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米・イラン和平合意でも安心できない理由
ホルムズ海峡再開後に中小企業が備えるべきこと
2026年6月15日、世界経済を揺るがしてきた中東危機に大きな転機が訪れました。
米国とイランが和平合意に達し、6月19日にスイスで正式署名が行われる予定となっています。
ロイター通信によると、今回の合意には、
- 戦闘終結
- 米国による海上封鎖解除
- ホルムズ海峡の再開
- イラン港湾封鎖解除
などが盛り込まれていると報じられています。
また、パキスタンのシャリフ首相やトランプ大統領も合意成立を発表しており、イラン側も正式に認めています。
ニュースだけを見ると、
「原油価格は下がる」
「ナフサ不足も解消する」
「物価高も終わる」
と思いたくなります。
しかし、中小企業経営者はまだ安心してはいけません。
むしろ本当の経営判断はこれから始まります。
なぜ世界はホルムズ海峡に注目しているのか
ホルムズ海峡は世界最大級のエネルギー輸送ルートです。
トランプ大統領は和平合意発表後、
「世界の船舶よ、エンジン始動だ。石油の供給だ!」
と発言し、ホルムズ海峡の全面開放を承認したと表明しました。
日本は原油輸入の9割以上を中東に依存しており、ナフサについても実質8割程度を中東地域に依存しています。
つまりホルムズ海峡は、
日本経済の生命線
と言っても過言ではありません。
すでに全国で深刻な影響が発生している
今回の危機で問題になったのは原油だけではありません。
特に深刻だったのがナフサ不足です。
ナフサは、
- プラスチック
- 包装材
- 接着剤
- 樹脂
- 建材
- 医療用品
などの原料になります。
岩手県の調査では、
「中東情勢の影響が出ている」
と回答した企業の割合が前回調査より5.2ポイント増加しました。
また、
- 医療用手袋の値上げ
- 歯磨き剤の値上げ
- 注射針不足
なども報告されています。
さらに建設業界では、
愛知県の建材会社が接着剤不足によって新規受注停止に追い込まれたことも報じられています。
原油価格は下落したが問題は終わっていない
和平合意発表を受け、
- ブレント原油先物は約4%下落
- WTI原油先物は約4.6%下落
しました。
市場は好感しています。
しかし、
原油価格が下がることと、企業の調達環境が改善することは別問題です。
時事通信は、
「実質的な正常化には数カ月を要する可能性がある」
と報じています。
ホルムズ海峡再開=正常化ではない
ここが最も重要なポイントです。
物流専門家は、
戦闘終結と物流正常化は別工程であると指摘しています。
実際には、
第1段階
6月19日正式署名
↓
第2段階
停戦履行確認
↓
第3段階
機雷除去
↓
第4段階
船舶航行再開
↓
第5段階
保険料正常化
↓
第6段階
港湾・製油所復旧
↓
第7段階
ナフサ供給回復
↓
第8段階
国内流通回復
という流れになります。
物流業界では、
通航量が危機前の水準へ戻るには数か月単位の時間が必要との見方も出ています。
実はナフサの方が長引く可能性が高い
今回の危機で分かったことがあります。
それは、
原油よりナフサの方が回復が遅れる可能性がある
ということです。
時事通信によると、
日本は備蓄原油を活用しながら代替調達を進めることができました。
一方でナフサは、
- 国家備蓄対象外
- 在庫日数が短い
- 中東依存度が高い
という特徴があります。
そのため、
建材・包装材・樹脂製品などへの影響は今後もしばらく残る可能性があります。
物価高はいつまで続くのか
朝日新聞のインタビューで日本総合研究所の栂野裕貴研究員は、
「ホルムズ海峡が開放されても物価への影響が和らぐのは年明け以降になる可能性がある」
との見方を示しています。
企業が現在使用している原材料の多くは、
すでに高値で調達された在庫です。
そのため、
- 建材
- 食品容器
- 日用品
- 工業製品
などへの価格転嫁は今後も続く可能性があります。
第2のホルムズ危機は起きるのか
今回、多くの専門家が懸念していることがあります。
それは、海峡封鎖が極めて有効な交渉カードであることを世界が認識したことです。
石油化学工業協会の工藤幸四郎会長は、
「パンドラの箱を開けた」
と警鐘を鳴らしています。
つまり、
将来的に
- イラン
- 中東諸国
- 地政学リスク
によって再び同様の危機が起きる可能性は十分あります。
中小企業経営者が今すぐ取るべき5つの対策
①副資材まで含めて在庫を点検する
確認すべきは主要原料だけではありません。
- 接着剤
- フィルム
- 樹脂部品
- 容器
- 包装材
なども確認しましょう。
②仕入先を複線化する
1社依存は非常に危険です。
最低でも代替調達先を確保しておくべきです。
③価格改定の準備を進める
コスト上昇をすべて自社負担にすると利益が消えます。
価格転嫁の準備を進めましょう。
④資金繰りを強化する
今後も物流正常化まで時間がかかる可能性があります。
- 日本政策金融公庫
- セーフティネット保証
- 制度融資
なども含めて検討しておくべきでしょう。
⑤BCPを見直す
今回の危機で明らかになったのは、
自然災害だけでなく、
地政学リスクも経営リスクである
ということです。
まとめ
今回の米・イラン和平合意は間違いなく前向きなニュースです。
ロイター、BBC、時事通信などの報道を見る限り、
- 戦闘終結
- ホルムズ海峡再開
- 原油価格下落
という好材料が並んでいます。
しかし、
物流正常化やナフサ供給回復には数か月以上かかる可能性があり、物価への影響も年内は残るとみられています。
中小企業経営者が今考えるべきことは、
「危機が終わったか」
ではなく、
「次の危機に備えられているか」
です。
今回の経験を活かし、
- 調達先の分散
- 在庫戦略の見直し
- 資金繰り強化
- BCP整備
を進める企業こそが、次の危機でも生き残る企業になるでしょう。