Contents
- 1 「売上は増えているのに利益が残らない…」その原因は“粗利”にある
- 2 そもそも「粗利」とは何か?
- 3 TSR調査で見えた「粗利二極化」の実態
- 4 平均売上高は10.1%増加
- 5 しかし重要なのは「粗利」
- 6 ただし「全員が儲かっている」わけではない
- 7 本当に“稼ぐ力”を高められている企業は2割弱
- 8 なぜ企業間で差が広がっているのか?
- 9 粗利が伸びる企業の特徴①「価格交渉力」がある
- 10 「値上げできる会社」が強い
- 11 粗利が伸びる企業の特徴②「高付加価値化」ができている
- 12 粗利が伸びる企業の特徴③「顧客を選んでいる」
- 13 “売上至上主義”から脱却できるか
- 14 粗利が改善した業界の共通点
- 15 一方で苦戦する業界の特徴
- 16 中小企業が粗利を増やすために今すぐやるべき10のアクション
- 17 ① 値上げを恐れない
- 18 ② “利益が出る商品”を分析する
- 19 ③ 不採算商品・サービスを切る
- 20 ④ 高付加価値化する
- 21 ⑤ 原価管理を細かく行う
- 22 ⑥ “忙しいのに儲からない”をやめる
- 23 ⑦ 値引きを減らす
- 24 ⑧ リピート・定期収益を増やす
- 25 ⑨ AI・DXで間接コストを削減する
- 26 ⑩ 「売上」ではなく「粗利」で経営判断する
- 27 今後さらに「粗利格差」は拡大する可能性が高い
- 28 まとめ|これからは「売上競争」ではなく「粗利競争」
- 29 「売上が増えても、利益が残らない会社」が増えている
- 30 「粗利を増やせる会社」は確実に伸びている
- 31 “売上至上主義”から“粗利経営”へ
「売上は増えているのに利益が残らない…」その原因は“粗利”にある
近年、多くの企業で「売上は伸びているのに利益が苦しい」という現象が起きています。
その背景には、原材料価格高騰、人件費上昇、エネルギーコスト増加などによる“コスト上昇”があります。
つまり今の時代は、
- 売上を伸ばせる会社
ではなく、 - 「粗利」を伸ばせる会社
が勝つ時代になっています。
実際、東京商工リサーチ(TSR)が2026年5月に発表した「2025年国内企業の粗利に関する調査」では、企業間の“収益力格差”が鮮明になっていることが明らかになりました。
本記事では、その調査内容を整理しながら、
- なぜ粗利格差が広がっているのか
- 粗利を伸ばしている企業は何をしているのか
- 中小企業が今すぐ取り組むべき粗利改善策
を詳しく解説します。
そもそも「粗利」とは何か?
粗利(売上総利益)とは、
売上高 − 売上原価
で計算される利益です。
つまり、
- 商品を仕入れる
- 製造する
- サービスを提供する
ために直接かかったコストを差し引いた「本業の稼ぐ力」を示す指標です。
例えば、
- 売上100万円
- 原価70万円
なら、
- 粗利30万円
- 粗利率30%
となります。
企業経営では、この粗利が非常に重要です。
なぜなら、
- 人件費
- 家賃
- 広告費
- システム費
- 借入返済
などは、すべて粗利から支払われるからです。
つまり、
「粗利が薄い会社」は、どれだけ売上が増えても苦しくなる
という構造があります。
TSR調査で見えた「粗利二極化」の実態
今回のTSR調査では、2024年10月期〜2025年9月期を最新期とする17万9,054社を分析しています。
すると、非常に興味深い結果が出ています。
平均売上高は10.1%増加
まず企業全体では、売上は増えています。
平均売上高推移
- 2019年:42億5,160万円
- 2025年:46億8,205万円
→ 約10.1%増加
コロナ禍で一時落ち込んだものの、
- 経済正常化
- 値上げ
- 価格改定
などで売上は回復しました。
つまり、
「数字上の売上」は回復している
のです。
しかし重要なのは「粗利」
注目すべきは粗利です。
平均粗利推移
- 2019年:8億3,926万円
- 2025年:10億3,033万円
→ 約22.7%増加
さらに、
粗利率
- 2019年:19.7%
- 2025年:22.0%
→ 2.3ポイント改善
となりました。
これは単純な値上げだけでなく、
- 商品構成改善
- 高付加価値化
- 不採算商品の整理
- 価格転嫁
が進んだ企業が増えたことを示しています。
ただし「全員が儲かっている」わけではない
ここが非常に重要です。
TSR調査では、
売上と粗利が両方増えた企業は43.3%
にとどまっています。
つまり、
半数以上の企業は「売上増=利益増」になっていない
のです。
さらに衝撃的なのは、
原価上昇を上回るペースで粗利を伸ばせた企業は19.7%しかない
という点です。
つまり、
本当に“稼ぐ力”を高められている企業は2割弱
しかないのです。
なぜ企業間で差が広がっているのか?
ここからが本質です。
粗利を伸ばせる会社には、共通点があります。
粗利が伸びる企業の特徴①「価格交渉力」がある
運輸業では、
- 適正運賃交渉
- 2024年問題
- 物流改革
を背景に、価格転嫁が進みました。
その結果、
粗利伸長率が原価増加率を上回った企業比率は30.9%
と、全産業トップになりました。
つまり、
「値上げできる会社」が強い
のです。
今後の経営では、
- 安く売る
- 我慢する
- 値上げを恐れる
では利益が残りません。
重要なのは、
“価格に納得してもらえる価値”を作ること
です。
粗利が伸びる企業の特徴②「高付加価値化」ができている
製造業では、
- 高付加価値品へのシフト
- 製品構成見直し
- 利益率重視
が進みました。
つまり、
「何を売るか」を変えた企業が強い
のです。
例えば、
利益が出にくい企業
- 安売り競争
- 低単価商品依存
- 差別化不足
利益が出る企業
- 専門特化
- ブランド化
- 提案型営業
- セット販売
- 独自ノウハウ化
この差が粗利率に直結します。
粗利が伸びる企業の特徴③「顧客を選んでいる」
粗利率が高い企業ほど、
- 値切る顧客
- 手間ばかり増える顧客
- クレーム過多顧客
を整理しています。
逆に、
「誰でも受ける会社」は利益率が下がりやすい
傾向があります。
特に中小企業は、
“売上至上主義”から脱却できるか
が重要です。
粗利が改善した業界の共通点
TSR調査では、特に以下が目立ちました。
小売業
粗利率32.3%
サービス業
粗利率31.9%
背景には、
- 値上げ浸透
- 高付加価値化
- 体験価値向上
があります。
特にサービス業は、
「価格」より「価値」で選ばれる会社
が伸びています。
一方で苦戦する業界の特徴
逆に苦戦した業種は、
- 医療業
- ガス業
- 農林漁業
- なめし革製造
など。
共通点は、
「価格転嫁しにくい」
ことです。
つまり、
- 公定価格
- 激しい価格競争
- 需要低迷
がある業界ほど厳しい。
これは今後も続く可能性があります。
中小企業が粗利を増やすために今すぐやるべき10のアクション
ここから実践編です。
① 値上げを恐れない
まず重要なのは価格改定です。
ただし、
「ただ値上げする」のではなく、
- なぜ必要か
- どんな価値があるか
- 何が改善されるか
を伝えることが重要です。
② “利益が出る商品”を分析する
売上ではなく、
「粗利額」で商品を見る
ことが重要です。
例えば、
- 売上100万円で粗利5万円
- 売上50万円で粗利25万円
なら後者の方が優秀です。
③ 不採算商品・サービスを切る
利益が薄い案件を抱え続けると、
- 人材疲弊
- 資金流出
- 時間浪費
につながります。
④ 高付加価値化する
価格競争から抜けるには、
- 専門特化
- 独自性
- ブランド化
が必要です。
例えば、
- 「安い工事会社」
ではなく、 - 「浴室リフォーム専門」
- 「高齢者向け特化」
- 「補助金活用込み」
など。
⑤ 原価管理を細かく行う
利益が出ない会社は、
“どこで利益が消えているか”
を把握できていません。
最低でも、
- 商品別粗利
- 顧客別粗利
- 営業担当別粗利
は見える化したいところです。
⑥ “忙しいのに儲からない”をやめる
利益率の低い仕事ほど、
- 緊急対応
- 個別対応
- 修正
- クレーム
が多くなります。
つまり、
「忙しい会社ほど利益が薄い」
現象が起きます。
⑦ 値引きを減らす
値引きは粗利を直撃します。
例えば粗利率20%なら、
10%値引き=利益半減
レベルの影響があります。
⑧ リピート・定期収益を増やす
新規集客ばかりでは、
広告費が増え続けます。
そのため、
- サブスク
- 保守契約
- 会員制
- 定期点検
などのストック型収益が重要になります。
⑨ AI・DXで間接コストを削減する
現在は、
- AI活用
- 業務自動化
- 顧客管理システム
によって、
“利益を削る間接業務”
を減らせる時代です。
特に中小企業では、
- 見積
- 請求
- 問い合わせ
- 日報
- 案件管理
の効率化余地が非常に大きいです。
⑩ 「売上」ではなく「粗利」で経営判断する
これが最重要です。
これからの時代は、
「いくら売ったか」
ではなく、
「いくら残ったか」
が重要になります。
今後さらに「粗利格差」は拡大する可能性が高い
物価高は今後も続く可能性があります。
すると、
- 値上げできる企業
- 高付加価値企業
- 価格交渉できる企業
はさらに伸びます。
一方、
- 安売り依存
- 薄利多売
- 差別化不足
の企業は苦しくなる可能性があります。
まとめ|これからは「売上競争」ではなく「粗利競争」
TSR調査から見えた本質は明確です。
「売上が増えても、利益が残らない会社」が増えている
一方で、
「粗利を増やせる会社」は確実に伸びている
のです。
つまり今後は、
- 値上げ力
- 高付加価値化
- 顧客選別
- 商品構成改善
- 原価管理
が企業存続のカギになります。
特に中小企業は、
「何を売るか」
ではなく、
「どれだけ粗利が残るか」
という視点への転換が必要です。
これからの時代は、
“売上至上主義”から“粗利経営”へ
移行できる企業が、生き残る時代になりそうです。