相続税の課税対象には、上場株式の評価額も含まれます。上場株式を保有している場合、その価値を適正に評価することは相続における重要な要素です。本記事では、上場株式の相続税評価額の計算方法や、それが事業承継やM&Aにどのように影響するのかについて解説します。
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上場株式の相続税評価額の基本
上場株式とは証券取引所で取引される株式のことです。株価は日々変動するため、相続税の課税対象となる評価額も変わります。評価額を算出するためには、国税庁が定める基準を理解することが重要です。相続税法では、相続が発生した日の「時価」を基に評価しますが、具体的な評価方法には複数の選択肢が用意されています。
上場株式の評価方法
上場株式の相続税評価額は、以下の3つの価格を比較して最も低いものが採用されます:
- 課税時期の終値(相続発生日の終値)
- 相続発生日の属する月の毎日の終値の平均額
- 相続発生日の前月、前々月、前々々月の各月の毎日の終値の平均額
これらの価格を比較し、最も低い価格を基準として相続税評価額を決定します。この方法を「時価主義」と呼び、株価の変動による相続税額の負担を軽減する狙いがあります。
上場株式の相続税評価の具体例
仮に相続発生日が5月15日であった場合、以下の3つの選択肢が検討されます:
- 5月15日の終値
- 5月中の終値平均額
- 2月、3月、4月の月ごとの終値の平均額
5月15日の終値が1000円、5月の月平均が980円、2月から4月の月平均が950円だった場合、最も低い「950円」が相続税評価額として適用されます。この方式により、相続税評価額は適切に調整される仕組みです。
相続税評価における特別な控除
相続において上場株式を評価する際、特例による減額措置が適用されるケースがあります。中小企業や同族会社の株式が対象であり、事業承継における相続税の軽減を目的とした措置です。これには、「事業承継税制」などが該当します。
- 事業承継税制の特例
特例措置を活用すると、一定の要件を満たすことで株式の相続税額が大幅に減免されることがあります。たとえば、後継者が中小企業の株式を相続し、5年間の事業継続を条件に相続税の納税猶予が受けられる場合などがあり、結果的に相続の負担を軽減できます。
相続税評価額の算出方法と事業承継への影響
上場株式の相続税評価は、事業承継やM&Aを検討する際に企業価値の正確な評価としても重要です。特に同族経営の企業にとって、株式の価値はそのまま事業承継時の経営資産としての価値を意味します。適正な評価を行うことで、後継者や事業継続にかかる負担を予測できます。
相続税評価額が事業承継に与える影響
上場株式の相続税評価が高いと、相続人や後継者が事業承継に際して負担を強いられる場合があります。評価額が適正であれば、後継者が計画的に資産を管理し、会社の財務基盤を安定させることが可能です。
まとめ
上場株式の相続税評価額は、課税対象の基準をどのように設定するかが鍵です。相続発生日の株価を基にした柔軟な評価方法や、特例の活用により、相続税額の軽減を図ることが可能です。株式の価値を適正に評価し、事業承継の負担を軽減するために、財務コンサルタントや税理士と相談しながら最善の方針を検討しましょう。