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事業承継やM&Aにおいて、資産や株式の譲渡により発生する「譲渡所得」にかかる金額計算は、所得税に直結するため極めて重要です。譲渡所得の計算方法や税制上のポイント、また節税対策について詳しく解説し、譲渡所得計算の基礎知識を深めていきます。
譲渡所得とは?
譲渡所得は、個人または法人が保有する資産を譲渡する際に生じた売却益から取得費用や譲渡費用などを差し引いて計算される所得のことです。主に、土地や建物、株式、ゴルフ会員権といった資産に対して適用され、売却益が発生する場合には所得税が課されます。事業承継やM&Aにおいては、企業の株式や事業資産の譲渡に伴い、譲渡所得が発生することが一般的です。
譲渡所得の金額計算の基本式
譲渡所得の金額を計算する際には、以下の基本式が使用されます。
譲渡所得=譲渡価格−(取得費+譲渡費用)
- 譲渡価格: 資産を譲渡する際に得られた金額
- 取得費: 資産を取得する際にかかった費用(購入価格、手数料など)取得費が算定できない場合は5%分を概算取得費として参入することも可能です。
- 譲渡費用: 資産の譲渡にかかった費用(仲介手数料、契約書の作成費用など)
計算例
譲渡所得の具体的な計算例を確認してみましょう。
- 譲渡価格: 1億円
- 取得費: 5,000万円
- 譲渡費用: 500万円
上記の条件で譲渡所得を計算すると、次のようになります。
譲渡所得=1億円−(5,000万円+500万円)=4,500万円譲渡所得 = 1億円 - (5,000万円 + 500万円) = 4,500万円
この場合、譲渡所得は4,500万円となり、この所得に対して税率が適用されます。
譲渡所得の税率と税額計算
譲渡所得にかかる税率は、資産の種類や保有期間によって異なります。特に、長期譲渡所得と短期譲渡所得の区分が重要です。
- 短期譲渡所得(保有期間5年以内)
- 税率: 所得税30% + 住民税9%
- 長期譲渡所得(保有期間5年超)
- 税率: 所得税15% + 住民税5%
このように、長期譲渡所得には低い税率が適用されるため、事業承継やM&Aにおいては、譲渡のタイミングを調整することで税負担を軽減することができます。
譲渡所得控除と特例
譲渡所得には、一定の控除や特例が設けられており、税負担を軽減するために活用可能です。以下に代表的な特例を挙げます。
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居住用財産の3000万円特別控除
自宅を譲渡した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除する特例です。事業承継やM&Aには直接関係しないものの、個人の資産譲渡時には有効です。 -
特定事業用資産の特別控除
中小企業が事業承継に伴い、事業用資産を譲渡した際に一定の控除が受けられる特例です。 -
相続税の取得費加算の特例
相続または遺贈により取得した資産を譲渡する際、相続税の一部を取得費に加算できる特例です。