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賃上げを“コスト”で終わらせない中小企業のための実践ガイド
はじめに|最低賃金引上げは「経営リスク」か「経営チャンス」か
最低賃金の引上げが毎年続く中で、多くの中小企業経営者が次のような悩みを抱えています。
- 「人件費が上がる一方で、利益が残らない」
- 「賃上げしないと人が採れないが、体力がもたない」
- 「結局、我慢するしかないのでは…」
しかし、国はこの状況を「放置」しているわけではありません。
むしろ、賃上げをきっかけに、生産性の高い企業へ転換する中小企業を本気で支援する制度を用意しています。
それが 令和7年度 業務改善助成金 です。
この助成金は、
単なる「賃上げ補填」ではありません。
賃上げを“利益が出る経営体質づくり”につなげるための制度です。
業務改善助成金とは?|制度の基本構造
業務改善助成金は、次の2つを同時に行う中小企業を支援する制度です。
① 事業場内最低賃金を30円以上引き上げる
② 生産性向上につながる設備投資・業務改善を行う
この2点を満たすことで、
設備投資等にかかった費用の一部を、最大600万円まで国が助成します。
重要なのは、
「賃上げそのもの」にお金が出るのではなく、
賃上げを実現するための“仕組みづくり”にお金が出るという点です。
対象となる事業者|どんな会社が使えるのか
業務改善助成金を活用できるのは、以下の条件を満たす事業者です。
- 中小企業・小規模事業者であること
- 大企業と密接な関係を有する企業(みなし大企業)でないこと
- 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差が50円以内
- 解雇や賃金引下げなどの不交付事由がないこと
- 事業場内最低賃金の対象労働者が 雇用6か月以上
また、申請は「会社単位」ではなく、
**工場・店舗・事務所などの「事業場単位」**で行います。
何が助成対象になるのか|設備・経費の具体例
1. 設備・機器導入(最も活用される分野)
- POSレジ・セルフレジ
- 在庫管理システム
- 勤怠管理・シフト管理システム
- 製造機械・加工機・検査装置
- 業務用調理機器
- 作業効率を高めるリフト・特殊車両
ポイントは、
「人を減らすため」ではなく、「作業時間を短縮し、生産性を上げるため」
という説明ができることです。
2. IT・システム導入
- 顧客管理(CRM)システム
- 予約管理システム
- 受発注・売上管理システム
- 業務フロー自動化ツール
日々の事務作業や管理業務の効率化は、
人件費上昇を吸収する王道のアプローチです。
3. 業務改善コンサルティング
- 業務フローの見直し
- 動線改善
- マニュアル整備
- 生産性向上を目的とした外部専門家支援
単なるアドバイスではなく、
生産性向上と賃上げの因果関係を説明できることが重要です。
4. 人材育成・教育訓練
- 新設備導入に伴う操作研修
- 業務標準化研修
- 多能工化・属人化解消のための研修
注意:原則対象外となるもの
- 汎用PC・スマホ・タブレット
- 広告宣伝費
- 原材料費
- 交付決定前に支払った費用
特に多い失敗が、
「先に買ってしまった」「先に支払ってしまった」ケースです。
助成率と上限額|どれくらい出るのか
助成率
- 事業場内最低賃金が 1,000円未満 → 4/5(80%)
- 事業場内最低賃金が 1,000円以上 → 3/4(75%)
助成上限額
賃金の引上げ額(30円・45円・60円・90円)と
引き上げる労働者数に応じて決まり、
最大600万円まで支給されます。
助成金額の計算方法|ここが一番重要
助成金額は、次の いずれか低い金額 になります。
- 設備投資等の費用 × 助成率
- 助成上限額
計算例
- 事業場内最低賃金:980円(助成率80%)
- 賃金引上げ:90円
- 引上げ対象者:8人
- 助成上限額:450万円
- 設備投資額:600万円
600万円 × 80% = 480万円
→ 上限450万円
支給額:450万円
申請から支給までの流れ
- 賃金引上げ計画・設備投資計画を作成
- 労働局へ交付申請
- 交付決定
- 賃金引上げ・設備導入を実施
- 実績報告
- 助成金支給
※ 交付決定前の支出はすべて対象外
経営者が押さえるべき本質的なポイント
この助成金の本質は、
「賃上げを我慢するかどうか」ではありません。
賃上げを、
利益が出る経営構造に変える“起点”にできるかどうか
そこにあります。
まとめ|業務改善助成金はこんな企業に向いている
- 最低賃金引上げに不安を感じている
- 人手不足・属人化・非効率に悩んでいる
- 設備投資をしたいが資金に余裕がない
- 賃上げを「未来への投資」に変えたい
こうした企業にとって、
業務改善助成金は 極めて実践的な経営支援策 です。