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■ はじめに
2024年度の全国企業倒産件数がついに1万件を突破しました。
これは実に11年ぶりの高水準であり、今後の中小企業経営にとって大きな警鐘を鳴らす出来事です。
特に、人手不足による倒産は過去最多を更新し、労働集約型の業種を中心に深刻な打撃を受けています。
この記事では、最新の倒産動向の要点を整理しつつ、経営者が今すぐ取るべき対策についても解説します。
■ 倒産件数が11年ぶりに1万件を突破
帝国データバンクと東京商工リサーチの発表によると、
2024年度の企業倒産は以下のとおりです。
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倒産件数:10,144件(前年比+12.0%)
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負債総額:2兆3,738億円(前年比-3.6%)
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小規模倒産(1億円未満):全体の75.4%を占める
大半が中小・零細企業による「販売不振型」の倒産です。
また、1億〜50億円未満の中堅規模の倒産も増加傾向にあり、資金繰りの困難さが広がっています。
■ 人手不足倒産が過去最多を更新
2024年度、人材難に起因する倒産は過去最多の350件に達しました。
特に影響が大きかったのは以下の業種です。
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建設業:111件(初の100件超え)
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物流業:42件(2024年問題の影響が継続)
原因別では以下の通りです。
原因 | 件数(前年比) |
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求人難 | 122件(+44件) |
人件費高騰 | 110件(+45件) |
従業員の退職 | 77件(+28件) |
大企業の賃上げ競争や「初任給30万円時代」の到来によって、
小規模事業者は人材確保で完全に後手に回っています。
■ 「価格転嫁の壁」と賃上げ圧力
人手を確保するためには賃上げが必要ですが、それを売価に反映させるのは容易ではありません。
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全業種平均の価格転嫁率:40.6%
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建設業:39.6%
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物流業:32.6%
「モノの値上がり」は受け入れられても、
「人件費の転嫁」は理解を得にくいという声も多く、
結果として“薄利で疲弊する”中小企業が続出しています。
■ 地域・業種ごとの倒産動向
● 地域別では…
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九州(+30.5%)や近畿(30カ月連続増)など、西日本での増加が目立ちます。
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一方、東京や北海道では減少傾向も見られます。
● 業種別では…
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サービス業:239件(+18.3%)
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特に「広告・調査・情報サービス」の倒産が急増。
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不動産業:31件(+10.7%)(4カ月連続増加)
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建設業・小売業は微減
■ 今後の見通しと経営者が取るべき対策
今後も「物価高」「金利上昇」「人材獲得競争」などの外部環境は企業経営に重くのしかかってきます。
特に“人手不足”は構造的な問題であり、資金が潤沢でない企業ほど苦しくなることが予想されます。
▶ 生き残りのための3つの対策
① 人材戦略を再構築せよ
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リファラル採用、シニア活用、副業人材の受け入れ
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業務負担の見直しによる定着率向上
② 「賃上げ分」の価格転嫁方法を工夫せよ
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「人への投資」の必要性を数値で示す
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賃上げ=顧客満足度の向上と結びつける説明
③ 資金繰りとDXへの投資を同時に進めよ
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低金利からの借り換え・補助金の活用
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デジタル化や自動化で人手に頼らない体制づくり
■ まとめ:中小企業経営は“変化対応力”が命綱
倒産件数の増加は、単なる経済の波というよりも、構造変化に適応できたか否かの結果です。
変化を恐れず、挑戦を続ける企業が次の時代に生き残ります。
「勝ち残る会社」は、“儲かる会社”ではなく、“変われる会社”です。