全東信の破産による影響が広がる中、政府による緊急支援策だけでなく、地方銀行や信用金庫でも独自の支援策が次々と発表されています。
前回の記事では、経済産業省・中小企業庁による特別相談窓口やセーフティネット保証1号などの制度をご紹介しました。
しかし、その後さらに支援体制が拡充され、日本政策金融公庫の「取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)」や、京都信用金庫による専用融資制度など、実際に資金繰りを支える具体的な制度が明らかになってきました。
今回は、新たに判明した支援策を速報で整理します。
Contents
地方銀行・信用金庫も独自支援を開始
今回注目すべきなのは、政府だけではなく民間金融機関も独自の支援を開始していることです。
通常、大型倒産が発生した場合でも、ここまで短期間で地方銀行や信用金庫が専用の相談窓口や融資制度を設けるケースは多くありません。
それだけ今回の影響が広範囲に及ぶと金融機関も判断していることがうかがえます。
京都信用金庫が専用融資制度を創設
特に踏み込んだ対応を打ち出したのが京都信用金庫です。
京都信用金庫は、全東信の破産の影響を受けた企業・個人事業主向けに、全店舗で相談窓口を開設するとともに、専用融資制度の取り扱いを開始しました。
主な内容
- 全店舗で相談窓口を設置
- 資金繰り・返済相談に対応
- 専用融資制度を創設
- 融資限度額:1億円
- 融資期間:5年以内
- 受付期間:2026年12月30日まで
- 緊急案件は迅速審査
さらに、融資だけではなく、決済端末が利用できなくなった事業者に対しては、提携する別の決済代行会社の紹介なども実施しています。
これは単なる融資ではなく、「事業継続支援」と言える取り組みです。
また、京都信用金庫によると、全東信と取引実績があった顧客は169先あり、
- 約7割が飲食店
- 約1割超が美容関連
- 残りが雑貨小売など
となっており、キャッシュレス決済への依存度が高い業種ほど影響が大きいことがわかります。
出典:京都信用金庫「全東信破産に伴う緊急融資制度」、日本経済新聞、読売新聞
伊予銀行・愛媛銀行も相談窓口を設置
愛媛県では、伊予銀行と愛媛銀行も全営業店で相談窓口を開設しました。
相談できる内容は、
- 資金繰り相談
- 入金遅延への対応
- 借入金返済条件の見直し
- 電話・店頭での相談
などとなっています。
現時点では専用融資制度までは発表されていませんが、「まず相談してほしい」という姿勢を打ち出しています。
日本政策金融公庫には「取引企業倒産対応資金」がある
今回、あまり知られていないものの、最も活用を検討したい制度の一つが、日本政策金融公庫の**「取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)」**です。
これは、取引先企業の倒産によって経営に影響を受けた事業者向けの制度であり、今回の全東信破産でも利用できる可能性があります。
対象となる主なケース
次のいずれかに該当する場合、対象となる可能性があります。
- 倒産企業に対して50万円以上の売掛金がある
- 倒産企業への取引依存度が20%以上
- 貸付金や保証金などの債権がある
- 倒産企業の債務を保証している
- 倒産企業の施設へ入居し影響を受けている
- 倒産により受注予定案件が取り消された
全東信との取引で売掛金が回収できないケースだけでなく、倒産によって事業継続に支障が出た幅広いケースが対象となっています。
融資条件
国民生活事業では、
- 融資限度額:別枠3,000万円
- 返済期間:10年以内
- 据置期間:3年以内
中小企業事業では、
- 融資限度額:1億5,000万円
- 返済期間:10年以内
- 据置期間:3年以内
となっています。
金利は基準利率が適用され、担保・保証人については個別審査となります。
なお、一部で「ゼロ金利融資」と報じられていますが、日本政策金融公庫ではそのような制度は公表しておらず、正確な条件は各支店へ確認するよう案内しています。
セーフティネット保証1号も準備が進む
現在、政府では信用保証協会による「セーフティネット保証1号(連鎖倒産防止)」の適用手続きも進められています。
この制度が利用できるようになれば、
- 一般保証とは別枠
- 保証割合100%
という大きなメリットがあります。
食団連も飲食店支援のため、この制度の早期指定を政府へ要望しており、正式な利用開始後には申請方法なども公表される予定です。
便乗詐欺にも注意
今回の混乱に便乗し、
- 決済会社の切り替えを装う勧誘
- 債権回収を名乗る電話
- 支援制度を装った営業
などが発生する可能性があります。
食団連も公式ホームページで注意喚起を行っており、「食団連から個別に電話をかけることはない」と明言しています。
制度の案内は、政府機関や金融機関、業界団体の公式情報を必ず確認してください。
認定支援機関としてお伝えしたいこと
今回の一連の対応を見ると、政府だけでなく、地方銀行・信用金庫・日本政策金融公庫までが同時に動き始めています。
これは裏を返せば、それだけ連鎖倒産のリスクが高いと各機関が認識しているということです。
一方で、ここまで支援制度が整いつつある今だからこそ、経営者が重要なのは「困ってから動く」のではなく、「困る前に相談する」ことです。
資金が底をついてからでは選択肢は限られます。
しかし、早い段階で相談すれば、
- 緊急融資
- 返済条件の見直し
- 保証制度
- 決済手段の切り替え
など、複数の選択肢を組み合わせながら事業継続を図ることができます。
全東信の破産は大きな出来事ですが、現在は政府・金融機関ともに支援体制が急速に整いつつあります。
影響を受けている事業者の皆さまは、一人で抱え込まず、まずは取引金融機関、日本政策金融公庫、信用保証協会、認定経営革新等支援機関などへ早めに相談することをおすすめします。