2025年に公表された厚生労働省「国民生活基礎調査」は、日本社会が直面している現実を非常に分かりやすく示しています。
ニュースでは「生活が苦しい人が増えている」という見出しが目立ちますが、企業経営者にとって重要なのは、その背景にある経済構造の変化です。
本調査から読み取れるのは、
- 物価高による家計圧迫
- 共働きが当たり前になっても改善しない生活実感
- 世帯構造の急激な変化
- 高齢化による介護負担の増大
という、日本企業の経営環境そのものが変わりつつあるという事実です。
今回は、企業経営という視点から重要なポイントを整理していきます。
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半数以上の国民が「生活は苦しい」と回答
最もインパクトがある数字がこちらです。
生活を「苦しい」と回答した世帯は55.4%
内訳は
- 大変苦しい:23.2%
- やや苦しい:32.2%
となっています。
つまり、日本では2世帯に1世帯以上が生活に余裕を感じていない状況です。
しかもこれは景気後退ではなく、
- 雇用環境は比較的安定
- 賃上げも実施されている
にもかかわらず起きています。
つまり問題は、
収入よりも生活コストの上昇スピードが速い
という点にあります。
最大の原因は「物価高」
厚生労働省では、生活が苦しい背景として
飲料・食料品の価格上昇
を大きな要因として挙げています。
さらに注目したいのは、
貯蓄が減少した理由です。
80.1%
もの世帯が
「日常生活費に使った」
と回答しています。
つまり、
以前なら貯蓄できていたお金を、
生活費補填のために使っている状況です。
企業でいえば、
利益剰余金を取り崩して赤字補填を続けている状態に近いと言えるでしょう。
「平均年収」は現実を表していない
調査では
平均所得
575.2万円
となっています。
しかし重要なのはここからです。
実際には
平均所得以下の世帯が61.5%
存在しています。
さらに
所得中央値は451万円
です。
つまり、
平均値より中央値が100万円以上低いということは、
一部の高所得者が平均値を押し上げている構造です。
企業経営に置き換えれば、
市場全体を平均値だけで判断すると、
実際の顧客の購買力を見誤る可能性があります。
子育て世帯は「共働きでも苦しい」
今回の調査で非常に象徴的なのがこちらです。
母親の就業率
81.2%(過去最高)
共働きが完全に定着しました。
しかし、
児童のいる世帯で
61.5%
が生活は苦しいと回答しています。
つまり、
働く人が増えても、
生活は楽になっていないのです。
これは企業にとっても重要です。
給与だけではなく、
福利厚生や柔軟な働き方、
子育て支援など、
実質可処分所得を高める仕組み
が採用競争力へ直結する時代になっています。
母子世帯の厳しい現実
さらに深刻なのが母子世帯です。
生活が苦しい
82.1%
子どものいる現役世帯のうち、
ひとり親世帯の相対的貧困率は
44.7%
となっています。
約2世帯に1世帯が相対的貧困状態です。
これは単なる福祉の問題ではありません。
教育格差
所得格差
地域格差
人材格差
へと将来的につながる可能性があります。
企業においても、
採用市場や地域経済に長期的な影響を与えるデータと言えるでしょう。
高齢者世帯も安心ではない
高齢者世帯の平均所得は
336.1万円
となっています。
さらに、
所得の
61.3%
は年金となっています。
生活が苦しいと回答した割合は
52.1%
です。
つまり、
年金だけでは生活コスト上昇を吸収できない世帯が増えていることになります。
今後、
シニア消費市場も
「価格重視」
「節約志向」
がさらに強まる可能性があります。
介護問題は企業経営にも直結する
今回の調査では介護実態も明らかになっています。
介護者の
78.8%
が60歳以上
65歳以上では
61.1%
となっています。
いわゆる
老老介護
が一般化しています。
さらに、
要介護度が高くなると
54.2%
が
「ほとんど終日介護」
という状況になります。
これは企業にとっても、
今後ますます
- 介護離職
- 時短勤務
- 人材不足
が増える可能性を示しています。
中小企業経営者が今考えるべきこと
今回の調査結果は、
単なる生活調査ではありません。
企業経営に直結する重要なシグナルです。
今後は特に、
①賃上げだけでは人材は定着しない
物価上昇が続けば、
給与アップだけでは従業員満足度は改善しません。
福利厚生
柔軟な勤務制度
介護支援
育児支援
など総合的な制度設計が重要になります。
②価格競争はさらに厳しくなる
生活防衛意識が高まれば、
消費者はより価格に敏感になります。
一方で、
利益率を確保するには
安売りではなく、
付加価値戦略が不可欠になります。
③生産性向上が最優先課題
人件費
物価
社会保険料
介護離職
採用難
これらを考えると、
企業が取り組むべきは
DX
AI活用
省力化投資
業務改善
です。
限られた人材で成果を最大化する経営へ転換する必要があります。
まとめ
2025年国民生活基礎調査から見えてきたのは、「景気回復」と「生活実感」の間に大きなギャップが存在するという現実です。
主なポイントを整理すると、
- 生活が苦しい世帯は55.4%
- 母子世帯では82.1%
- 平均所得以下の世帯は61.5%
- 母親就業率は81.2%で過去最高
- 共働きでも6割以上が生活苦
- 貯蓄減少理由の80.1%は生活費
- 高齢化に伴い老老介護が一般化
という状況でした。
これらは単なる統計データではなく、日本企業がこれから向き合う市場環境そのものです。
企業経営者は、物価高・少子高齢化・人材不足を一時的な社会問題として捉えるのではなく、自社の経営戦略に反映すべき長期トレンドとして認識することが重要です。
「売上を伸ばす」だけではなく、「限られた人材で持続的に利益を生み出す経営」への転換が、これからの企業成長を左右する重要なテーマになるでしょう。
出典・引用
- 厚生労働省「令和7年(2025年)国民生活基礎調査 概況」
- 健康・世帯・所得・生活意識・介護に関する各調査結果
- 厚生労働省「令和7年国民生活基礎調査 各分野資料(PDF01~05)」
- Yahoo!ニュース「厚生労働省 2025年国民生活基礎調査関連記事」(厚生労働省公表資料を基に報道)