規模を超えると、このやり方は限界を迎えます。

第二に、管理職層が「プレイヤーの延長」になっていること。

自ら手を動かしながら、部下のマネジメントも行うという二重負荷。これでは人を育てる余裕がありません。結果として、管理職の役割を果たせず、「上が詰まる」状態になります。

第三に、人材育成や評価の仕組みが整備されていないこと。

どのような力が求められているのか、どのように評価・昇格されるのかが明示されていないと、社員は育ちようがありません。放任と任せることは違います。

では、どうすればよいか。

まずは、管理職層を「任せられる立場」として再定義し、育成の対象として明確に位置づけることです。時間をかけ、対話を重ね、育成の仕組みをつくる必要があります。

次に、経営者自身が「育成に手をかけること」を投資と捉えること。今すぐの成果は出なくとも、中長期で見れば大きな経営資源となります。

最後に、必要に応じて外部の専門家を使うこと。内部だけでは見えない視点やノウハウを得ることで、組織変革のスピードを高められます。

経営は、次のステージに進むと「一人で頑張る」では立ち行かなくなります。ワンオペ経営から脱却し、信頼できる仲間に任せていくこと。それが、持続的成長への第一歩です。

実際、組織が拡大するフェーズでは「信頼して任せる」ための土台づくりが最重要になります。これは人に対する信頼だけでなく、仕組みによる支えでもあります。組織運営の基本ルール、意思決定プロセスの明文化、会議の仕方一つをとっても「経営者の頭の中」を言語化し、共有することが問われます。

ある企業では、創業10年目で初めてマネージャー制度を導入し、経営会議を定例化しました。最初は戸惑いもありましたが、「経営の視点で話す」習慣が管理職に根づくことで、徐々に責任の幅が広がり、経営者の判断業務が半減。組織の意思決定がスピードアップし、売上だけでなく、社員の定着率も改善しました。

人は、環境が変われば育ち方も変わります。そして育成には「時間」と「設計図」が必要です。 急成長してきた企業こそ、一度立ち止まって「このままの延長で10年先も成長できるか?」を考えるべきです。そこには必ず、経営を共に担う「仲間づくり」が必要となるはずです。

自分がいなくても回る組織。それは経営者にとっての理想であり、企業にとっての本当の競争力になります。今こそ、育成と仕組みづくりへの第一歩を踏み出しましょう。

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