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2024年度、4つの業種で倒産・廃業が過去最多を更新
2024年度、米屋・出版社・映像制作会社・道路貨物運送業の4業種で、過去最多の倒産・廃業が記録されました。いずれも日本経済や日常生活に密接な業種ですが、それぞれ異なる構造的課題を抱えながらも、共通して以下のような経営難に陥っています。
(下記データの引用は、帝国データバンク社、東京商工リサーチ社より引用しました)
【1】米屋:「売る米がない」供給難と価格高騰が直撃
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2024年度、米屋の廃業は88件。2年連続増加し過去最多を更新。
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天候不順・農家の減少・病害で米の供給不足。
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安価な銘柄の仕入れ価格が5年で2倍に。仕入価格上昇を販売価格に転嫁できず、経営悪化。
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赤字・減益合わせて業者の約47.6%が業績悪化。
対策:
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複数の仕入先を確保し、販売先との信頼を強化。
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ECや定期便など安定供給の仕組みを導入。
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地域ブランド米や無農薬米など高付加価値路線への転換。
【2】出版社:ペーパレス時代の淘汰と原価高騰
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2024年度の出版社倒産は31件。前年度比1.8倍。
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電子書籍やSNSメディアの台頭により紙媒体需要が低下。
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紙やインク代の高騰で製造コスト増加。赤字は36.2%に達し過去20年で最大。
対策:
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DX化の徹底とコンテンツのデジタル配信強化。
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小ロット印刷やオンデマンド出版でコストの最適化。
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出版業からコンテンツ制作業への業態転換。
【3】映像制作会社:予算縮小・過当競争で小規模会社が脱落
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映像制作関連の倒産は58件。前年度の1.5倍で15年ぶり高水準。
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YouTubeやSNS動画の普及により、予算削減と内製化が進行。
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制作会社間の価格競争が激化し、小規模企業の体力が持たず。
対策:
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特定ジャンルへの特化、企画力・提案力の強化で差別化。
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企業のインハウス制作支援や、ライブ配信技術への対応。
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サブスク型映像コンテンツ提供や自社メディア立ち上げによる収益源の多角化。
【4】道路貨物運送業:価格転嫁と人材確保の壁
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倒産は353件で14年ぶりに350件超え。
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「人手不足」関連倒産は過去最多の77件(前年比1.6倍)。
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「人件費高騰」「後継者難」が深刻。求人難や従業員退職も増加。
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「物価高」倒産は減少したが、価格転嫁率は物流業で32.6%にとどまり苦境が続く。
対策:
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労働環境改善による人材定着、外国人材の活用も視野に。
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多重下請け構造の是正と長期契約による安定収益確保。
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デジタル物流管理による業務効率化・コスト削減。
共通の課題と、今後の経営の鍵
これらの業種が共通して抱えるのは「価格転嫁の難しさ」と「人材不足」。構造的な変化に早期対応し、事業モデルを変革できるかどうかが今後の命運を分けます。
中小企業や個人経営の事業者こそ、今こそ「選ばれる事業」への転換が必要です。
経営者が取るべき具体的アクション
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環境変化を前提にした経営判断を行う
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固定費の見直しと利益構造の再設計
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販路と顧客接点の多角化(オンライン・オフラインの融合)
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DX、IT導入による業務効率化・労働生産性向上
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資金繰りと財務基盤の見直し
事業再生のヒントは“いまの数字”と“次の変化”にあります。